続いて、実際のゲームをベースとするベンチマークテストを実行してみよう。
まず、比較的軽量な「ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレ ベンチマーク(FF14ベンチマーク)」を試してみる。画質設定は「最高品質」として、フルHD(1920×1080ピクセル)、WQHD(2560×1440ピクセル)、4K(3840×2160ピクセル)の3つの解像度でテストを行った結果は以下の通りだ。
3DMarkの各種テストと同様、各CPUでポイントは拮抗している。GeForce RTX 3060 TiでもWQHD解像度までは快適なプレイを期待できるが、(CPUのランクはさておき)4K解像度で余裕を持ってゲームを楽しみたいのであれば、先述の通り最新のグラフィックスカードを用意した方がよいだろう。
続いて、負荷の重い「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION BENCHMARK(FF15ベンチマーク)」を実行してみよう。画質を「高品質」に設定し、フルHD、WQHD、4Kの3解像度でベンチマークを実行した結果は以下の通りとなった。
FF15ベンチマークは、ほぼ同じ環境でそろえるとIntel製CPUの方がスコアを出しやすい傾向にある。しかし、ご覧の通りRyzen 7000シリーズ(通常版)はかなり健闘している。
3DMarkやFF14ベンチマークの結果と同様、結局はGPUが足を引っ張ってしまっているのだが、繰り返しながらCPU(とCPUクーラー)を節約して、その分をグラフィックスカードの強化に回せると考えると、自作PCを組み立てる上での悩みがよい意味で増えそうな気もする。
最後に、通常版(65W)のRyzen 7000シリーズの消費電力を確認してみよう。PCを起動してから10分間放置した状態の消費電力「アイドル」、3DMarkの「Time Spy Extreme」を実行中の最大消費電力を「高負荷時」としてワットチェッカーで調べてみた結果は以下の通りである。
高クロック版で比較したハイエンドシステムと比べると、高負荷時の消費電力は確実に抑えられている。Ryzen 9 7900の消費電力がCore i5-13600Kのそれを少し上回ってしまっているが、特にマルチコア性能を考えた場合は「5Wの上昇だけで済むのか」という見方もできなくはない。
消費電力と処理パフォーマンスのバランスで考えると、特にゲーミング用途であればRyzen 7 7700がベストバランスといえそうだ。消費電力はシステム全体となるため、組み合わせるグラフィックスカード次第で大きく変わる。今回の想定なら、少なくとも550W、できれば650W以上の電源ユニットを用意すれば安心して使えるだろう。
今回は非常に短時間のテストとなってしまったが、そこで強く感じたのはRyzen 7000シリーズ(通常版)の素性の良さである。
高クロック版と比べると、通常版のTDPは約半分で、定格クロックも1GHz程度引き下げられているため、性能はそれなりに低下する……と思いきや、思ったほど低下はしていなかった。むしろ、日常の利用シーンなら差を意識する瞬間はほぼ皆無といっていいだろう。「大きく差が付いたらどうしようか……」とちょっとドキドキしていたが、その心配は杞憂(きゆう)に終わった。
Ryzen 5000シリーズまで(Socket AM4)のRyzenユーザーの場合、Ryzen 7000シリーズへの乗り換えにはマザーボードとメモリの買い換えが必須となる。一方で、CPUファンはごく一部を除いて既存のものを流用できる。CPUとマザーボードとメモリを買い換えるだけで、結構いい感じの最新世代マシンを構築できることは良いことである。
一方、Intel CPUのシステムから乗り換える場合も、定格動作であれば十分に冷やせるCPUクーラーが付属しているので、Ryzen 5000シリーズまでからの乗り換えと同様にCPU、マザーボード、メモリの買い換えだけで済ませられる。水冷クーラーを使っていた場合も、Socket AM4/AM5用リテンションキットが付属していればクーラーを流用することも可能だ。
米国では229ドル(約3万円)スタートであることを比べると、日本における販売価格はやや割高かもしれない。しかし、日本でも最新世代かつ比較的手頃でそこそこ強いCPUである事実は変わりなく、何より「CPUで浮いたお金で他のパーツをパワーアップ」がしやすいことは自作ユーザーには朗報だろう。
Ryzen 7000シリーズ(通常版)は結構人気が出るのではないかと考えている。
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