らくらくホンは日本のシニア層が作ったブランド――ドコモが感じる“自信”と“責務”“防水・防塵らくらくホン”のねらい(1/2 ページ)

» 2009年07月28日 20時07分 公開
[田中聡,ITmedia]

 「しんせつ」「かんたん」「見やすい」「あんしん」を追求した「らくらくホン」は、シリーズを追うごとにその使い勝手に磨きをかけてきた。新モデルの「らくらくホン6」は、かねてから要望の高かったという防水性能に対応したほか、国内の携帯電話では初めて泥がついても洗い流せる防塵機能に対応した。1999年の初代らくらくホン発売から10年を迎えた今、らくらくホンが目指すものとは――。

シリーズの累計販売台数は1500万台を突破

photo 「PRIME」「STYLE」「SMART」「PRO」シリーズとは別に、5つ目のシリーズとして「らくらくホン」が存在する

 NTTドコモ 執行役員 プロダクト部長の永田清人氏は、「PRIME」「STYLE」「SMART」「PRO」というドコモ端末のラインアップの中で、「らくらくホン」シリーズは独自のセグメントに属すると説明。「らくらくホンは、“使いやすい機能を無理なく安心して使いたい”というお客さんに向けたモデル。らくらくホンシリーズは今年で10年を迎えるが、当初からお客さんのライフスタイルをベースに考えて開発してきた」(永田氏)。

 さらにドコモは、「最新のサービスを使いたい」「電話だけ使えればいい」といったらくらくホンユーザーのさまざまな要望を満たすべく、「らくらくホン プレミアム」「らくらくホン ベーシック」「らくらくホン シンプル」といった派生モデルを展開してきた。「らくらくホン6は“らくらくホンスタンダード”に属するモデル。皆さんが使いたい機能をきっちり用意し、安心して使ってもらえる工夫を凝らした」と永田氏は胸を張った。

 順調に販売台数を増やし続けたらくらくホンシリーズは、2009年3月には累計販売台数が1500万を突破した。「発売当初は販売が伸び悩んだが、らくらくホンには価値があると自信が持てた。同時に、たくさんのお客さんに対して機能と心地よさを提供しなければならないという責務も感じている」と永田氏は話し、らくらくホンがドコモの重要なラインアップに含まれることを示した。

photophotophoto 現在のらくらくホンは、「プレミアム」「スタンダード」「シンプル」「スタンダード」の4つのラインアップに分類される(写真=左)。初代らくらくホン「P601es」の発売から10年、らくらくホンシリーズの累計販売台数は1500万台を突破した(写真=中)。らくらくホンシリーズは、ドコモの販売ランキングで必ず10位以内に入るという人気端末となった(写真=右)

 らくらくホンは今でこそ“シニア向け”のイメージが定着しているが、1号機の発売当時は違ったという。「当初はエグゼクティブ層が使うことは想定していたが、シニア層が使うという感覚はなかった」と永田氏は振り返る。「らくらくホンは仕掛けて成功したというよりは、お客様に作っていただいたブランドだと思う。世界的に見てもこういう商品はない。日本の文化を含めて、日本のシニア層が作った商品だ」と話した。

photophoto らくらくホンに寄せられているユーザーの要望(写真=左)。らくらくホン6で機能拡張されたポイント(写真=右)

“らくらくホン”ブランドは日本のシニア層が作ったもの

photo NTTドコモ 執行役員 プロダクト部長 永田清人氏

 永田氏は、らくらくホン6の大きな訴求ポイントである防水・防塵性能に加え、“おかませ機能”を充実させたことにも言及した。「絵文字を使ってコミュニケーションをしたい人向けに『おまかせ絵文字』、カメラのピントを自動で合わせる『おまかせオートフォーカス』を搭載し、おまかせ機能を拡充した」(永田氏)のが特徴だ。

 らくらくホンのスタンダードモデルとして初めてワンセグを搭載したのも進化点の1つ。ただし永田氏は「(らくらくホンは)若者向けのハイエンドモデルと違い、最新の機能を詰め込んだわけではない。『らくらくホン ベーシックII』にカメラを搭載したように、お客さんの成長に合わせて1つずつ機能を追加していく」と説明する。「プレミアム」や「ベーシック」の今後のシリーズ展開については、「機能の普及を見ながら考える」とした。

 また、団塊の世代をはじめ、今後らくらくホンを使うことが想定されるケータイユーザーに向けた展開については、「らくらくホンだけではカバーできなくなりつつあるが、2009年春モデルから安価になった「ie」系のモデルが1つの回答になる」と同氏は説明。「物理的なキーや持ちやすさは別だが、文字の一括拡大などはソフトでも実現できるので、お客さんに選んでもらえるようバリエーションを充実させたい」と話した。

2、3年の失敗を糧に“防水らくらくホン”を実現

photo 富士通 取締役副社長 富田達夫氏。「F-09AとF-08Aは好調な販売実績をあげている。らくらくホン6も含め、2009年度の販売目標である460万台の達成に向けて頑張りたい」

 富士通 取締役副社長の富田達夫氏は「らくらくホンはお客さん目線で開発してきたと自負している。“らくらくホン”と言いながらも開発は決して“らくらく”ではないが、ハードとソフトを含めたいろいろな面で努力してきた」と同シリーズを振り返った。

 「お客さんが『防水が欲しい』という要望をお持ちなら、防水性能の実現に向けてチャレンジしないといけない。らくらくホンの防水性能は、富士通の研究所と一体となって数年前から準備してきたが、失敗も多かった。2、3年の失敗が今回の防水性能の実現につながった」と同氏は苦労を明かした。

photo 富士通 執行役員常務 佐相秀幸氏。「らくらくホンは『泥がついても洗い流せるからあんしん』と5秒でアピールしたい」

 「らくらくホンは富士通の主力機種として、総力を挙げて取り組んでいきたい。らくらくホン6は売れ筋モデルになると期待している」(富田氏)。

 富士通 執行役員常務の佐相秀幸氏は「お客様視点で物作りをするのはどの商品でも同じだが、らくらくホンは富士通の研究してきた技術基盤をぶつけ、ニーズ(需要)とシーズ(技術)がマッチしたことで完成した」と話し、同社のマーケティングと高度な技術が、らくらくホン開発のベースになっていることを改めて示した。

photophoto らくらくホンのコンセプト(写真=左)。らくらくホンは、ユーザーの要望を富士通の技術で満たすことで完成した(写真=右)

 防水・防塵性能を搭載した理由について佐相氏は「65歳以上で農林漁業に従事する方は約127万おり、大半がシニア層。また65歳以上の趣味は『園芸』が最多という統計も出ており、防水と防塵の要求が高いことも論理的に裏付けている」と説明した。

photophotophoto らくらくホンに対する要望は防水性能が最多という調査結果も出ている(写真=左)。シニア層は農林水産業に従事する人と、園芸やガーデニングを趣味に持つ人が多い(写真=中)。らくらくホン6は、「防水×らくらくホン」と「健康機能の進化」を主軸とする(写真=右)

 防水ケータイはパッキンを装備するなど分厚くなりがちだが、らくらくホン6はクリック感を損なわないキーや、ワンタッチでケータイを開けられる「オープンアシスト」を搭載するなど、従来モデルと同等の操作感を実現した。「使い勝手については技術陣に特に頑張ってもらったところ。マイクやスピーカーに水が入らない仕様にするのも苦労した」(佐相氏)。

photophotophoto 防塵対応になったことで利用シーンが拡大した(写真=左)。防塵性能のIP5Xは、粒径25マイクロメートル以下の塵埃が入った装置に端末を8時間入れて取り出したときに、電話機の機能を有することを意味する(写真=中)。これまでのらくらくホンと同じく、「見やすさ」「聞きやすさ」「使いやすさ」にもこだわった(写真=右)

 このほか、らくらくホン6には瞬間的な運動の強さ(METs)や活動量を測定できる健康機能も追加した。「シニア層は健康と医療介護に最も関心を持っている。“防水×らくらく”と“健康機能の進化”という2本柱で訴求していく」と佐相氏は話した。

photophotophoto 健康機能も進化し、活動量計(EX測定)や瞬間運動強度測定(METs測定)が可能になった。1週間の活動量に応じて励ましのメールが届くサービスもある
photophoto 3つの“おまかせ機能”も採用し、絵文字入りメールの作成や画像の待受設定が簡単にできるようになった(写真=左)。らくらくホンシリーズの1500万台販売を記念し、ユーザーから募集したらくらくホンの利用術をまとめた「新・らくらく本」を、応募者全員にプレゼントするキャンペーンも実施する(写真=右)
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