はじめまして。ケータイやモバイルなどのデジモノ好きが集まった団体「K-MAX(ケー・マックス)」の代表をしております三宅勉と申します。ITmediaでは2106bpm名義でいくつか記事を執筆していますが、それとは別に連載コラムを書かせていただくことになりました。こちらの連載ではケータイ販売に関する内容を書いていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
一言でケータイ販売と言ってもさまざまな業務があります。私は過去に量販店で通信キャリアのヘルパー(販売支援)を経て、併売店の店長をやっていました。現在は販売の現場から退き、こうしてライターとして活動しています。私が販売現場を最後にしたのは今からおよそ4年前のことでした。当時は「ウィルコム定額プラン」が始まり、ソフトバンクモバイルはまだ携帯電話事業に参入しておらず、「Vodafone」が存在していました。その後、MNP(携帯電話番号ポータビリティ)や割賦販売制度が導入され、現在の販売現場は当時に比べ大きく変わりました。
現在の販売現場はどんな状況なのか、また私が販売の現場にいた頃と比べてどこが変わったのか――。少し古いですが、「ワイヤレスジャパン2009」で開催された「携帯電話流通を支える販売店ビジネスフォーラム」での、野村総合研究所 情報・通信コンサルティング部 GM 上席コンサルタントの北俊一氏の講演をベースに、私が実際に体験したことを加えて考えたいと思います。
カンファレンスでは、北氏が市場の動向分析と販売分野での現状と今後を代理店向けに解説。「割賦販売の導入や市場の飽和状態により、新規契約は減少しているものの、アフターサービスによる収益は増えている」とのこと。しかし、アフターサービスを実施していない店舗は非常に厳しい状態で、アフターサービスを行う店舗も、今後はキャリアの施策に応じたサービスを拡充する必要があると同氏は解説していました。
私が販売の現場にいたころから、「いずれ量販店と専売店しか生き残れない時代がやってくる」と業界内では言われ続けていました。実際、市場の飽和に加え、割賦販売の導入でケータイの買い替えサイクルが長期化しているため、新規契約や機種変更の収益がメインの併売店は、ケータイ以外の商材や店舗独自のサービスを積極に導入する必要があります。しかし、これは併売店だけの話ではなく、量販店や専売店でも競争に勝つためには、さまざまなサービスや店舗展開が必要になります。北氏が挙げた具体策の中で、私が興味深いと感じたのが海外展開です。
飽和した国内市場では、企業同士のM&A(合併と買収)などでコスト削減を図り、収益を上げていくことも必要ですが、「世界に目を向けると魅力的な市場がある」と北氏は言います。特に中国市場では需要も大きく、日本国内では年間の出荷台数が約3000万〜3500万台であるのに対し、中国では年間およそ2億4000万台のペースで伸びています。市場の規模もそうですが、中国ではキャリア再編を経て3G時代に突入し、買い替え需要が伸びていることもあり、中国市場への展開はチャンスだと同氏は見ています。
端末ベンダーと同様、M&Aに加え海外展開という構図は販売分野にも言えます。海外出店をする際に求められる人材は、語学力はもちろん、海外のケータイ事情や販売方法、利用方法にも精通している必要があります。国内の販売でも、特にMNP以降は単一キャリアだけでなく全キャリアの知識も必要とされてきましたが、販売分野の海外進出や通信規格のグローバル化がさらに進めば、販売員に求められるスキルのレベルがさらに上がることは間違いないでしょう。
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