2012 International CESの会場で、「UltrabookをPCと呼ぶと(Intelに)怒られる」という話をそこここで耳にした。試しにIntelのブースでUltrabookを指して「このPC……」とスタッフに問いかけてみると、即座に「これはPCではありません、Ultrabookです」と突っ込まれた。それも、1度ばかりではなく4度も、だ。
Intel関係者は、Ultrabookについて、
タブレットデバイスの特徴を持ちながら、PCに相当するパフォーマンスを実現する新たなコンピューティングデバイス
と説明する。「PC」ではなく「パーソナル・コンピューティング・デバイス」という新しいカテゴリーなのだという。しかも、
タブレットデバイスより高性能で、かつ、PCほど肩肘張ったものではない
というイメージを定着させたい狙いも見えてくる。


2012 CESで“第2世代”のUltrabookとして紹介されたLenovoのIdeaPad YOGA(写真=左)と、背面のインタフェースが本体からせり出すギミックを搭載したAcerのAspire S5(写真=中央)、そして、出荷時期未定ながら参考展示で公開したソニーのUltrabook VAIO(写真=右)。薄いボディのデザイン重視だけでなく、ギミックも多彩で幅広い利用場面をユーザーに提案するIntel CEOのポール・オッテリーニ氏は、2012 CESの基調講演において、「PCだけが個人向けにコンピューティング機能を提供する時代は終わった。いまや、スマートフォンやタブレットデバイス、そして、テレビなどの家電もコンピューティング能力を持ち、誰もが手軽に“パーソナル・コンピューティング”を享受できる時代になった」と語る。
オッテリーニ氏は、最新のスマートフォンは、NASAのアポロ計画で有人月面探査に利用したスーパーコンピュータの性能を実現していると述べ、また、典型的なスマートフォンユーザーの用途で通話が占める割合はわずか10パーセントに過ぎず、残りの90パーセントはSNSやメール、Webページの閲覧などの“コンピューティング”にあてられているという調査報告を紹介した。その上で、Intelの新型SoC(“Medfield”世代のAtom Z2460)でスマートフォン、そして、タブレットデバイス市場へ本格的参入を果たす意向を示したのは、別記事で報じた通りだ。


現在のスマートフォンは、NASAのアポロ有人月面探査計画を支えたスーパーコンピュータと同等の性能を持つという(写真=左)。スマートフォンユーザーの用途では、通話はわずか10パーセントを占めるに過ぎず、残りはコンピューティング処理に費やされている(写真=中央)。スマートフォンやタブレットデバイスなどの普及により、パーソナル“コンピュータ”からパーソナル“コンピューティング”の時代へと移行しつつあるというのがIntelの考えだ(写真=右)Intelに近い大手PCベンダー関係者は、「Ultrabookを“パーソナル・コンピューティング・デバイス”として浸透させる戦略は、携帯デバイス、とくにタブレットデバイスとの境界を曖昧にすることで、急速に立ち上がる新市場における影響力を強めたい意向が見え隠れする」と指摘する。
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