インタビュー
» 2014年05月28日 07時00分 UPDATE

開発陣に聞くシャープ夏モデル(ソフトバンク編):EDGESTに“IGZO”と“高品位”をプラス――「AQUOS Xx 304SH」が提供する新しい価値 (1/2)

発表会を行わなかったソフトバンクから、唯一、夏モデルとして発売されたシャープ製スマートフォン「AQUOS Xx 304SH」。3辺狭額縁のEDGESTスタイルを継承するモデルだが、前機種からどのように進化したのか。開発陣にコンセプトや進化点をうかがった。

[房野麻子,ITmedia]

 ソフトバンクモバイルは2014年夏モデルの発表会を行わなかったが、シャープ製スマートフォン「AQUOS Xx 304SH」を夏モデルとして発表。5月23日に発売した。304SHは、3辺狭額縁のEDGESTスタイルを初めて採用した2013年冬モデル「AQUOS PHONE 302SH」の後継機だが、前機種からどのように進化したのか。開発陣にコンセプトや進化点を聞いた。

photo 「AQUOS Xx 304SH」
photo 左から澤近氏、吉田氏、川氏

EDGESTを継続し、さらに進化させる

photo パーソナル通信第三事業部 商品企画室 室長 澤近京一郎氏

 ソフトバンクの2014年夏モデルとして販売されるシャープ製の「AQUOS Xx 304SH」は、初代の302SH、4.5型のIGZO液晶を採用した「AQUOS PHONE Xx 303SH」に続き、3辺狭額縁のEDGESTスタイルを採用したソフトバンク向けスマートフォンとしては3台目になる。パーソナル通信第三事業部 商品企画室 室長の澤近京一郎氏によると、購入したユーザーには2機種(302SHと303SH)とも非常に好評だそうだ。

 「302SHは画面が大きくて使いやすく、303SHについては非常にコンパクトですので持ちやすく、こちらの意図通りに好意的に受け止めていただいていると評価しています」(澤近氏)

 EDGESTスタイルは今後も継続し、さらに進化させていく。そうした中で、今夏モデルの304SHは狭額縁はしっかり維持しながら、デザインを「高級感、高品位感に振って」、EDGESTの正統進化というべき端末に仕上げたと澤近氏は胸を張る。

ダイヤカットで金属感や高級感を表現

 高級感を表現するために最もこだわったのが、本体に金属フレームを採用したことだ。「デザインと開発においても非常にチャレンジングな要素が多く、こだわり抜いたところ。304SHの最大の特徴といってもいい部分」(パーソナル通信第三事業部 商品企画室 主事の吉田周太氏)というデザインの詳細は、通信システム事業本部 デザインセンター 副参事の川 充雄氏に聞いた。

photo 304SHのデザインを担当した通信システム事業本部 デザインセンター 副参事 川充雄氏

 EDGESTを全面に打ち出した前機種の302SHは、無駄を削ぎ落としたシンプルなデザインを目指したが、304SHはそれより進化させるべく、上質感というキーワードをもとに本物の金属を使った。「前回は樹脂に塗装だったのに対し、今回は金属の本物感をきっちりと訴求していくことが進化だと考えました」(川氏)

 金属の本物感を表現するために、304SHではフレームの両縁にキラッと光るダイヤカットを施した。細かい粒子を吹き付けてブラスト加工した金属フレームの両端を、ダイヤ粉末が付いた刃で切削することでキラッと輝く。電源キーにもアルミが採用され、こちらにはスピン加工が施されている。

 「塗装だと、光沢だったら光沢、マットだったらマットと単一の質感になるんですね。また、光沢にしてもキラッとまではいかない。側面のブラスト感とダイヤカット、その差をしっかり見せることによって金属のよさを表現しています」(川氏)

photo メタルフレームは、夏のAQUOSスマートフォンでは304SHにしかない特徴だ

 カラーはプレシャスゴールド、ホワイト、ブラック、レッドの4色。淡いカラーも検討したが、ハイスペックモデルらしい上質感や金属のよさが生きるカラーを選んだという。なお、通常、樹脂には塗装が施されるが、金属の場合は染色で色を付ける。304SHにはアルマイト染色を採用した。

 「染料が入っている槽に、パーツをザブンとつけるような形です。そこに電圧を加えることで、色が染まっていくというのがアルマイト染色です。よくある金属調の塗装、蒸着はけっこうはがれやすくて生地の色が見えてしまいますが、金属は染めているので剥がれません」(吉田氏)

 色付けは2回。1度染色した後にダイヤカットを施し、出てきた染色されていない金属部分を2度目で染色している。

photophoto 一体成型で作られた筐体を染料に浸すため、内側まで染色されている(写真=左)。淡いカラーも検討したという。製品化された4色とはかなり違ったテイストだがきれいだ(写真=右)

 カラーによって少しずつ質感は異なるが、背面は全体的にマットな質感でダイヤカットの輝きを強調させるデザインになっている。中でもこだわったのはメインカラーであるプレシャスゴールド。スマートフォンのハイエンドモデルとしては初めて採用したカラーで、「金属の質感が一番訴求できるカラーだと考えて、当初からカラー展開に入れたいと思って進めてきました」と川氏は話す。

 トレンドや商品のイメージ、ターゲットユーザーなど、あらゆる要素を考慮して決められるカラーだが、今回はシックで上質なイメージを追求。「スーツやフォーマルなスタイルにおいてマッチするような端末」を狙ったという。

 また、ディスプレイ表面には多層膜蒸着という表面処理が施されており、光りの加減によっては青く見える。シャープ製夏モデルでも304SHだけに採用された処理だ。

 「EDGESTになると、額縁が細い分、デザインする余地がなくなってきます。正面から見たときに真っ黒な画面だけになり、特徴が出てこない。そこで多層膜蒸着という処理を施すことで、ディスプレイのガラスに対して色を付けました。光を反射するときに、キラッと青く光るような見栄えにしています」(川氏)

 なお、金属フレームはアンテナの役割も果たしている。本体下部分は通信用のメインアンテナ、上部はGPSアンテナになっており、干渉しないように、途中、黒い樹脂素材で絶縁されている。

 「金属と樹脂の一体成型をしています。ナノ・モールディングテクノロジーといいまして、金属の表面に微細な凹凸を付けて一体成型をすることによって、分子レベルで樹脂と金属を接着させる技術です」(川氏)

メタルフレームを採用しながら軽量化に成功

 このように304SHでは金属が使われているが、同じ5.2型ディスプレイと2600mAhの電池を搭載した302SHの重さ147グラムよりも10グラム軽量し、重さ137グラムを実現した。その要因は、筐体の中に使われている金属にあると吉田氏は言う。

photo パーソナル通信第三事業部 商品企画室 主事 吉田周太氏

 「従来端末でも中の板金などに金属は使われています。多くの板金はサス(ステンレス鋼)を使っていまして、薄くてもある程度の剛性が保てますが、比重が大きいので重さに響きます。今回、フレームにアルミを使っているので、中にもアルミを使って軽量化を図りました。アルミだとサスより厚みが必要ですが、より少ない面積で基板を構成することで、バッテリー容量を保ったまま本体を薄くできました。302SHよりも薄く仕上がっています」(吉田氏)

 アルミでサスと同じ剛性を保つには厚みが必要だが、基板設計の工夫で基板に割く面積を減らし、バッテリー容量を確保した。部品1つ1つの選定から回路設計まで、担当者のたゆまぬ努力の結果だと両氏は言う。

EDGESTだからこそ生きる「全天球撮影」

 304SHのデザインに劣らぬ大きな特徴が、302SHではタイミングの問題で見送ったIGZO液晶を採用したことだ。IGZ液晶といえば、静止画表示中の表示書き換え処理が、従来の60分の1になる“液晶アイドリングストップ”による省電力性能が特徴で、304SHでも3日間の実使用が可能だ。

photo 赤をより鮮やかに表現できるようになった

 また、304SHでは新しいバックライト「PureLED」を搭載。表示の鮮やかさが向上しているという。

 「新しいバックライトを使うことで、より深い色味が出せる液晶に仕上がっています。特に赤色を実感していただきやすいと思います。省エネと美しさを両立したIGZO液晶を304SHで体感していただきたいですね」(吉田氏)

 フィーチャーフォン時代からこだわりを持っているというカメラにも、EDGESTだからこそ新しい価値を提供できる機能が搭載されている。

 1つは「全天球撮影 (Photo Sphere)」だ。ファインダーのガイドに従って複数枚の写真を撮っていくと上下左右360度のパノラマ写真を撮ることができ、端末の中にまるで景色があるかのように見える。この機能自体は「Googleカメラ」に搭載されている機能の1つだが、「そこをいかに使うか、というところにシャープとして取り組みました」と吉田氏は話す。

 304SHには標準のカメラとして「SHカメラ」が搭載されているが、Googleと協議して、SHカメラからGoogleカメラを起動する導線を作ることで、全天球撮影がカメラの1機能として見えるような工夫をしている。閲覧時も同様に、シャープが用意している「アルバム」アプリから、全天球撮影で撮った写真をスムーズに見られる。

 「額縁が細いEDGESTはディスプレイの中と外の距離がすごく近いというとで、本当にその場にいるかのような感覚、ファインダー内の景色が外に浸食していくかのような感覚を体験していただけるのではないかと思います」(吉田氏)

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