日本におけるiPad Airと11インチiPad Proの1万4000円という接近した価格差(256GBモデルの場合)は、発売時期の違いによる為替の影響もあるが、YouTubeライブで購入に興味を持っている視聴者たちが重視していたのは、価格差よりもカラーであった。
中には「iPad Airの方が軽いところも魅力」という声もあったが、実際にはWi-Fiモデルで5g、Wi-Fi + Cellularモデルで8g軽いだけであり、厚みは0.2mmとはいえiPad Proの方が薄い。可搬性という視点でいえばほぼ同等で、実際の利用シーンでは違いがないというのが本音である。
Touch IDを好む場合でも、ミー文字などTrue Depthカメラに依存する機能との取捨選択という要素も出てくるなど、実はこの2つの比較、評価は難しいというのが正直なところだ。
スペックや機能で選ぶのであれば、ストレージ容量の選択肢も広いiPad Proを選ぶべきだろう。しかし、あえてカラーリングでiPad Airが欲しいというユーザーも一定数おり、また今回評価したような違いについて全くケアしない購買者層は価格差をお得感と捉えている。
「この価格差ならどちらを選ぶ?」という質問に即答でiPad Proを選ぶ層は、そもそもこうした解説を必要としていないのかもしれない。
ところでiPad Airなのか、iPad Proなのかという点を除くならば、現在のiPadはノート型コンピュータから持ち替えても使いやすく、この1台で仕事をこなせるぐらいに汎用(はんよう)性がある。
実は2世代前、現在のデザインにiPad Proが変更されたとき、半分はジョークで「1カ月間、iPad ProだけでMac・PC禁止生活」と題して、外出時だけではあるもののノート型コンピュータではなくiPadだけで仕事をしてみる、というトライアルをしたことがある。
当時はデータハンドリングなどさまざまな面で不便、あるいは工夫が必要なことが多く、また日本語入力も不十分だった。しかしその後、あまり大っぴらにはアナウンスされていないが、幾度となく日本語入力の振る舞いなどもアップデートされ、システム全体の使いやすさも高まってきた。
とりわけトラックパッド対応したことは大きく、MacとiPadを相互に行き来しても不自然と感じないほどの連携をするようになっている。Windowsとの間ではやや違和感を覚えるだろうが、単体のコンピュータとして使いこなせる幅の広さがある。
そしてもちろん、タブレット本来の簡単な使い勝手もあり、また高精度なApple Pencilでの入力が可能な液晶ペンタブレットとしても業界トップクラスの使い心地を誇る。強力なM1プロセッサは写真現像をしても、3Dグラフィックスを扱っても、動画編集や書き出しを行ってもハイパフォーマンスだ。
そこまで自分は使い込まないと思っている方にこそ、デスクトップパソコンのパートナーとしてのiPad Pro・Airを再評価してみてほしい。パートナーとして併用するコンピュータがMacならば、利用可能になったばかりの連携機能「ユニバーサルコントロール」もiPadのよさをさらに引き立ててくれる。
そうした視点で、これから成熟が進んだiPadを使ってみようと思い始めた読者に対しては、より間口の広い端末としてiPad Airはちょうどよい入口といえる。
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