販売現場で特に重要な「ES(Employee Satisfaction=従業員満足度)」「CS(Customer Satisfaction=顧客満足度)」と利益率の関係についても、北氏は言及しました。まず、ESとCSで必要なものは何でしょうか。ESは販売数や店舗目標などの達成や高待遇、スタッフ自身が働きたいと思う店舗や部署への配属などが挙げられます。CSはお客様への対応、質が高く安価な商品やサービスの提供、クレームを迅速かつ丁寧に処理することなどが挙げられます。
店舗運営ではどちらも必要ですが、お客様にとっては、懇切丁寧にいろいろな相談に乗ってくれるスタッフが多く存在する店舗が望ましいでしょう。しかし、CSが高いからといって必ずしも利益に直結するわけではありません。顧客の満足度を高めながら物を売るのは難しく、結果が出るまでには時間がかかります。もちろんCSは重要で、店舗を継続的に運営するためには、まず利益を上げた上で、顧客満足度を向上させてリピーターを増やすことが必要です。
私も、CSを利益に結びつける難しさを何度も実感してきました。お客様に多くの時間を費やしお客様も頻繁に店舗に訪れ、良好な関係を築いたとしても、最終的には別の安い店舗で契約、または端末を購入することもあります。「そりゃないだろう」と思うスタッフもいるでしょうが、例えば欲しい機種がA店なら1万円、B店なら2万円として、B店のスタッフがいかに親切な対応をしてくれたとしても、A店で購入するお客様もいるでしょう。もちろん、他店よりも価格が高いのを知ったうえで、CSの高い店舗、気に入ったスタッフから購入するお客様もいます。いわゆる“店員に客が付く”という状態です。しかし、そうなるまでには非常に時間がかかることが多く、結局購入しない場合もあります。
販売員だから「売ってなんぼ」なのか、接客業なのだから「お客様を満足させてなんぼ」なのかという考えはスタッフによって異なります。どちらが正しいとは言えませんが、店舗運営ではESとCSのバランスが非常に重要です。どちらのスタンスを重視するか、代理店と店舗側でスタッフにしっかり伝えていくとともに、教育者や環境を整えることも必要となってきます。
「売ってなんぼ」のES重視のスタッフは、目標台数の達成や難しいお客様を獲得することに喜びを感じ、「お客様を満足させてなんぼ」のCS重視のスタッフは、お客様の笑顔や繰り返し来店してくれることに喜びを感じます。そのスタッフが元々持っている性格や価値観、経験によって自然にどちらかに分かれます。しかし、ES重視のスタッフがCS重視、CS重視のスタッフがES重視のスタンスを強いられると、精神的な負担が増します。場合によってはそれがきっかけで辞めてしまうこともあります。教育に加え、スタッフのケアやサポートができる環境も必要だと思います。
次回は、実際の販売現場に関わるスタッフの意見や現場の状況などについて紹介します。
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