第3回 802.11acは実際にどれだけ速いか──バッファロー「WZR-1750DHP」パフォーマンスチェック特集「ついにやってくるギガビット無線LAN」(3/3 ページ)

» 2013年05月10日 14時00分 公開
[坪山博貴(撮影:矢野渉),ITmedia]
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802.11acの実力をチェック

 では肝心の「802.11ac」での実速度をチェックしよう。

 2013年4月現在、802.11acに対応する子機は親機と同仕様のイーサーネットコンバータのみといういうことで、今回はイーサネットコンバータセット(親機×2台セット)準備し、それぞれにギガビット優先LANでPCを接続してその間のデータ転送速度を計る方法とする。比較用として、本機+ノートPC内蔵無線LAN・802.11n(2.4GHz帯)接続時の計測結果も追記した。

 また、通常のファイル転送は無線区間の通信速度を正確に計測できないことがあるため、LAN速度計測専用アプリ「LAN Speed Test(有償版)」を利用し、サーバ側で専用ソフトを稼働させディスクアクセスがない状態での計測を行い、平均値をスコアとして採用した。設定は1Mバイト×転送回数とし、距離に応じて30秒以上は計測を行うよう指定。これを3回ずつ計測したものとなる。

  測定位置
地点A 親機と同じ室内。直線距離は3メートル、機器間に遮へい物なし
地点B 親機とは壁1枚を挟んだ隣室。直線距離は約5メートルで、各部屋の木製扉を閉じて実施。基本的に電波は壁越しに届くイメージ
地点C 親機よりさらにひと部屋挟んだ、地点Bの部屋とは仕切りのない部屋に設置。直線距離は約10メートル
地点D 親機より、通常の壁と押入れを挟んだ壁のある部屋に設置。直線距離は約15メートル、障害物や遮へい物が地点Cより多い

photo 簡易版 測定位置

 測定環境は4DKの木造一般家屋(の一部)。子機は上記の4地点、さらに親機と子機をごく近距離に置いた全5地点で測定した。親機に有線接続するサーバ側(測定用サーバソフトをインストールした)PCはCPUにA8-3870Kを使用した自作機で、OSはWindows 8 Pro。子機に有線接続するクライアント側(測定用クライアントソフトを実行する)PCはCore i5-M450を搭載したノートPC(Aspire Timeline X 3830T)で、OSはWindows 7 Professinal。どちらも内蔵のギガビット対応有線LANポートを使用し、電源プラン「高パフォーマンス」に設定。一応、参考値として有線LANのみ接続時の計測結果も含めている。


photo 下り通信(親機→子機)の通信速度

 では、下り速度をまとめたグラフから。参考とした有線LAN接続874Mbpsという結果は、802.11acでの無線通信速度ではなく、検証環境が802.11acの速度測定に耐えうるものとする基準値としてみてほしい。

 親機と子機(イーサネットコンバータ)をごく近距離に置いて測定した地点では「約436Mbps」となった。こちら、機器が持つ最大理論値には遠いのだが、そこから壁1枚を隔ててかなり移動した地点Bまで離れても実速度が低下しない点は注目に値する。また、PC内蔵の2.4GHz帯802.11n(理論値最大300Mbps)の値と比べると、実に3倍以上の通信速度が得られている。

 地点C〜Dでは段階的に通信速度が低下するが、それでも地点Dで290Mbps以上を保っている。こちら、ノートPC内蔵の無線LAN(同上)では60Mbpsほどなので、約5倍の通信速度である。

photo 上り通信(子機→親機)の通信速度

 上り速度もその傾向は変わらず、新世代ならではのうれしい差が確認できる。今回の測定環境では、地点Bまで近距離の場合は上りが高速、地点Cよりは送受信の速度がおおむね同じになった。もちろんノートPC内蔵の無線LAN(同上)と比べると、どの計測ポイントでも3倍以上は確実に速く、もっとも離れる地点Dではその差が9倍以上に開いた。ちなみに実測30Mbpsほどととなると、DLNAを用いたハイビジョンテレビ番組の家庭内ネットワーク共有再生をするにはかなり厳しい値。対して、同じ距離でも802.11acは約300Mbpsを保っている。802.11acにするだけで、ネットワーク再生環境は劇的に良好となることを示すと言える。

 もう1つ、参考として本機+ノートPC内蔵(802.11n)と、最大450Mbps通信対応の802.11n環境である「WZR-HP-G450H」+「WLI-UC-G450」+ノートPCにて、802.11n接続における結果も並べてみた。測定地点はいずれも今回と同じ場所。一部計測方法が異なるが、どちらも無線区間の平均速度を導き出しているという点で共通する値として採用した。

photo WZR-1750DHP+PC内蔵無線LANとWZR-HP-G450H+WLI-UC-G450、同一測定環境下における2.4GHz帯802.11n接続時の通信速度

 こちらは親機をWZR-1750DHPにするだけで、450Mbps対応の802.11n通信(USB子機経由ではあるが)の組み合わせより実速度が上回ったのに注目したい。前述したが、ノートPCの内蔵無線LANは最大300Mbpsである。

 これはつまり、親機側の送受信能力が「WZR-1750DHPではぐっと引き上げられている」と見ることができる。もちろん過去の結果との比較なのであくまで参考としてほしいが、数年前の802.11n対応の親機からWZR-1750DHPに買い換えるだけでも無線LANの通信速度が底上げされる可能性は高いといえる。

 802.11acという高度な通信方式を採用する上で、アンテナや内部処理能力が高められた結果か──と想像の範囲であるのだが、新規格である802.11ac対応の無線LAN機器には、こういった副次効果がある可能性も高い点は覚えておいて損はないだろう。

(続く)

 次回はNECアクセステクニカ「AtermWG1800HP」の機能と実速度チェックを行う予定です。



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