今回試用したのは、直販モデル(LB-X200S-Pro)だ。基本スペックを再掲すると、CPUがTDP(熱設計電力)17ワットの超低電圧版Core i5-2467M(1.6GHz/2.3GHz)、4Gバイトメモリ、120GバイトSSD、Intel HD Graphics 3000、64ビット版Windows 7 Professional(SP1)という構成になる。製品版ではないため、ベンチマークテストの結果はあくまで参考値になるが、順にチェックしていこう。なお、PCMark Vantageのテスト結果には、11.6型UltrabookであるZENBOOK(UX21E-KX128)と、LB-X200S-Proとほぼ同じ基本スペックを持つ13.3型Ultrabook「HP Folio 13-1000」のスコアを併記した。
LuvBook Xと比較機種の主なスペック | |||
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製品名 | LuvBook X(LB-X200S-Pro) | ZENBOOK(UX21E-KX128) | HP Folio 13-1000 |
CPU | Core i5-2467M(1.6GHz/最大2.3GHz)) | Core i7-2677M(1.8GHz/最大2.9GHz) | Core i5-2467M(1.6GHz/最大2.3GHz)) |
メモリ | 4GB | 4GB | 4GB |
データストレージ | 120GB SSD | 128GB SSD | 128GB SSD |
液晶ディスプレイ | 11.6型(1366×768) | 11.6型(1366×768) | 13.3型(1366×768) |
グラフィックス | Intel HD Graphics 3000 | Intel HD Graphics 3000 | Intel HD Graphics 3000 |
OS | 64ビット版Windows 7 Professional | 64ビット版Windows 7 Home Premium | 64ビット版Windows 7 Home Premium |
価格 | 9万4500円 | 9万9800円 | 7万9800円 |
まずはWindows 7のWindowsエクスペリエンスインデックスから。スコアは画面の通りで、SSDによるプライマリハードディスクのスコアが7.9と飛び抜けて高く、そのほかはまずまずといったところ。グラフィックスも5.7と、Intel HD Graphics 3000ながら悪くない値だ。総じてWindows 7を快適に操作できるパフォーマンスといえる。Ultrabookらしく、システムやアプリケーションの起動も高速だ。
SSDのパフォーマンスをCrystalDiskMark 3.0.1(ひよひよ氏作)で調べたところ、シーケンシャルリードが435.5Mバイト/秒、512Kランダムリードでも389.2Mバイト/秒と、リードに強いXM11の特徴が見て取れる。この辺りは同一のSSDを採用するZENBOOKの11.6型モデルと同様の傾向だ。ライト速度はやや低めだが、それでも十分なパフォーマンスと言える。
続いて、システム全体の性能を評価するPCMark Vantage(x64)のほか、3Dグラフィックス性能を測る3DMark06と3DMark Vantage(Entry)も試した。
結果はスペックなりで、超低電圧版のCore i5を採用するぶん、ZENBOOKには及ばないものの、ストレージ性能が強く影響するPCMark Vantageでは、高速なSSDのおかげでFolio 13-1000を大幅に上回るスコアを出した。性能面で不満を感じることはないだろう。ただ、CPU統合グラフィックスのIntel HD Graphics 3000による描画性能では、ライトなゲームを遊べるといった程度でしかなく、この点については今後登場してくるであろう、Ivy Bridge搭載の“第2世代Ultrabook”に差をつけられることになりそうだ。
LuvBook Xのバッテリー駆動時間は、公称値で約5.5時間とUltrabookとしてはやや短い。本体一体型バッテリーのため、交換用のバッテリーを持ち歩くというわけにもいかず、本格的なモバイル用途を想定しているのならば、無視できない部分だ。
そこで「BBench 1.01」(海人氏作)を用い、10秒ごとのキーボード入力と、60秒ごとの無線LANによるWeb閲覧(10サイト)を行うという設定で、実際のバッテリー駆動時間を測ってみた。なお、Windows 7の電源プランは、「省電力」(液晶の輝度40%)で計測している。
この設定で満充電の状態からテストを開始し、バッテリー残量がなくなってシャットダウンするまでに要した時間は4時間33分だった。公称値には届かなかったものの、かなり近い値で、11.6型サイズのUltrabookとしてはなかなかがんばっている。1日外でPCを使うような状況には対応できないが、ACアダプタを持ち歩き、要所要所で充電するような使い方なら問題はなさそうだ。
なお、ACアダプタのサイズは66(幅)×66(奥行き)×28(高さ)ミリと、ZENBOOKのものに似た形状(つまりMacBook AirのACアダプタに似ている)だが、ウォールマウントプラグにはなっておらず、電源ケーブルは装着できない。このため、コンセントの間隔によっては、別の穴を阻害してしまうことがあるので注意したい。欲をいえば、ACアダプタにもスピンドル加工を施したZENBOOKのように、LuvBook Xではカーボンファイバーを使ったACアダプタにしてほしかった。
発熱と騒音についても触れておこう。LuvBook Xの吸排気は本体背面で行う構造となっており(向かって左奥で吸気し、右奥で排気する)、特に排気口のある右奥からステンレス製の液晶ヒンジ部全体に渡って熱を帯びる。また、システムに高い負荷をかけるベンチマークテスト中はファンが勢いよく回り、薄型ファンの高周波な音も耳につく。この状態のときは、ヒンジ部を手で触るのがためらわれるほど発熱していた。
幸い、基板はキーボード奥の下にレイアウトされており、パームレスト直下はバッテリーが占めているため、手が触れる部分で不快な熱を感じることはなかったが、ひざの上に置いて使うときは注意したほうがいいかもしれない。とはいえ、今回評価したのはあくまで試作機であり、製品版とは異なることを改めて強調しておく。製品版では改善されていることを期待したい。
第一世代のUltrabookが出そろい、アルミをベースとしたデザインや、似たようなスペックで各社が差別化に苦慮している中、マウスコンピューターはモバイルPCに求められる軽さを改めて追求し、1キロを切る新鋭機「LuvBook X」という答えにたどり着いた。
「3面カーボンで作ると信じられないくらい歩留まりが悪いんですよ」――LuvBook Xの製品担当者は筆者に向かってため息のような笑いをもらしながら、「それでもほかとは違う、圧倒的に軽い、うちらしいUltrabookを出したかった」と語ってくれた。その一点突破にかけた挑戦は、かつて国内PCメーカーが技術の粋を結集し、ノートPCの小型・軽量化でしのぎを削っていた時代を思い出させる。LuvBook Xは、作り手の情熱を感じさせてくれるUltrabookだ。
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