Intelの戦略変更によるPC業界への最大の影響としては、安価なx86/x64プロセッサであるAtomシリーズの供給がストップし、いわゆる100〜200ドルクラスのWindowsタブレット市場が消滅に向かう可能性が考えられる。
もともと、IntelとMicrosoftはプラットフォームの普及を狙って実質無料に近い形でプロセッサやソフトウェアをOEMに供給していたと言われており(マーケティング費用としてリベートが供給されるモデルだとされている)、これを原資に一時期は100ドル未満のWindowsタブレットが市場に多数登場する事態にまでなっていた。
Android搭載製品では今後もこうしたローエンドクラスのものが登場する可能性があるが、少なくともフル機能のWindowsを搭載した廉価モデルはやがて消滅の方向へと向かい、400〜500ドル以上のやや高価格帯へとシフトしていくかもしれない。
またASUSのように、ハイエンドのAndroidスマートフォンを中心にAtom SoCを使っていたメーカーも影響を受ける可能性がある。これらの製品はやがてARMベースのプラットフォームへと全体にシフトしていくことも考えられる。
同様に、低価格スマートフォンやタブレット市場への浸透を狙って、Android OSのx86プラットフォームへのポーティング作業に膨大なリソースをつぎ込んできたIntelだが、SoFIAとBroxtonのキャンセルによって足場を失った形となり、Androidからは今後徐々にフェードアウトしていく可能性が高いと予想している。
一方で、Chrome OS搭載ノート「Chromebook」ではいまだCore MなどIntel製プロセッサを搭載した製品が登場しており、Googleとの今後の関係が気になるところだ。詳細はIntel側の発表待ちだが、同社がローエンド市場から撤退する中でのプラットフォーム戦略に注目してほしい。
今回のIntelの決定は、Microsoftのハードウェア戦略にも影響を与える可能性が高い。前述のようにSurface 3がCherry Trailベースだったことを考えれば、次の世代の「Surface 4(仮称)」はBroxtonベースになると予想されていた。
Broxtonのキャンセルを受け、それに近い低消費電力で低価格なプロセッサということで、Core Mのローエンド製品を採用する可能性もあるが、その場合はスクリーンサイズ以外で「Surface Pro」シリーズとの差別化が難しくなる。恐らくは、Surface 3を最後にこのシリーズはいったん休止となるか、あるいは全く別系統の製品としてリニューアルされるかもしれない。
またウワサとして広がっている「Surface Phone」ではIntel製プロセッサを採用する可能性が指摘されていたが、少なくともSoFIAとBroxtonのキャンセルでIntel製プロセッサを搭載したスマートフォンがMicrosoftからリリースされる可能性はなくなったと考えられる。実際にSurface Phoneが計画されているのかは不明だが、少なくとも従来の「Lumia」シリーズと同様にQualcommの「Snapdragon」シリーズが採用される可能性が高い。
そして、今回のIntelの戦略変更で影響を受けるのはWindows 10世代のモバイルOS「Windows 10 Mobile」も同様だ。Windows 10 Mobileについては、従来のQualcomm製チップセット以外にも、IntelのSoFIAなど対応ハードウェアを拡充していく計画があったと言われている。
しかし、スマートフォン市場だけでなく、8型以下の低価格タブレット市場でもWindows 10 Mobile for x86/x64の可能性が閉ざされてしまった。結局、Windows 10 Mobileの市場は今のままのペースで大きく拡大することはなく、OEMの増加とMicrosoftのエンタープライズ市場へのプロモーションで、スローペースでの増加にとどまると思われる。
まとめると、低価格なAndroid製品と真正面から戦っていたIntel製タブレットの市場は緩やかに消滅へと向かい、PC製品全体がやや高価格帯へとシフトすることになるだろう。同時に、タブレット市場ではAndroidとWindowsのすみ分けが比較的明確となり、200〜300ドル以下の市場ではAndroidがより優勢になると考える。
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