故に筆者が疑問に思うのは、「なぜこのタイミングで“低価格タブレット”なのか」という部分だ。
最近のMicrosoftは特定市場でのラインアップ拡大にOEMパートナーの製品をプッシュする傾向が強い。実際に教育分野向けの製品ではGoogleの「Chromebook」対抗として、Windows 10 Sとともに、Surface Laptopとは別にOEMパートナー各社の低価格なPC製品(Windows 10 education PC)を紹介している。
これはMicrosoftが必死になってローエンド製品を出して市場を開拓、拡大していくことよりも、PC製品の開発から販売までは既にノウハウのあるOEMパートナーに任せ、自らはMicrosoft 365のようなサブスクリプションや管理ソリューションをその上で提供した方が効率がよく、分業体制が確立しやすいからだ。
2017年5月、Microsoftは「Windows 10 S」と「Surface Laptop」に加えて、OEMパートナーの低価格なWindows 10 S搭載PC「Windows 10 education PC」(189ドルから)も発表した同じことを考えている関係者は多いようで、Bloombergの報道を受けて米ZDNetのメアリー・ジョー・フォリー氏は同じ疑問を呈している。既にプレミアムラインとしてのSurfaceを確立している状況において、あえてまたブランドを毀損(きそん)してまで別の市場への再参入を行う理由は少ないのではないか、という見解だ。
Appleが2018年3月に新しい「iPad」を発表した際には、わざわざ米シカゴにある高校で「教育」をテーマにしたアピールを行い、米国教育市場でのプレゼンスが大きいGoogleのChromebook対抗を明確に意識している。とはいえ、Apple自身もプレミアムな価格帯にシフトしつつあったiPadの価格を引き下げることで社内競合が発生することを防ぐため、「Smart Keyboard」には非対応にするなど「iPad Pro」との差異化をいろいろと図っていた。
ただ、ジョー・フォリー氏は自身の情報源として、別のウワサも紹介している。
実際にMicrosoftはローエンドのSurfaceを開発中で、IntelのCore mプロセッサに4GBのメモリと64GBのストレージを採用し、キーボードカバーを除いて400ドル程度の価格を想定しているという。ディスプレイサイズは10型で、これはBloombergの情報と一致するようだ。また同じ情報源かは不明だが、2018年7月に少なくとも1機種のローエンドSurfaceを発表する計画もあるという。
ただ、これらの製品にSurfaceやSurface Proのブランドを使うかも含めて不明な点があり、そもそもこれが「Surface 4」的なものであるかも分からない。実際に市場投入されるかは不明だが、Chromebookや新型iPadで起きつつある低価格PC・タブレットの市場競合にMicrosoftが何らかの介入の意図があることは、似たような情報が同時に出てきたことからも可能性が高い。
しかし、過去のMicrosoft関係のウワサに比べて情報の錯綜(さくそう)が多いこと、そしてMicrosoftが過去に捨てた市場に時間を置かずに再参入するということから、低価格Surfaceの投入は確度としてはまだ低く、仮に製品が投入されるのであれば「Microsoftの戦略上の混乱」があると筆者は考えている。
米Neowinでも指摘されているように、ジョー・フォリー氏のいう400ドルで当該スペックのタブレットというのは部品原価を考えれば“安すぎ”で、恐らくMicrosoft 365のようなサブスクリプション契約の縛りがある、あるいはマーケティングのリベートのような仕組みがない限り、実現は難しい。
つまりサービスの拡販やプロモーションが主用途でない限りは、一時期の100ドル前後のWindowsタブレットが多数登場したような状況は再現されないのではないか。いずれにせよ、現在のMicrosoftの組織からは離れた動きであり、今後出ている情報も合わせてさらに分析していきたい。
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