WiMAX 2+対応モバイルルータ「NAD11」の新機能を試す注目WiMAX 2+ルータ詳細レビュー(2/2 ページ)

» 2014年07月10日 16時15分 公開
[坪山博貴,ITmedia]
前のページへ 1|2       

公衆無線LANルータとして使えるか?

 IEEE802.11ac対応で実用性が増すと期待できるのが、WAN側に公衆無線LANを利用する場合と、自宅などで無線LANアクセスポイントとして利用する場合だ。公衆無線LANに関しては、(MVNO契約では例外があると思うが)UQコミュニケーションとWiMAX 2+を契約すると、au Wi-Fiが利用できるほか、UQ Wi-Fiプレミアムも2014年7月下旬から提供予定だ。

 WiMAXとWiMAX 2+はともに2.5GHz帯という高い周波数を使う関係で屋内へ電波が届きにくいだけに、都市部であっても公衆無線LAN対応は有効なネットワーク接続手段となる。無線LANアクセスポイントとして利用するには別売のクレードルが必要だが、比較的安価なのでセットで購入しておきたい。

 公衆無線LANルータとしての利用した場合の通信速度も、先と同じ2カ所で計測している。喫茶店はau Wi-Fiのエリアで、最近になってバックボーンを光回線に変更している。IEEE802.11nで5GHz帯と2.4GHz帯に対応する。

 計測結果は5GHz帯と2.4Ghz帯で大きく差が開いた。2.4GHz帯はWiMAX 2+やWiMAXのままでも十分というしかない通信速度だ。ただでさえ混雑している2.4GHz帯の電波をNAD11はWAN側とLAN側で共有しているのだから当然の結果かもしれない。

 ファミリーレストランはdocomo WiFiで、サービス開始当初からバックボーンは光回線だ。ここもIEEE802.11nで5GHz帯と2.4GHz帯の両方に対応している。時間帯によってPCにUSBで直接接続すると速度計測で80Mbpsを超える。NAD11の自動認証機能は使えないので、ESS-IDとWPAの事前共有キーをNAD11に設定し、PCのブラウザでログイン認証してから計測作業を行っている。

 喫茶店の計測結果ほどではないが、やはり2.4GHz帯と5GHz帯の差は大きい。公衆無線LANとしては2.4GHz帯も立派な結果と言えるが、送受信ともに平均で5GHz帯と倍以上の速度差は、大容量のファイルを送受信する場合などには実用レベルで大きな差になりそうだし、受信速度だけ見るとWiMAX 2+から切替えて2.4GHz帯を使う意味もない。

公衆無線LANルータとして使った場合のデータ通信速度計測結果。喫茶店(写真=左)もファミリーレストラン(写真=右)も、バックボーンは光回線を使っている

無線LANアクセスポイントとしての性能は?

 無線LANアクセスポイントとしての検証は、個人の住宅で行っている。その家にもともとある無線LANアクセスポイントの電源を落とし、屋外から入ってくる電波以外は遮断する形で検証している。ただ、それでも2.4GHz帯に関しては微弱な電波が10以上確認できるが、現代社会ではどうしようもない。なお、NAD11は、無線LANアクセスポイントとして動作しているときはルータ機能が無効となり、単純にアクセスポイントとして機能する。

 ここでは、計測に使った個人住宅が直に引き込んでいる最大100Mbpsの光回線を介し、有線LAN接続で70〜90Mbps程の通信速度が確保できる早朝にインターネット接続の通信速度を計測したほか、LANに接続したPCからサイズ1Gバイトのファイルをコピーしたときのファイル転送速度も計測した。

 ここではIEEE802.11acが受信速度で、5GHz帯のIEEE802.11nが送信速度でそれぞれトップとなったものの、計測値における差は少ない。2.4GHz帯も個人住宅で使う分には高速で、それが街中ではいかに2.4GHz帯が混雑しているかの証明にもなった。このとき、PCを有線LANで接続すると送受信共に70〜75Mbps程度だったので、NAD11を無線LANアクセスポイントとして使うことで体感で分かるような通信速度の低下はほぼなかったといえる。

 ファイルサーバーからファイルをコピーした速度の計測では、ファイルサイズ(1Gバイト)と処理に要した時間から転送速度を求めている。有線LAN接続であれば400〜600Mbps程度の速度は確保できている。5GHz帯の結果が良好である点は変わらない。

 5GHz帯のIEEE802.11nがデュアルチャネルなら300Mbpsでリンクできるのに対して、2.4GHz帯のIEEE802.11nは144.4Mbpsでのリンクが限界であり、MIMOのみが有効でシングルチャネルでしかリンクできていない。また、クレードルの有線LANはカタログスペックでは最大1000Mbpsなのだが、筆者宅では有線LANのリンク速度は100Mbpsにとどまっている。なお、100MbpsのLANという視点で見ると、オーバーヘッドの大きなファイルコピーで80Mbps近い転送速度は理論限界値に近い点も付け加えておく。

無線LANアクセスポイントとして個人宅で検証した。無線LANの規格によって差はあまり出ない(写真=左)。1Gバイトのファイルコピーでは、5GHz帯接続がより高速な結果となっている(写真=右)

 以上の計測結果を統合すると、公衆無線LANの利用でも無線LANアクセスポイントとしての利用でも、NAD11で無線LANがIEEE802.11ac、および、5GHz帯に対応したメリットは大きい。意識しているユーザーは少ないかもしれないが、公衆無線LANも5GHz帯対応が着々と進むほか、ユーザーが多く見込まれるところではバックボーンの光回線切り替えが進んでいる。

 WiMAXとWiMAX 2+は2.5GHz帯という高い周波数帯を使うため屋内への電波の浸透度は低い。窓際では快適な場所でもフロアの奥に移動するとWiMAXやWiMAX 2+が繋がらないという場所もまだまだある。公衆無線LANによるエリア補間は有効なことが多く、5GHz帯の公衆無線LANを利用できればさらに快適に繋がる。

 無線LANアクセスポイントについては必要とするユーザーと必要としないユーザーで評価の差が大きいと思うが、5GHz帯対応の無線LANルータを未導入のユーザーにとってNAD11の+αの機能として悪くないだろうし、そのパフォーマンスもいい。2.4GHz帯のみの無線LANルータでさほど困ってないので、と買い替えを迷っているユーザーならモバイルルータの導入と同時に自宅で5GHz帯の無線LANも導入できるのは大きなメリットになるだろう。

WiMAXハイパワーの効果やいかに

 従来からWiMAXを利用していたユーザーがNAD11で注目するのがWiMAXハイパワー対応だ。この2年で登場したWiMAX対応ルータはほぼ対応していたが、HWD14が非対応であったことと、WiMAXの感度についてその影響が出ていたことはPC USERで以前掲載したHWD14のレビューでも確認している。ここでは現行のWiMAXモバイルルータであるUroad-Aeroを比較対照とし、エリアエッジ部分でのWiMAXハイパワーの効果を確認してみた。

 計測を行ったのは先ほどから登場している大田区内のファミリーレストランだ。HWD14のレビューでも利用しているが、その計測よりさらに奥まった席しか確保できなかったので、HWD14はWiMAXが完全に圏外となって比較対照に加えることができなかった。WiMAX 2+も圏外だ。

 計測に使った机の屋外側に隣接して広めの間仕切りがあり、この間仕切りの上と机の上で電波状態の違いが確認できたので、この2カ所をエリアエッジとして計測した。NAD11のインジケータを基準にすると、間仕切りの上はアンテナバーが1本と0本を行ったり来たりとなり、机上は0本だがどうにか繋がっており、時折圏外に落ちるという状況だ。このような電波状態になると、本体の向きでも結果が変わる。それゆえ、NAD11はクレードルに固定して前面を屋外側に、Uroad-Aeroも同様に固定して計測した。PCとの接続は2.4GHz帯のIEEE802.11nと条件をそろえている。

エリアエッジで確認したWiMAXパワー有効時におけるデータ通信速度。ファミリーレストランの奥の席における間仕切りの上(写真=左)と机の上(写真=右)のそれぞれで計測したスコア

 結果は、間仕切りの上でUroad-Aeroが受信速度で上回ったが、机上では僅差ながら逆転している。もっともここで確認したかったのはNAD11のWiMAXハイパワーの効果で、HWD14が完全に圏外なことや、現行のWiMAXモバイルルータであるUroad-Aeroに遜色ない結果を出しているということから、その効果は明確にあると言えるだろう。

 ここまでは、WiMAX 2+ルーターとしてNAD11の優位点となる無線LANのIEEE802.11ac、および、5GHz帯対応、そして、WiMAXハイパワー対応における性能について検証した。次回はハンドオーバー性能や使い勝手などについてチェックする予定だ。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

最新トピックスPR

過去記事カレンダー