Windows 10の標準ブラウザである「Microsoft Edge」が苦戦を続けている。
Webブラウザのシェア計測で知られるNetMarketShareによれば、2017年9月時点でのデスクトップ向けWebブラウザのシェアはEdgeが5.15%と、年間の集計で最低の水準だった。もっとも、変動誤差を考慮しても年間で5.15〜5.66%とほとんど変化していない。1位の「Google Chrome」は約6割のシェアを獲得しており、水をあけられている。
現在2位にある「Internet Explorer(IE)」のシェアが毎月低下している一方で、Windows 10のシェアは毎月伸びており、2017年9月時点で29.09%まで達した(1位のWindows 7はシェア47.21%)。本来であれば、Windows 10標準ブラウザのEdgeはもう少しシェアの上昇があってもおかしくないはずだ。
しかし、IEからEdgeへの移行はMicrosoftの狙いほどうまく進んでおらず、シェアの多くがChromeに集まりつつある。ユーザーはPCであっても、Windowsで最初から使えるブラウザではなく、あえてChromeを選んでいるということだろう。
この理由を2017年5月に掲載したレポートでも紹介しているが、現在のユーザーはWindows PCだけでなく、スマートフォンからタブレット、Macといった製品までクロスプラットフォーム対応を重視しており、クラウド経由でのブックマーク共有など、デバイスをまたいだ作業が容易な環境を選ぶ傾向が強い。
この点でWindows OSにしか提供されていないブラウザのEdgeは不利だった。Windows 10 MobileがiPhoneやAndroidスマートフォンに対抗できずメンテナンスフェーズに移行したことで、この傾向はますます強まっている。
しかしMicrosoftは10月5日(米国時間)、ついにEdge普及のボトルネックの1つとなっていたクロスプラットフォーム対応の強化に向け、「Microsoft Edge for iOS/Android」と「Microsoft Launcher for Android」を発表した。
iOS版とAndroid版のEdgeは、PC版Edgeとホーム画面の共有やコンテンツの同期が可能だ。9月17日の配信開始を予定しているWindows 10の大型アップデート「Fall Creators Update」で追加される新機能「Continue on PC」に対応し、PC版Edgeで見ていたページをスマートフォンのEdgeで開いたり、その逆ができたりするようになる。このように、従来のクラスプラットフォームにおける課題の一部を解決しているのが特徴だ。
一方のLauncherは、Androidのホーム画面をカスタマイズできる。Microsoftアカウントにひも付いたスケジュールや各種ファイルを軸にしたランチャーアプリで、「Google Now」のMicrosoft版と言えば分かりやすいだろうか。MicrosoftがスマートフォンOSの市場を取れていない現状を鑑みて、こうしたランチャーアプリを別途用意したと考えられる。
ただ、両製品ともプレビュー版のリリースであり、現時点で米国向け英語版の提供にとどまっている。Edgeについてはパスワードのローミング機能など、幾つか重要な機能がまだ実装されておらず、レンダリングエンジンもEdgeHTMLではなくiOSとAndroid純正のものを利用しているため、この点での動作の差異に注意したい。
またMicrosoft Edge for iOSについては、AppleのTestFlightによるによるβ版テストを利用している経緯もあり、事前登録が必要となる。米Microsoftのジョー・ベルフィオーレ氏によれば、同アプリのプレビュー版を提供開始した直後、TestFlightの「1万ユーザー」という上限にすぐに達してしまい、現在はアプリの利用が行えないという。仕様から考えて、プレビュー版の枠を外れるまで利用することは当面難しそうだ。
つまり、今回のiOS/Android対応はまだ始まりの段階にあり、Edgeのシェア上昇へ直近で大きな影響を与えるようなことはないとみられる。
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