「Xperia Tablet S」はAndroidタブレットの限界を超えていく開発者ロングインタビュー後編(2/4 ページ)

» 2012年11月28日 17時30分 公開
[鈴木雅暢,ITmedia]

さまざまなアプローチから操作感を向上させたタッチパネル(タッチパネル部門)

―― タッチパネルではどれくらい省電力化しているのでしょうか?

VAIO&Mobile事業本部 Tablet事業部 商品設計部 四竈真理氏(タッチパネル設計担当)

四竈氏 先代機に比べて消費電力は1/3程度に抑えています。これはさまざまな制御チップを地道に評価して、最適なものを探した結果です。消費電力は下がりましたが、タッチパネルの精度は逆に大幅に向上させています。

―― 精度はどのようにして高めたのでしょうか?

四竈氏 液晶ディスプレイのタッチセンサーは、画面にセンサーを網の目のように走らせることで指の位置を検出します。今回はワンチップで指の位置が検出できるICをあえて2つ搭載することにより、センサーの網の目を細かくして、実際に指で触った場所と画面上で反応する場所が、今まで以上にキッチリと合うようにしています。

城重氏 タッチパネルの精度はタブレットで一番のキモなので、企画からも「とにかく精度をよくしてくれ」と強い要望を出しました。先代機の調査では、女性の方、特に爪の長い方は指で普通に触るのではなく、爪の横でちょこっと触るというような使い方をすることが分かりました。Xperia Tablet Sではそういう使い方でもきっちり反応し、「誰が使っても安心」というものを要求しました。

さまざまなコーティングを施したタッチパネル表面の試作サンプルの一部。このようなサンプルを多数用意し、実際に触ってもらってベストなものに絞り込んでいったという

―― タッチパネルは感触にもこだわったと聞いています。

四竈氏 タッチパネルは手で触って操作するものなので、触った感覚をよくしたいということには力を入れました。滑り感、指紋の付きにくさ、拭き取りやすさを考慮して、さまざまなコーティングを施したサンプルを作り、社内でいろいろな方に使ってもらって意見を集め、最もよいものを選んで製品化しました。

 滑り感の指標として、動摩擦係数(ひっぱった場合にどのくらいひっかかるか)があるのですが、製品発表時に市場にあるタッチパネルデバイスの中で、このXperia Tablet Sが最も低いという調査結果が出ています。

八木氏 ディスプレイ表面の低摩擦のポイントとしては、飛散防止フィルムを除いたことも理由の1つにあります。万が一ガラスが割れたときに破片が飛び散らないようにするものなのですが、今回は薄型化しながらもガラスの強度をさらに高め、割れないようにすることで、取り除くことができました。

VAIO&Mobile事業本部 企画1部 城重拓郎氏(機種企画

城重氏 この飛散防止フィルムは使用感に対する影響が大きいので、「絶対に取ってくれ」と要望を出しました。我々も含めて国内メーカーは安全性重視なので、社内の基準が厳しく、飛散防止フィルムの除去は難しかったのですが、なんとか設計に頑張ってもらい、ガラスのほうをフィルムを剥がしても大丈夫というレベルにしてもらいました。

―― 実際に触って比べてみると、指の滑り、指紋の拭き取りやすさとも明らかな違いがありますね。ちょっと驚きました。

田中氏 日常的に使っていてストレスを感じない、ということを一番大事にしています。最初はよくても指紋が拭き取りにくいとなると、面倒になって画面をあまり拭かなくなります。すると汚ないままになって、だんだん使いたいという気持ちも薄れてきてしまうでしょう。

 逆に、これくらい指紋が拭き取りやすかったら、汚れてもサッと拭けば済むので、常にきれいにして毎日使いたいと思ってもらえるのではないでしょうか。そういった、ちょっとしたメンタルの部分が違ってくるのではないかと思います。

液晶ディスプレイの解像度は1280×800ドットに据え置かれた。通常は空気層となっている液晶パネルとガラスの間にクリアな樹脂を流し込み、空気層をなくすことで外光の反射を抑え、暗いシーンでの白ぼやけを防ぎ、深く美しい黒色を表現できるという「オプティコントラストパネル」を採用する

―― 最近ではAppleのRetinaディスプレイのような超高解像度のニーズも浮上していますが、解像度を変えなかったのはなぜでしょうか?

城重氏 検討はしましたが、超高解像度にすることで得られるメリットとデメリットを洗い出したときに、やはり消費電力とサイズがネックになります。バッテリーで10時間駆動するには今よりもかなり大容量のバッテリーが必要になってしまいます。今回はトータルのエクスペリエンス、薄さ、軽さという点を優先しました。

田中氏 もちろん、この先のトレンドとして高解像度化は検討していきますが、現時点では犠牲になるものが大きいです。高解像度は目立つ部分で、話題性もあるとは思いますが、今回の製品では見送りました。まずはアプリやサービスをストレスなく楽しんでいただけるように、基礎体力の部分をしっかり作り上げたかったということです。

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