本格的なトレンドになっているわけではなく、一部のモデルのみ対応にとどまるが、SSDキャッシュについても処理性能を上げるためのワザとして注目に値する。これは名前からも分かるように、読み書きの際のキャッシュとしてSSDを利用する機能で、仮想化など高い処理性能を必要とする場合に有効だ。
SSDキャッシュを利用するにあたっては、ドライブを取り付けているベイにSSDを装着するため、利用できるベイの数は減ってしまう。容量や冗長性よりもパフォーマンスを重視する場合に検討すべき選択肢といえるだろう。ベイを占有することから、あらかじめドライブがベイに装着された状態で販売されている国内メーカーのNASでは利用できず、NASキットならではの機能ということになる。
もっとも。読み書きの際のキャッシュとして利用することから、低容量ではあまり効果がなく、一定以上の容量を必要とするので要注意だ。例えば毎日数十GBの読み書きを行っている場合、数百GBもの容量が必要と見なされることもあり、コストパフォーマンスを考慮するとNAS本体ごとパフォーマンスの高い上位モデルに買い換えたほうが現実的ということも少なくない。PCのSSDを大容量のモデルに買い換える過程で余るなどした100GB未満のSSDを再利用することは、容量や寿命いずれの観点からも難しいと考えておいたほうがよいだろう。
最後に紹介するのがハードウェア暗号化機能だ。最新のトレンドというわけではないが、法人向けNASをチョイスする場合にはチェックしておきたい機能である。
フォルダに対して暗号化を施すと、起動時にパスワードを入力しなければ読み書きが行えないため、NASの盗難などに有効な対策となる。ポータブルHDDやUSBメモリなどでもおなじみの機能だが、NASは保存されるデータ量が多く、盗難に遭った際の被害は甚大であり、機能のプライオリティは高い。
保存されたデータを暗号化や復号する際に、それらの処理全てをソフトウェア側で行おうとすると、読み書きの速度が大きく低下する。その点、ハードウェア暗号化に対応した製品であれば、体感的には非暗号化時とほとんど変わらない違いにとどまるので、実用上ネックになることはまずない。
家庭用と法人用のNASの違いは、このハードウェア暗号化の有無から来ていることが少なくない。その分やや高価になってしまうのがネックだが、あとから追加できる機能ではないだけに、これから新規にNASを購入するのであれば予算をややオーバーしてでも、ハードウェア暗号化に対応したモデルを選ぶべきだろう。
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