Ivy BridgeでWindowsとMacのノートはどう変わるか?本田雅一のクロスオーバーデジタル(1/2 ページ)

» 2012年06月05日 17時00分 公開
[本田雅一,ITmedia]

WindowsもMacもIvy Bridge世代で大きく変わるか

 この記事が掲載されるころ、僕はすでに機上の人となって太平洋の上にいる予定だ。まずはロサンゼルスで開催中のE3(世界最大級のゲームイベント)を軽く見て回り、翌週、WWDC(アップルの開発者カンファレンス)の開催されるサンフランシスコを経由して戻ってくる。ちょっと変則的な旅だ。

 さらにはその途中、たくさんのテクノロジーワーカーが集まる場所で、西海岸におけるVerizon LTEとClearwire WiMAXのパフォーマンスを比較してみたいとも思っている次第。混雑する場所では3Gがまるで使い物にならなくなるため、4Gワイヤレスデータ通信は僕らの仕事に必須のものとなってきている。

 ネットを調べてみると、テレコムスクエアがWiMAXとLTE、それぞれのサービスを提供していたので、これを活用して比べてみることにした。余談だが、データ通信用のルータ貸し出しはグローバルデータがよく知られているが、実はテレコムスクエアには他にない便利さがあるので、このところはテレコムスクエアで借りるようにしている。

 まず予約をし忘れていても、空港カウンターに行って空き端末があればその場で借りられる。また借り出し、受け取り、返却などの際、細かく手数料を取られる業者もあるが、テレコムスクエアは受け取り、返却で手数料がかからない(専用カウンターがあり、空港店舗にデータ端末を在庫しているため)という利点がある。

 と、このあたりの調査結果は、また次回のコラムのときにでも報告しよう。

 今回は来週に迫ったWWDCで発表されるだろう新しい「MacBook Pro」や、インテルがプロモートしている第2世代UltrabookがデュアルコアIvy Bridge(開発コード名)の投入とともに登場するタイミングで、今後のノートPCでは何が変わるのかについて考えてみる。

“Ivy Bridge向けデザインになること”の意味を考えよう

Ivy Bridgeこと第3世代CoreのCore i5-3317U(1.7GHz/最大2.6GHz)。Ultrabookなどの薄型軽量ノートでの搭載を想定したTDP(熱設計電力)が17ワットのモデルだ。

 まずはMacかWindowsかは別にして、Ivy Bridgeこと第3世代Core プロセッサー・ファミリーが登場することで、ノートPCがどう変わるかを、大きく俯瞰(ふかん)しながら見ていくことにしよう。Ivy Bridgeのポイントは、よく言われているように製造プロセスの変化から消費電力が大幅に下がることだ。

 この辺りはすでに語り尽くされているが、Ivy Bridgeを生産するインテルの22ナノメートルプロセスは3Dトランジスタを採用しており、非動作時に漏れる電流が10分の1になる。PCを日常的な作業に使う場合、瞬間的な動作の繰り返しとなることが多い。そんな動作の合間、待っているときの消費電力が大幅に下がるのだから、省電力効果は大きい。

 Ivy Bridgeはプロセッサの名前で、システム全体はChief Riverといわれるプラットフォームになっている。前世代(Sandy Bridgeの世代)ではHuron Riverと呼ばれていた。が、これらの開発コード名はあまりなじみがないようなので、ここではIvy BridgeとSandy Bridgeという、プロセッサのアーキテクチャ名で話を進める。

第3世代Core搭載のUltrabookなどに採用されるIntel HM76 Expressチップセット。USB 3.0を統合し、1チップで提供される。グラフィックス機能はCPU側に統合されている

 Ivy Bridgeではシステム全体の消費電力も下がっている。ディスプレイやストレージなどもあるため、必ずしもプロセッサとチップセットだけがバッテリー消費を決めるわけではないが、それでもどのメーカーも口をそろえて、「Sandy Bridge時代より2割近く消費電力が少ないんじゃない?」との声が聞こえてくる。

 「いや、そんなには減らないだろう」なんて無粋なことはここでは言わないでほしい。とにかく一様に、明らかな結果をもって、システム全体の消費電力が下がっているということ。ここが重要なポイントだ。細かな省電力テクニックは、製品そのものの設計にも依存してくるからだ。

 それはともかく、システム全体の消費電力が下がれば、当然バッテリー持続時間が延びる。が、それはシステムの設計を変更しないという前提であって、筐体から冷却システムから総入れ替えで、Ivy Bridgeに最適化するのであれば話は変わってくる。

 部品の入れ替えでも製品の性能は変わるが、新しい性格のプロセッサ、システムLSIをもとに、新しくコンセプトと設計を練り直す。主要部品のスペックが違えば設計も変化するわけで、右へならえの“電池がよくもつPC”ではなく、新しいPCが生まれる。もちろん、それも省電力化の程度によるが、今回に関してはハードウェアのコンセプトを刷新するだけの価値があるアップデートだと思う。

 性能だけを考えると、「あんまり変わってないんじゃないの?」と思うかもしれないが、モバイル製品の場合は、性能と消費電力の比率こそが重要だ。単にバッテリー持続時間が延びるだけでなく、製品の設計全体に関わる問題だからだ。

 すでに十分なバッテリー持続時間があるならば、バッテリーを減らすことができる。消費電力が下がって平均の発熱量が減るならば、もっとアグレッシブに筐体設計を詰めることができる。さらに消費電力が下がった分、高精細な液晶(高精細化すると透過率は下がるため消費電力が増える)を採用できる可能性もあるだろう。システムの待機電力、平均消費電力の両方が下がると、選択肢が大きく変化する。

どんな製品を作りたいのか、をじっくり見よう

 さて一般論で言うと、制約がきつくて自由度が低い場合、各社の製品は似たり寄ったりの形やコンセプトになりがちだ。一方、設計の自由度が高くなると、さまざまな変態……いや失礼、ユニークな製品が登場することになる。かつて0.25ミクロンプロセスルールのMMX Pentiumが出たときは、今のUltrabookを思わせる薄型PCが登場したし(バッテリーはもたなかったが)、Transmetaのx86互換プロセッサであるCrusoeが登場したときには、さまざまなフォームファクタを試すメーカーが現れた。

 今は当時ほどPC業界全体がイケイケ、ドンドンではないし、部品などの標準化も進んでいるため、ユニークな製品は生まれにくくなっている。しかし、それでも「Ivy Bridgeのどこに着目して設計したのだろう?」と想像してみると面白いと思う。

 今のところ、Ivy Bridge世代で設計を大きく変えてきたUltrabookの中で、個人的に興味深く見ている機種が2つある。1つはレノボ・ジャパンの「ThinkPad X1 Carbon」、もうひとつはNECの「LaVie Z」だ。この2つは基本的に1つの企業だが、当然、別々に作られている。

左が「ThinkPad X1 Carbon」、右が「LaVie Z」

 ThinkPad X1 Carbonが興味深いのは、14型という画面サイズを従来の13型のフォームファクタに押し込めたこと。単に14型を13型の筐体に……というだけなら、これまでにも製品は存在したが、この製品は13型の典型的なUltrabookと同程度の重さに抑えている。これと似た製品としては、富士通の「FMV LIFEBOOK UH75/H」も13型クラスのボディに14型液晶を押し込みつつ、HDD搭載ながら厚さは15.6ミリ、重量は約1.44キロだ。

 一方のLaVie Zは、重量が正式に発表されていない(現時点で999グラム以下と発表されており、800グラム台との予想もある)。マグネシウムリチウム合金を用いたことでの軽量化とされているが、マグネシウムに対する質量は75%。ここまで圧倒的な軽量化は、バッテリーを小さくしなければ難しいように思われる。とはいえ、ほかのUltrabookに比べて短いとも考えにくく、Ivy Bridgeで省電力化が図られた分を軽量化に回したとも考えられる。

夏モデルでクアッドコアCPUを採用した「VAIO Z」

 このほか、省電力化されたことでクアッドコアのプロセッサに、従来は存在しなかった35ワット版が登場したことも薄型軽量ノートPCに影響するだろう。

 35ワットTDP(熱設計電力)バージョンの通常電圧版プロセッサは、例えばソニーの最上位モバイルノート「VAIO Z」などで使われてきた。Ivy Bridgeなら同じ設計でクアッドコア化できるということで、ハイエンドモバイルという狭い市場ではあるが、デスクトップ型に比肩するモバイルノートPCが誕生するだろう(既存筐体にそのまま入れるかどうかはメーカー次第で、新設計ももちろん登場してくるはず)。

 このように、省電力の使い道はいろいろ。今回は筐体設計を一新していないメーカーも、あるいはもっと掘り下げてIvy Bridgeのよさを生かした製品の企画をしているのかもしれない。

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