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» 2010年04月21日 10時00分 公開

開発コードネーム「メトロ」に込めた意味――Windows Phone 7の戦略を聞く(前編)神尾寿のMobile+Views(2/2 ページ)

[神尾寿,ITmedia]
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―― 言われたことをやるのではなく、言われる前に用意する。日本的な「おもてなしのUI」ですね(笑) スマートフォンのようなモバイル端末では、画面サイズや入出力デバイスに制限がありますし、“立ったまま使う”といった利用環境もPCよりシビアです。そう考えますと、いかにユーザーの求めるニーズに先回りして、少ないステップ数で操作できるようにするかという部分がとても重要ですね。スマートなUIが、スマートフォンの商品性を大きく左右するといっても過言ではありません。

越川 おっしゃるとおりです。正直に言いますと、iPhoneやAndroidに対して、UIの部分で優位性を出すにはWindows Mobile 6のシリーズでは難しい部分があります。ですから、OSやUIの根本から作り直す必要がありました。それがWindows Phone 7です。

 Windows Phone 7は(デジタルオーディオプレーヤーの)「Zune」のコンセプトを発展させており、Zune Phoneと言ってもいいものになっています。コンシューマー向けを強く意識していて、誰でも使いやすいものになっている。一方で、6.5.3は従来のコンセプトを継承していますから、ビジネスユースももちろんなのですけれど、スマートフォンを自由にカスタマイズして使いたい人に向いています。

―― UIで見ますと、Windows Phone 7はAV機器やゲーム機に近い“誰でもそのまま使って分かりやすい”というコンセプトを持ち、6シリーズはPC的な“カスタマイズして使う”というコンセプトを継承するわけですね。Windows Phone 7はマイクロソフトにとって新たな挑戦になる、と。

越川 我々としては、iPhoneやAndroidを真似るのではなく、新たなユーザー体験の提案をしたい。そのためにゼロから創りあげたのが、Windows Phone 7です。

まずはユーザー体験をマイクロソフトがコントロール

―― 優れたUIやユーザー体験の創造では、Appleの開発力は優れたものがあります。それに対して、マイクロソフトはどのように対抗するのでしょうか。

Photo 「6.5シリーズと7は併存するという前提で、Windows Phone 7はユーザー体験をマイクロソフトがコントロールする形でリリースします」(越川氏)

越川 Windows Phone 7のユーザー体験を作るにあたり、そのベースになったのが「Zune HD」です。このZuneは北米市場でのテストマーケティング的な位置づけもあったのですが、そこから多くのノウハウを得ています。

 まず、UIに関しましては、(ユーザーの目的とする機能を事前に提示する)“ナビゲーション”を軸にしたインタフェースデザインが好評でした。さらにお客様に評価していただけたのが、「Xbox Live」におけるコンテンツやアプリ販売との“統合された連携”の部分です。

 Zune HDとXbox 360は北米市場で予想以上に売れていまして、この連携・サービス統合のユーザー体験の部分に多くの知見を得ました。もちろん、北米市場のユーザーニーズがすべてではありませんが、(Zune HDとXboxで成功したことで)Windows Phone 7のユーザー体験における礎ができました。これを発展させることで、一般ユーザーにとって魅力的なユーザー体験が構築できるでしょう。

―― ユーザー体験に対するWindows Phone 7の考え方は、iPhone的と言いますか、コンシューマー機器に近いという印象を受けます。Windows Mobile 6.5ではPC的に、UIの部分の自由度がかなり高かったわけですが、この部分は“一般ユーザーに優れたユーザー体験を提供する”トレードオフとして、ある程度制限されると考えていいのでしょうか。

越川 UIをある程度画一的にするのがいいのか、それともメーカーやユーザーが自由にいじれる方がいいのか、その「メリットとデメリット」は我々も長い時間をかけて研究しました。そして、6.5シリーズと7は併存するという前提で、Windows Phone 7は“まずはユーザー体験を(マイクロソフトが)コントロールする”という形でリリースします。なぜそうするかと言いますと、Zuneで培ったユーザー体験やLive !サービスとのシームレスな連携、我々が考える使いやすさというものを、まずはしっかりとユーザーの皆さまに伝えたいからです。ですから、Windows Phone 7を採用するメーカーには、まずは我々が作るUIをそのまま使っていただきます。

 しかし、将来的にはUIの多様化が起こります。基本的な操作体系と画面解像度は定めますが、入力デバイスとしてキーボードやテンキーが利用できたり、ゲームパッドのようなUIを持つような端末も出てくるかもしれません。

 Windows Phone 7で、我々が(UIデザインやハードウェア仕様を)しっかりと決めて出すのは最初のフルタッチパネル端末で、それ以降のさまざまな入力デバイスを持つ端末は、メーカーのカスタマイズモデルという形になります。統一感のあるユーザー体験を重視しながらも、可能なかぎり、多様性は維持していきたいと考えています。

開発コード名に込めた思い

―― ちなみにWindows Phone 7の標準UIに開発コードネームはあるのでしょうか。

越川 お客様向けにはLive Tilesという名前を出させていただいてますが、社内では開発コードネームで「メトロ」と呼んでいます。

 この名前には我々の思い入れがありまして、地下鉄の経路案内表示をイメージしているのです。東京やニューヨークの地下鉄に乗っていただくと分かると思いますが、地下鉄の経路案内表示はアルファベットとカラーで整理してあって、とても分かりやすくお客様をナビゲートしている。しかもデザイン性も高いですよね。それにあやかって、ユーザーを迷わせず、目的とする機能やコンテンツに案内するUIデザインを目指すということで、メトロと名付けたのです。

―― なるほど。Windows Phone 7ではUIデザインに注力されているのですね。

越川 スマートフォンを普通の人が使えるものにするためには、「UIが命」だと思っていますから。

(後編に続く)

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