国内6キャリアのトップが語る、ケータイ戦略の今とこれからワイヤレスジャパン2009(3/6 ページ)

» 2009年07月24日 19時17分 公開
[日高彰,ITmedia]

本気で戦えば日本メーカーは生き残る――ソフトバンクモバイル松本氏

Photo ソフトバンクモバイル取締役副社長の松本徹三氏

 ソフトバンクモバイル取締役副社長の松本徹三氏は、移動体通信市場のビジネスモデルの変容について講演。日本はキャリア(通信事業者)の力が強く、欧州では端末メーカーの力が強いと言われることがあるが、松本氏も「ヨーロッパのキャリアはNokiaを恐れていた」と、この見方に一定の同意を示す。ただし続けて「Nokiaが何年もかかって攻略した市場に、Appleが一夜にして攻めてきた。そして最後の決め手はGoogle。Googleが本気になったときはAppleを超えるかもしれない」とも述べ、現在、圧倒的な世界シェアを握るNokiaの地位も決して盤石ではないと指摘した。

 日本の携帯電話市場はキャリアの意向が強すぎるという意見があるが、松本氏は「毎月請求書が1枚だけ来て、その中に端末代金も通信料金も他のサービス料も全部も入っている、極めて明解なワンストップビリングのシステム」であり、何かトラブルがあったときも「ユーザーはキャリアに文句を言えばいい」ので、ユーザーから見てあらゆる窓口がキャリアに1本化されている優れた事業モデルだと主張。また、キャリアは利益を独占しているわけではなく、サービスをインテグレートする立場だとしている。

 端末メーカーの力が育たなかったのはキャリア中心の業界構造のせいという見方もあるが、これについても松本氏は反論。その理由として、日本に近い事業モデルでありながら、Samsung、LGという世界的な端末メーカーを輩出した韓国の存在を挙げる。彼らと日本メーカーとの違いは「本気で戦うという意思があるか」ということであり、最初から世界市場を視野に入れ、日本で得られる収入を「下支え」として認識し、それを元手に海外に打って出ていれば、今ごろは世界でも優位な位置に付けていただろうと振り返る。

 しかし松本氏は、日本メーカーにとってはむしろこれからがチャンスだと見ている。これまでは「日本メーカーはきちんとしたOSを作らないまま、温泉旅館のように機能の建て増しを繰り返してきたため、ソフトウェアの開発負荷が膨大だった」(松本氏)が、今後はオープンOSや統合ミドルウェアの採用が進むため、海外製品にソフト面で遅れをとることも少なくなる。すると、日本メーカーがもともと得意だったハードウェアの細かな作り込みが差別化要素となるので、本気で取り組めば再び世界市場で強い存在感を示せるようになるというわけだ。

 ソフトバンクモバイルが今後導入する新技術については、2010年3月のPDCサービス終了後、1.5GHz帯でHSPA+をスタートすると説明。松本氏は、使用する周波数帯域幅が10MHz程度以下であればHSPA+も「データスループットはLTEとほとんど変わらない」と見ており、なおかつLTEネットワークを3G端末で使うことはできないため、2010〜2011年時点では魅力的なLTEの端末ラインナップを用意することは難しく、「LTEを本気で導入するのは2012〜2013年」(松本氏)になると見る。また、アナログテレビ放送終了後に空く予定の700/900MHz帯で免許を取得して、この周波数帯でLTEを展開するのが同社にとって理想的なシナリオだとしている。

Photo キャリア主導型の携帯市場は、ユーザーから見てあらゆる窓口がキャリアに1本化されている優れた事業モデルだと主張(左)。日本の端末メーカーは「これからがチャンス」だという(中)。LTEについては「本気で導入するのは2012〜2013年になる」と見る

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