「スマートフォンは新しいケータイ」(The smartphone is the new phone)
台湾HTC CEOのピーター・チョウ氏は、同社の新たなスマートフォン「Desire HD」と「Desire Z」の発表会場で、こう高らかに宣言した。2007年にAppleが「iPhone」を発売して以降、それまでホワイトカラーを中心としたビジネスパーソン向けだったスマートフォンは、若年層を中心とした一般ユーザー層に浸透。2009年後半からは、iPhoneの躍進に加えてAndroid搭載端末が増加し、「スマートフォンはコンシューマー市場の重要なセグメントになった」(チョウ氏)のだ。
この世界的なスマートフォン隆盛の波に乗るべく、HTCが投入するのがDesire HDとDesire Zだ。両者は数あるスマートフォンの中でも最新鋭・高性能なデバイスを洗練されたデザインでくるみ、Androidも最新バージョンの2.2を採用した。
このHTCの新型端末の実力はどれほどのものなのか。日本市場へのインパクトはどれだけあるか。
筆者は英国ロンドンで開催されたHTCの発表会に参加。Desire HDとDesire Zにいち早く触れる機会を得た。そのファーストインプレッションをもとに、その魅力と可能性を評価したい。
コンシューマー向けスマートフォンにとって、重要なのがデザインである。いくら高性能な端末であろうとも、デザインにセンスがなくてチープであったら、一般ユーザーの心はつかめない。
今回、HTCはDesire HDとDesire Zという2モデルを同時に発表したが、デザインへの共通のこだわりが「素材へのこだわり。金属を(メインフレームに)ユニボディとして使って、その上にヘアライン加工などを用いて高級感を出した」(HTC CIOのホラス・ルック氏)。このマテリアルにこだわった上で、両者は製品コンセプトの違いにあわせて異なるデザインが与えられている。
まずDesire HDを見てみよう。こちらはフルタッチパネルの4.3インチワイドVGA(800×480ピクセル)液晶ディスプレイを搭載しており、第一印象はかなり大きい。外形寸法は123(高さ)×68(幅)×11.8(厚さ)ミリであり、ほとんどが液晶画面の大きさとなっている。ディスプレイの存在感は、かなりのものだ。
前述とおり、ボディは金属製のユニボディ。背面の丸みや細部の切り抜き、組み合わせ部の隙間の小ささなど、加工精度はかなり高い。触ったときの質感も高く、樹脂を使ったスマートフォンにありがちな、プラスティッキーな安っぽさは微塵もない。しかし、カメラ周りやLEDフォトライト周辺、バッテリーカバー、SIMカードおよびMicroSDカードスロットのカバー部などには段差や継ぎ目があり、iPhone 4のすっきりとした背面デザインと比較すると、やや無骨な印象を受けた。
Desire HDはカメラ性能が高く、バッテリーカバーとSIMカード/microSDカードスロットカバーの部分に電波受信感度向上のためのアンテナを仕込むなど機能性も重視されているため、Appleほどは細部へのこだわりや完璧さを求めなかったのかもしれない。だが、金属をうまく使い全体的な質感を高めているのは事実であり、現行でトップクラスの高品質なデザインを実現していることは間違いない。
一方で、筆者がDesire HDで気がかりだったのが、横幅の大きさだ。周知のとおり、日本で持ちやすいとされるモバイル端末の横幅は50ミリ前後。iPhoneやスマートフォンの登場で、その定義がやや変わってきてはいるものの、Desire HDの幅68ミリは男性である筆者の手にも大きいと感じた。これでは手の小さな女性では片手持ちでの利用は難しいだろう。
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