IntelがAtom搭載デバイスとして考えているのが、スマートフォンに加えてタブレットデバイスだ。TDP 17ワットタイプのCoreプロセッサー・ファミリーでUltrabookをプッシュしていた経緯もあり、ノートPCとタブレットデバイスをターゲットにしたAtomは、スマートフォンと同様に長らく受難の時期にあったが、Windows 8と同時期に発表した“Clover Trail”世代のAtomを搭載する製品の性能やバッテリー駆動時間などが、Windows RT搭載とARMを搭載するタブレットデバイスと比べて良好だったこともあり、Atomを再評価するメーカーやユーザーが増えている。実際、2012年のIFAでは、各メーカーがClover Trail世代のAtomを採用したタブレットデバイスやノートPCを一斉に発表するなど、非常に盛り上がった印象がある。
Clover Trailの評価が高かった理由は、高パフォーマンスと低消費電力によるバッテリー駆動時間の長さだけでなく、「従来のWindowsアプリケーションをそのまま使える」というx86プラットフォームにおける互換性の高さがある。ARMを搭載したWindows RT採用デバイスでは、従来のWindowsアプリケーションが使えないという問題があり、「同じバッテリー駆動時間ならClover Trailで十分」という判断になる。今後、Windows 8でストアアプリが充実してくることで、この問題はある程度解決すると思えるが、当面は「アプリケーション資産」という面でAtomを選択する状況が続くだろう。
この路線を継承して、さらに性能を向上することになるのが、2013年の年末商戦に投入する予定の「Bay Trail」プラットフォームだ。22ナノメートルプロセスルールを導入し、クアッドコアの採用で現行プラットフォームと比べて最大2倍のパフォーマンスを実現する。 2013 CESでは、Compal、Pegatron、Wistronの3社がテストデザインを紹介していた。
ベル氏は、Bay Trailのメリットとして、Windows 8だけでなくAndroidタブレットデバイスとしても利用できる点を強調している。Androidは「Dalvik」というJava仮想マシン上でアプリを動かすため、NDKを使ったネイティブアプリでなければ既存のアプリ資産をある程度そのまま利用できるからだ。ほかのARMベンダーが、生産技術的な問題で次世代SoCの提供で停滞する中、Intelが最新のプロセスルールを導入した製品をいち早く市場に投入することで、2013年の年末におけるタブレットデバイス市場は面白い展開になるかもしれない。
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