ここからは、Ryzen 7000シリーズ(通常版)の実力をベンチマークテストを通して確認していこう。
今回は、AMDから提供された「レビューキット」に筆者の手持ちの機材を組み合わせて「税込み20万円以下で最新世代のCPUを搭載したPCを組む」というテーマでテスト環境を構築した。合わせて、CPUの実売価格が近いと思われる「Core i5-13600K」(Pコア6基12スレッド/3.5GHz〜5.1GHz+Eコア8基8スレッド/2.6GHz〜3.9GHz)の環境を比較のために用意している。
まず、3Dレンダリングを通してCPUの性能をテストする「CINEBENCH R23」を実行してみた。結果は以下の通りだ。
シングルコア
今回、比較用に用意したCore i5-13600Kの定格TDP(標準消費電力)は125W、最大消費電力は181Wに設定されている。そのこともあり、TDPが65Wである「Ryzen 7000シリーズ(通常版)は苦戦するのではないか?」という先入観もあった。
しかし結果はご覧の通りで、シングルコアのスコアは拮抗(きっこう)している。マルチコアのスコアを見ると、12コア24スレッド構成のRyzen 9 7900が、合計14コア20スレッドコア構成のCore i5-13600Kを上回っている。
高クロック版と同様に「全部がパフォーマンスコア(Pコア)」であるRyzen 7000シリーズ(通常版)はシングルコア性能において一定の強みを持っている。シングルコア性能がモノをいうゲームでは、この点が大きく優位に働くはずだ。
続いて、PCの総合的な性能をチェックできる「PCMark 10」の結果を見ていこう。総合スコアは以下の通りとなった。
PCMark 10のテスト内容は、Webブラウジングやオフィスアプリの操作、ビデオミーティング(Web会議)や簡単な画像編集といった基本的なPC操作にフォーカスしている。ゆえに、最新世代のCPU(やGPU)にとっては“余裕”なテストも少なくない。
その点を踏まえて今回の結果を見ると、3万7500円(想定価格)のRyzen 5 7600が、4万3000円弱(実売価格)のCore i5-13600Kと同等のパフォーマンスを発揮していることは注目すべきポイントかもしれない。
少なくとも日常利用でストレスを感じることは全くなさそうである。
Ryzen 7000シリーズ(通常版)は「より手頃な低消費電力CPU」をうたっている……のだが、先のシングルコア性能を見ると「ゲーミングでも結構イケるのではないか?」という期待が高まる。
そこでまず、3Dグラフィックスの総合ベンチマークテストアプリ「3DMark」を使って、どのくらいのパフォーマンスを発揮できるのか確かめてみることにしよう。今回はDirectX 12ベースの「Time Spy」「Time Spy Extreme」と、DirectX 11ベースの「Fire Strike」「Fire Strike Extreme」「Fire Strike Ultra」でテストを行った。スコアは以下の通りだ。
ご覧の通り、どのCPUを使っても大きなスコア差が出ていない。消費電力のことを考えると、Ryzen 7000シリーズ(通常版)はかなり健闘しているといえるだろう。
ただし、見方を変えると今回のテストではGPUが足を引っ張ってしまったともいえる。タイミングの都合で「GeForce RTX 4070 Ti」や「Radeon RX 7900 XT」と組み合わせたテストはかなわなかったが、税込みで25〜30万円の予算を確保できるのであれば、「CPUをRyzen 7000シリーズ(通常版)、マザーボードをAMD B650(あるいは同Extreme)チップセット搭載品にして、浮いた予算でより新しいグラフィックスカードを買う」という選択肢を検討してもいいかもしれない。
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