機器のメーカーや種類に依存しない健康管理サービスを――ウィルコムが汎用ソフト開発キット提供

» 2009年07月16日 15時52分 公開
[後藤祥子,ITmedia]

 電磁波が微弱で人体や医療機器への影響が少ないことから、多くの医療機関で採用されているPHS。ウィルコムは端末からアクセスネットワーク、バックボーンネットワーク、アプリケーションに至る各レイヤーで医療分野のサービスを支えており、最近では自治体と連携した健康管理ネットワークの構築や、地域医療連携の基盤構築にも乗り出している。

 7月21日、ウィルコムが説明会を開催し、医療関連サービスに関する新たな3つの取り組みを紹介した。

Photo 医療費の高騰、医師不足などの問題を解決すべくさまざまな法整備が進む中、ウィルコムも医療分野の取り組みを強化。今回紹介したのは、アプリケーションレイヤーと端末レイヤーにおける新たな取り組みだ

機器を選ばず利用できる健康関連サービスの開発をサポート

Photo 慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 准教授でPUCC 代表理事副会長と国際医学情報センター客員研究員の肩書を持つ北川和裕氏

 新たな取り組みの1つは、体組成計や血圧計などを使って得られた情報を有効に活用するための汎用的なソフトウェア開発キット(SDK)の提供だ。このSDKは、オーバーレイ/P2Pネットワークを推進するコンソーシアム「PUCC」に参加している、慶應義塾大学と国際医学情報センターが開発したもの。2009年9月中旬以降をめどに、無償での提供を予定している。

 昨今の健康機器は、体重や血圧、体脂肪率、筋肉の量などさまざまなデータを計測可能になり、USBやBluetoothなど外部インタフェースを備えるものも多い。取り込んだ各種データをインターネットを通じて送信し、健康管理に役立てようというサービスも増えている。

 しかし、慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科で准教授を務める北川和裕氏は、こうしたパーソナルヘルスレコードサービスは「どれもうまくいっていない」と指摘する。うまくいかないのは“データを集めてどうするのか”といったコアロジックが希薄なことと、ネットワークや機器を選ばず使えるサービスになっていないことが原因というのが、北川氏の見方だ。

 現状、多くの企業が自社の健康管理機器やネットワーク向けのサービスを開発しているが、サービスを利用するために必要な対応機器が限られるのではマーケットが広がりづらい。また、サービスを提供する側にしても、限られた機器のために多大なサービス開発コストがかかるなど非効率な部分も多い。こうしたサービス開発を、まず“サービスありき”で考え、利用者やサービスプロバイダが機器やネットワークを自由に選べる(マルチネットワーク、マルチデバイスの)枠組みを用意しようというのが、汎用SDKを提供する狙いだ。

 データ収集をする上では、Advanced/W-ZERO3[es]のようなスマートフォンがゲートウェイの役割を果たす。健康管理機器で計測したデータはUSBなどの既存のインタフェースを経由してゲートウェイのスマートフォンに送られ、スマートフォン上で既存プロトコルからPUCCプロトコルに変換される。変換されたデータはインターネットを通じてサーバに送られ、さまざまなサービスを提供するためのデータとして蓄積される。

 ウィルコムが提供するSDKは、Windows Mobileを搭載したスマートフォン上で動作する健康関連サービスアプリを開発するためのもので、SDKの開発に協力したオムロンヘルスケアやタニタ、エー・アンド・デイ、スズケン、東芝ホームアプライアンス、パラマ・テックといったメーカーの多様な機器との接続が可能。機器を選ばず利用できる健康関連サービスの開発をサポートするとともに、ミドルウェアを個別に開発する必要をなくし、開発コストの削減を可能にするという。

Photo 機器やネットワークに依存しないサービス開発をサポートするコンソーシアム「PUCC」。データ収集の概念図(左)とアプリケーションのレイヤー構造(中)。複数メーカーのさまざまな危機に対応したヘルスケアアプリを開発できる(右)

Photo さまざまなメーカーの多様な機器に対応するサービスを開発できる

医療情報の保護、訪問介護の効率化もサポート

 2つ目は、保険医療福祉分野の公開鍵基盤「HPKI」(Healthcare Public Key Infrastructure)を利用するためのHPKI標準ICカードドライバのライセンス販売。ウィルコムが三菱電機グループからライセンスを取得し、医療介護福祉機関などを対象に販売する。

 HPKIは、医師や薬剤師、看護師など25の保健医療福祉分野の国家資格と病院長など4つの医療機関の管理責任者の資格を認証する電子証明書。今後、厚生労働省が推進する社会保障カードや電子私書箱といった制度が導入されると、医療に関する情報流通が盛んになり、改ざんやなりすましを防ぐセキュリティが重要になる。HPKIを利用することで、医療関係者は資格を持つことを示す電子署名入りの文書を作成でき、受け取る側も作成者や改善の有無を確認した上で文書を受け取れるようになる。

Photo HPKIの特徴(厚生労働省の資料より)
Photo 電子署名を中心とした病診・診々連携、患者との連携の例(厚生労働省の資料より)

 3つ目は訪問看護師を支援するASPソリューション「ほうもん看護 サポート・モビ」の提供だ。このソリューションは介護支援事業を手がけるヴィータとウィルコムが共同で開発したもので、8月からヴィータが販売を開始する。

 スマートフォンを利用して看護記録を作成できるため、オフィスに戻ることなく情報を入力し、送信できる。介護記録はスマートフォンとモバイルプリンタをBluetoothで接続することでプリントでき、家族や看護師間での情報共有がしやすくなるという。

 ヴィータ 代表取締役の伊藤誠一氏は、看護師不足が深刻化する中、看護師が直行直帰できる体制作りや就労時間の短縮化が急務だと話し、このソリューションがそれをサポートできると胸を張る。「スマートフォン1台で介護現場で記録を作成できるので、これまでデスクワークに費やしていた時間を効率化できる。主治医とID/パスワードを共有すれば、医師とも情報を共有できる」(伊藤氏)

Photo ヴィータとウィルコムが共同で開発した訪問看護サポートシステム

Photo ウィルコムは、地域医療連携の基盤構築を目指しており、これまでにもさまざまな取り組みを行ってきた

Photo ウィルコムの医療分野の取り組みについて説明したウィルコム ソリューション本部 副本部長の大川宏氏(左)と、ヴィータ代表取締役の伊藤誠一氏(右)

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