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» 2010年12月22日 12時30分 公開

神尾寿のMobile+Views:2011年は「大変化の年」!? 携帯3キャリアのスマートフォン戦略を読み解く(後編) (2/2)

[神尾寿,ITmedia]
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各モデルは粒ぞろい、Android対応サービスも充実

 具体的に、各モデルにも目を向けてみよう。

 今回ソフトバンクモバイルは6機種のスマートフォンを投入したが、ハイエンド需要に特化し、メーカーの自由度が尊重されたせいか、個々のモデルは個性があり、粒ぞろいだ。とりわけ筆者が注目した製品が2機種ある。

 1つはHTC製のHTC Desire HD 001HT。これは筆者がロンドンでの発表会でも取材したものだが、日本語化がしっかりと施され、“日本人向けのAndroidスマートフォン”としてしっかりと作り込まれていた。金属をメインフレームとするボディは質感と剛性感が高く、やや無骨だがデザイン性は高い。そして何より、“ぬるぬる”とスムーズに動くUIがすばらしい。画面は大きくて見やすく、日本語フォントにもこだわって美しいものを搭載している。海外メーカー製のAndroid搭載スマートフォンとしては、ドコモ向けに供給されているSamsung電子の「Galaxy S SC-02B」が脚光を浴びているが、ハイエンドモデルとしての総合力はHTC Desire HD 001HTの方に軍配が上がる。特にデザインと画面の見やすさを重視する人は、HTC Desire HD 001HTは要チェックだ。

 そして、もう1つがGALAPAGOS 003SHである。こちらはシャープ謹製の和製スマートフォンであるが、最新のAndroid搭載のよさを生かしつつ、シャープが独自にUIや文字フォントにこだわり、“日本のケータイユーザー”にとって使いやすく満足できる仕上がりになっている。au向けの「IS03」はキャリアとの共同開発・連携重視ということで“auとの統一感”がある使いやすさを実現していたが、GALAPAGOS 003SHはシャープが“のびのびと作った”という印象である。メニューのカテゴリー分けやアイコンの配列、日本語フォントなど細かな部分までシャープのこだわりが感じられ、とても好感が持てた。スマートフォンにも日本のケータイならではの“おもてなし”を求める向きには最適な1台だろう。

 デルのDELL Streak 001DLやHuaweiの004HWなども目を引いた。前者はスマートフォンとタブレット端末の中間的な位置づけの製品としてハイエンドユーザー層のマニア心をくすぐりそうであるし、後者はAndroidスマートフォンのエントリーモデルとして法人ユーザー向けなどによさそうだ。

 サービス面にも目を向けてみよう。

 ソフトバンクモバイルは今回のAndroidラインアップ投入にあわせて、専用サービスも拡充してきた。特に筆者が重要と見るのが、Androidマーケットへのキャリア課金の提供と、ウイルス感染やマルウェアのダウンロードを予防できるMcAfeeのスマートセキュリティの導入だ。どちらも安心してAndroidスマートフォンを使う上では必須の機能であり、ユーザー層を問わず必要なものだ。また3D対応のUstream Viewerや電子書籍配信サービス「ビューン」のAndroid版も用意し、コンテンツ面でもAndroidサポートをきちんと行っている。ソフトバンクモバイルは今回、Android端末の作り込みには否定的な姿勢を取ったが、サービスやコンテンツ面ではキャリアの役割をきちんと果たしている。このあたりはiPhoneでの経験がしっかり生かされていると高く評価できる。

一般コンシューマー向けAndroidは、2011年後半か

 iPhoneを補完し、iPhoneと棲み分ける。

 この戦略のもとで用意されたソフトバンクモバイルのAndroidスマートフォンは、その位置づけがはっきりしており、ハイエンドユーザーにとっては選びやすい内容になっている。端末価格や月々の利用料金がiPhoneより割高に設定されており、「欲しい人(ハイエンドユーザー)なら、多少割高でも買うだろう」と足下を見られている感じがするのはしゃくに障るが、ハイエンドモデルを中心に個々の端末に個性と魅力があるのは確かだ。

 ただ、その一方で、ソフトバンクモバイルのAndroid搭載スマートフォンが爆発的にヒットするかといえば、そうではないだろう。ドコモやKDDIでは、Galaxy SやIS03などAndroid搭載スマートフォンが好調なセールスを記録しているが、ソフトバンクモバイルのAndroid端末はコンセプトから販売戦略まで“iPhone補完”となっているため、iPhoneを超える大ヒットになる可能性はゼロに等しい。前述のHTC Desire HDやシャープのGALAPAGOSなどは、Galaxy SやIS03の向こうを張れる魅力的なAndroid端末であるが、ソフトバンクモバイルのiPhoneを優先するラインアップ戦略の下では、言葉は悪いが“飼い殺し”になってしまうことすら考えられる。ソフトバンクモバイルはiPhone/iPadという「最強の武器」を持つがゆえに、スマートフォン戦略全体でそれに縛られてしまっている一面は否定できない。

 むろん、ソフトバンクモバイルも2011年後半には「一般コンシューマー向けのAndroidスマートフォン」を投入してくる。ここではキャリアとしての作り込みもある程度は行い、海外/国内メーカーを問わず、幅広いラインアップを整えてくるだろう。その時、同社の主役であるiPhoneとの位置づけをどう整理するのか。iPhoneとAndroidスマートフォンの両方を、コンシューマー市場で成長させる戦略が取れるのかどうかが、今後のソフトバンクモバイルの注目ポイントだ。

 iPhone/iPadの大きな可能性をいち早く見いだし、日本で育てた孫正義社長は、Androidスマートフォンの世界でも“育ての親”になれるか。その手腕を期待を持って見守りたい。

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