プロナビ

航空会社のANAが「移動しないで瞬間移動」サービスを提供する理由そろそろ会議やめませんか(2/2 ページ)

» 2019年11月12日 06時00分 公開
[西田宗千佳ITmedia]
前のページへ 1|2       

ロボットはパートナーが、インタフェースとポータルをANAが担う

 ANAはこの構造に「avatar-in」という名称を付けている。前述のnewmeも、その他のロボットも、全てavatar-inというサービスを介して利用することを前提としている。newmeで移動してコミュニケーションをするのが第一段階だが、釣りロボットで釣りを体験したり、二足歩行ロボットで山の中を歩いたり、特殊な技能を持った人が他の人を助けたり……という方向性を目指している。詳しくは、ANAが公開しているavatar-in構想のPVを見るのが分かりやすいだろう。

ANAが公開しているavatar-in構想のPV

 一方、そのやり方に落ち着かないものを感じる人もいるはずだ。実際、筆者もちょっとそう感じた。なぜなら、こうした「ロボット」の部分には、ANAのテクノロジーやノウハウは生かされていないからだ。

 newmeのようなコミュニケーションロボットは、何年も前から海外の展示会でよく見かける。デザインは独自に作ったようだが、テクノロジー的には陳腐なものだ。二足歩行ロボットは前述のように、アメリカの有名なロボット系ベンチャーであるAgility Roboticsのもの。Agility Roboticsは世界有数の技術を持つ企業だが、ANAHDはあくまで「パートナー」だ。他のものもパートナーが開発したものを展示していたに過ぎない。

 ロボット技術には多数のノウハウが必要になる。その部分は他社に依存しているため、「なんとなく落ち着かない」のである。

 それをANAHDはどう思うのか? ブースで担当者にたずねたところ、以下のような答えが返ってきた。

 「我々はどのような企業とも組めるように、消費者との接点となるWebのポータルを構築します。そして、そこと各ロボットとの仲立ちを規定する役目を果たします」

 すなわち、前述の構想のうち、avatar-inこそが「ANAHDの軸」なのである。統一的なWebを作り、そこに色々なロボットをひも付けて動けるようにすることで、利用者は乗り物を乗り換えるように、場合に応じて「移動先であるロボット」を使い分けられる。

 考えてみれば当然のことなのだが、ANAは航空会社であり、顧客対応のプロである。彼らのコアコンピテンシーは、ITやテレイグジステンス、ロボット技術にあるわけではない。人が快適に使うにはどうしたらいいか、そのための環境をどう整えるか、という部分にある。だから航空会社のグループが「アバターのポータル」を作るのである。

 問題は、これをどこまで本気でやって、我々の移動を軽減できるのか、ということだ。avatar-inは2020年から、newmeを介した実験の形でスタートする。東京オリンピックに合わせたテクノロジー・ショーケースではあるが、その先に「モビリティカンパニー」としての本気度があるかを見ていきたいと思う。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年04月26日 更新
  1. ワコムが有機ELペンタブレットをついに投入! 「Wacom Movink 13」は約420gの軽量モデルだ (2024年04月24日)
  2. わずか237gとスマホ並みに軽いモバイルディスプレイ! ユニークの10.5型「UQ-PM10FHDNT-GL」を試す (2024年04月25日)
  3. 「社長室と役員室はなくしました」 価値共創領域に挑戦する日本IBM 山口社長のこだわり (2024年04月24日)
  4. 「Surface Go」が“タフブック”みたいになる耐衝撃ケース サンワサプライから登場 (2024年04月24日)
  5. QualcommがPC向けSoC「Snapdragon X Plus」を発表 CPUコアを削減しつつも圧倒的なAI処理性能は維持 搭載PCは2024年中盤に登場予定 (2024年04月25日)
  6. 16.3型の折りたたみノートPC「Thinkpad X1 Fold」は“大画面タブレット”として大きな価値あり (2024年04月24日)
  7. あなたのPCのWindows 10/11の「ライセンス」はどうなっている? 調べる方法をチェック! (2023年10月20日)
  8. アドバンテック、第14世代Coreプロセッサを採用した産業向けシングルボードPC (2024年04月24日)
  9. AI PC時代の製品選び 展示会「第33回 Japan IT Week 春」で目にしたもの AI活用やDX化を推進したい企業は要注目! (2024年04月25日)
  10. ロジクール、“プロ仕様”をうたった60%レイアウト採用ワイヤレスゲーミングキーボード (2024年04月24日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー