インタビュー
» 2014年09月08日 19時00分 UPDATE

開発陣に聞く「TORQUE G01」:京セラが限界に挑んだ“最強スマホ”「TORQUE G01」 国内向けモデルのポイントとは?

米国国防総省の物資調規格に準拠した京セラの“高耐久”スマホ「TORQUE G01」。北米市場では10年以上の実績がある同社のタフネス端末だが、国内のau向けモデルは今回が初めて。その開発背景を担当者に聞いた。

[青山祐介,ITmedia]

 7月25日にKDDIから発売された京セラ製のAndroidスマートフォン「TORQUE G01」。高耐久性能を前面に打ち出したこのスマートフォンは、防水、防塵、耐衝撃、耐振動、耐日射、防湿、温度耐久、低圧対応、塩水耐久と、9つの耐性を備えているのが最大の特徴だ。

photophoto 「TORQUE G01」

 その仕様はアウトドアグッズにもよく適用されている、米国国防総省が制定した物資調達規格(MILスペック)「MIL-STD-810G」に準拠するハイレベルなものだ。京セラのau向けスマートフォン・ケータイとしては、初めてとなるこの高耐久モデルだが、実は京セラの製品として初めてではない。

photo 京セラの辻岡氏

 「京セラでは三洋ブランドの時代を含めて、2003年から高耐久モデルを北米市場で展開しています。主に工事現場や警察・消防の現場で働くユーザーを対象にした頑丈で使いやすいケータイが中心で、2013年3月にはこの高耐久モデルの1つとしてスマートフォン『TORQUE』を発売しました。今回発売となった『TORQUE G01』は、こうした北米向け高耐久モデルのノウハウを生かした国内向けモデルです」(京セラ 通信機器事業本部 マーケティング部の辻岡正典氏)

 北米のSprint社が販売するTORQUEは、あくまでも屋外の現場でスマートフォンを使うユーザーに向けて徹底的に実用性を重視して作られている。一方、今回発売となったKDDIのTORQUE G01は、あくまでもコンシューマー向けモデルという位置付け。そのため、主にデザイン面で設計が見直されている。

photophoto 京セラは2003年から北米市場で、タフさを売りにした端末を展開している。旧三洋電機ブランドの「SCP-7200Pic2」(写真=左)と「DURA CORE」(写真=右)
photophoto 「DURA XT」(写真=左)、「DURA Plus」(写真=右)
photo 米Sprint向けに開発した初のタフネススマホ「TORQUE」(E6710)

 「コンシューマー向けということで、デザイン性にこだわりました。全面をウレタン系の素材で覆った初代TORQUEと違い、TORQUE G01では塗装仕上げの面を増やしています。また、背面を屋根のよう2つの面で構成することで精悍さを与えました。またカラーバリエーションも赤と黒という、こういった高耐久モデルを求めるお客様が好まれる色を設定してあります。また初代TORQUEディスプレイサイズが4型ですが、TORQUE G01は4.5型であるにもかかわらず、このサイズ感の中で収めたのもやはりデザインのためです」(辻岡氏)

 コンシューマー向けモデルとしてのTORQUE G01は、山登りやマウンテンバイク、カヌーといったアウトドアのアクティビティを楽しんでいるような人をユーザーとして想定している。そのために、ディスプレイに水しぶきがかかった状態でも操作できたり、グローブをはめた手でも操作できたりするタッチパネルや、着信時にすぐに出られる側面のボタンをはじめとしたハードキー、渓流の流れの音の中でも相手の声が聞こえるスマートソニックレシーバーなど、北米モデルの“現場”で使える機能がそのままアウトドア向けとしても生かされている。

photophotophoto 東京ミッドタウンで行なわれた発売イベントには、タレントのヒロミさん、フリークライマーの平山ユージさん、マウンテンバイクライダーの井出川直樹さんが登場。「TORQUE G01」ならアウトドアでも気兼ねなく使えるとアピールした

 さらに、こうしたTORQUE G01の世界観を表現した、ウィジェットアプリを搭載。天気、気圧、潮位、方位といった、アウトドアアクティビティで役に立つ情報が得られるのが特徴だ。

photo 塗装仕上げの部分と耐衝撃用のウレタン系樹脂の部分を一体成形した背面

 「今までの京セラの高耐久モデルとは一線を画す、スポーティ、都会的なものを目指してデザインした」(辻岡氏)というTORQUE G01。高耐久モデルでありながもスマートなデザインのポイントとなっているのが、その背面パネルだ。塗装仕上げの部分とバンパーの部分は、実は別々の素材を一体で成形したもの。成形後に柔らかいウレタン系樹脂の部分をマスキングしたうえで、赤と黒の塗装を施すという複雑な製造方法が取られている。

 デザインから受けるイメージでは、塗装部分のパーツの上に、バンパー部分のパーツを被せてあるように見えるが、実際に被せる構造にするとサイズが一回り大きくなってスマートさに欠けてしまう。それを避けるためにあえて手間のかかるような作り方をしているのである。

 このウレタン系の樹脂を使ったバンパーは上面も覆うようになっていて、耐衝撃性を実現すると同時に、表面をざらっとした仕上げとすることで、手にグリップしやすいようにしてある。こうした耐衝撃性能を始め9つの堅牢性は、米国国防総省が定める物資調達の規格(いわゆるMILスペック)である「MIL-STD-810G」に準拠し、また国際的な防水規格IPX5/IPX8と防塵規格IP6Xに準拠した性能を備えた。

「TORQUE G01」がクリアしたMIL-STD-810G規格
項目 内容
防水(風雨、浸漬) 30分間にわたる降雨や浸水に対しての防水性能
IPX5/IPX8の防水性能
防塵 連続6時間の粉塵試験(8.9±1.3m/sec、10.6±7g/m3)を実施
IP6Xの防塵性能
耐衝撃 高さ約1.22メートルから合板(ラワン材)に26方向で落下させる試験を実施
耐振動 3時間の振動試験(3方向各1時間/20〜2,000Hz)を実施
耐日射 連続24時間の日射試験(合計1,120W/平方メートル)を実施
防湿 連続10日間の高湿度試験 (45%/16時間、95%/8時間を10日間)を実施
温度耐久(高温、低温) 動作環境:−21℃/50℃(各連続3時間)
保管環境:−30℃/60℃(各連続4時間)
低圧対応 連続2時間の低圧試験(57.11kPa/約4572メートル)を実施
塩水耐久 連続24時間の5%塩水噴霧後、24時間乾燥させる試験を実施

 「“最強のスマートフォン”にしたいと思い、このMIL規格をクリアすることを目指して取り組んだ」(辻岡氏)というTORQUE G01の開発。とはいえ、京セラではこれまでにも高耐久モデルを長く作ってきている。そのため、TORQUE G01のために特別な材料や部品を使っているわけではなく、例えば耐衝撃性能は、内部の構造を箱形状にしたり、板金素材や構造部材を厚くしたりするといった方法で実現したという。また、背面パネルは取り外しのできない構造とするだけでなく、接着して一体にすることでさらに剛性を上げた。

photo 京セラの古松氏

 「もちろん、狙った性能を出すためにシミュレーションは繰り返しました。特にデザイン上のポイントとなっている背面パネルの塗装部分とバンパー部分の比率ですが、設計としては耐衝撃性能を考えると全部ウレタン系樹脂にしたいところです。その一方でデザイナーは塗装部分の面積を増やしてカッコよくしたい。その2つの考え方のせめぎ合いですね。結果としてバンパー部分は素材の衝撃吸収性で、塗装部分は内部の構造で耐衝撃性能を確保してあります」(京セラ 通信機器事業本部横浜第5技術部 古松幸一郎氏)。

 MIL規格に準拠したTORQUE G01は、防水防塵、耐衝撃のほかにも、温度耐久(高温/低温)や塩水耐久といった規格にも準拠している。例えば温度だと保管環境で−30℃/60℃、連続4時間の耐久試験に耐えなければならない。そのために高温下においては放熱しやすいよう、また低温ではバッテリーをできるだけ冷やさないように設計する必要がある。また塩水試験に対しては、部品がサビないように、腐食に強い、もしくは腐食しない材質を選ぶ、といった配慮も求められる。

 こうした高耐久を裏付けるMIL規格への準拠だが、製品を開発するうえでMIL規格準拠の試験を行うのは当然として、実は京セラの社内基準に対する試験も行われている。その基準はMILよりも高く、また試験の数も圧倒的に多い。従来のモデルでは試験の内容によって、MIL規格より低いものもあったが、今回のTORQUE G01の開発にあたってそれを上回る社内基準が設けられたという。こうした厳しい試験をクリアして誕生したTORQUE G01は、文字通り最強の高耐久スマートフォンだと言っていいだろう。

photophotophoto 防水、防じんのデモ(写真=左、中央)。ディスプレイパネルには旭硝子の強化ガラス「Dragontrail」が使われている(写真=右)

 「これまで高耐久モデルというと“いかにも”というカタチのものばかりでした。今回のTORQUEG G01では、アウトドア環境の中ではなく日常の中で使っていても違和感のないデザイン性を追求しています。例えばレッドのキャンディカラーは、下地のシルバーとのバランスや塗装の厚みなどカッコよくみえる色味を何度も検討するなど、デザインに凝っています。そんなところを実際に手にしてみていただきたいですね」(古松氏)

photo

 「製品名の『TORQUE(トルク)』は、もともと“回転力”を表す言葉で、それが転じて英語圏ではヘビーデューティ、堅牢といったニュアンスを示す男性的な言葉として使われています。そんな言葉に見合ったハードウエアのつくりはもちろん、気圧計、コンパス、タイドグラフ(潮位計)といった、過酷なアウトドアで役に立つアプリをプリインストールするなど、ハードウエア、ソフトウエア、デザインと、あらゆる面で京セラの“高耐久”モデルを表現したのがTORQUE G01なのです」(辻岡氏)

Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.