キャリアショップ最大手が展開 スマホアクセ専門店「Smart Labo」とは?佐野正弘のスマホビジネス文化論

» 2014年10月28日 11時00分 公開
[佐野正弘,ITmedia]

 携帯電話各社のキャリアショップなどを運営する、一次代理店最大手のティーガイア。そのティーガイアが最近、スマートフォンのアクセサリーショップ「Smart Labo」の事業展開に力を入れているのはご存じだろうか。

 代理店事業を長く運営してきた同社が、なぜアクセサリー販売を手掛けるようになったのか。その狙いについて、同社 執行役員 業務推進本部長の上地弘祥氏に話を聞いた。

キャリアから独立した店舗の展開に至ったのは?

 全国にある「ドコモショップ」「auショップ」「ソフトバンクショップ」などのキャリアショップ。その経営はほとんどの場合キャリア自身ではなく、さまざまな企業に委託され、代理店という形式で運営されている。

photo ティーガイア執行役員の上地弘祥氏

 携帯電話販売の代理店事業で最大手となっているのがティーガイアだ。同社は主要キャリアの一次代理店として、日本全国1200以上のキャリアショップを構えるほか、いわゆる併売店と呼ばれる店舗も約300あり、量販店なども含めると合計2300以上の販売拠点を持っている。さらに中国でもチャイナユニコムのショップを運営するなど、海外展開も進めている。

 そのティーガイアは最近、キャリアショップではなく、自社で独自のスマートフォンアクセサリーショップ「Smart Labo」の展開を開始した。キャリア各社も自社ブランドでスマートフォンアクセサリーを増やしているが、なぜ代理店事業に強みを持つティーガイアが、あえて独立した店舗を構えるに至ったのだろうか。

 上地氏によると、同社がアクセサリーのショップを手掛けたのには、いくつかの理由が複合的に重なり合っているという。1つは、スマートフォンの普及で周辺機器の市場が大きく広がったことだ。上地氏は「フィーチャーフォンの時代は、アクセサリーといってもせいぜいSDカードくらいだったが、スマートフォンの登場で、他の周辺機器の市場が一気に立ち上がった。その市場にどのようなアプローチが必要かを考えると、キャリアショップ以外の販路も必要なのでは? という結論に至った」と、振り返る。スマートフォンの周辺機器を扱う専門店が必要――との考えは、スマートフォン・シフトが始まった当初から持っていたようだ。

 2つ目は、携帯電話市場の環境が大きく変化していること。「SIMフリー端末や仮想移動体通信事業者(MVNO)などが出てきている中、代理店ビジネスに依存するのではなく、自立していくことを考えなければ、という思いもあった」と上地氏が説明するように、日本のモバイルビジネスは転換点を迎えている。全国にキャリアショップがあふれ、これ以上店舗を大きく増やすことが難しいことからも、キャリアのブランドに頼らない自立した店舗展開が必要との考えもあったという。

photophoto 1号店の「Smart Labo広島本通」(写真=左)、2号店の「Smart Labo松本パルコ」(写真=右)

 そしてもう1つ、実際にキャリアショップを運営している現場からの要望も影響していると、上地氏は話す。ティーガイアの全国各地にある事業所から、スマートフォンのアクセサリー専門店をやりたいという声がいくつか上がっていたそうで、そうした声を受けてショップ展開を決めた部分も大きいという。実は、2012年11月に誕生したSmart Laboの1号店は広島市、2号店は長野県松本市と、3大都市圏からではなく地方から広がっている。その理由は、それぞれの地域でアクセサリーショップをやりたいという要望が大きかったためなのだそうだ。

photo 阪急西宮ガーデンズ(兵庫県西宮市)にある「Smartlabo.style西宮ガーデンズ」は、ハイエンドな商品を取りそろえた“Smartlabo.style”ブランドの1号店

 そして現在、Smart Laboは全国11店舗にまで増加。さらに2013年にはAppBankと共同で、「AppBankStore」2店舗の運営も開始しており、実店舗は合計13店舗に達している(ECサイトを含めると14店舗)。ちなみにAppBankとの共同運営について、上地氏は「我々だけではアクセサリーの目利きに不安もあった。そうしたところに、アクセサリーなどのノウハウに長けたAppBankとの話があり、思いがうまく一致した」と、AppBankとの出会いがショップ運営にも大きな影響を与えたと話す。

品ぞろえや人気商品は立地によって異なる?

 そのSmart Laboは、どのようなユーザー層を意識した店舗展開をし、どのような商品を扱っているのだろうか。

 各店舗の概要やディスプレイなどを見てみると、全般的に女性を意識した店舗が多い印象だ。この点について上地氏は、「各ショップの判断にもよるが、立地によって商品やディスプレイなどを変えている」と話す。

 Smart Laboの多くがショッピングモールへ出店しているが、これは家電量販店などに足を運びづらい女性にも、スマホアクセサリーを身近に感じてもらうのが狙い。そのため女性の入店を意識した立地や店作りを進めており、女性のファッショントレンドに合わせた品ぞろえも強化している。

 一方で新宿のAppBank Storeなどは、AppBank人気の影響などもあって男性向けのアクセサリーが多いほか、大阪・心斎橋の店舗は、観光で訪れる外国人が多く、品質に対する信頼度から“Made in Japan”なラインアップを強化しているとのこと。またECサイトでは「日本最大級の品ぞろえを目指す」と話しており、こちらはすでに撤退したメーカーのスマートフォンケースも用意するなど、ロングテール需要を狙って幅広い商品をそろえることを重視している。

photo 栃木レザーの革小物を手がける「JACAJACA」のスマホケース
photo 芦屋発のレザーブランド「マーティー」が手がけたスマホグッズも販売

 商品は全店舗で扱われている“定番もの”と、店舗固有の商品を半々くらいの分量で並べているとのこと。キャリアショップを展開している強みなどを生かし、約80社から仕入れができる体制を整えるなどして、商品の充実をはかっているそうだ。加えて、ECでしか展開していない地方の革製品メーカーなど、他のショップでは取り扱っていない業者の商品を「断られながらも何度も交渉をし、販売にこぎつける」(上地氏)など、全国展開されていないブランドも用意することで、差別化も進めていると上地氏は話している。

 また差別化要素という点では、スマートフォンにフィルムを貼るサービスを無料で実施しているのも大きな特徴といえるだろう。ちなみにこのフィルム貼りサービスは、量販店などでフィルム貼りを専門に手掛けてきたエキスパートからレクチャーを受けるなどして、技術を学んだのだそうだ。

photo 人気のフィルム貼りサービス

 各店舗の売れ筋商品について聞いてみたところ、「7割弱がケース」(上地氏)とのことで、スマートフォンケースの人気が圧倒的に高いようだ。ケースを購入するタイミングは、やはり新しいスマートフォンの購入と同時が多く、保護目的での購入が多いとのこと。ただし、例えばiPhone 5sからiPhone 6へというように、端末が大きくモデルチェンジするタイミングでは、ケースを“2個買い”する人が多いなど、特徴的な売れ方をする傾向があるという。

キャリアショップの経験を生かしスタッフ教育に力を入れる

 スマートフォンアクセサリーの人気は高まっているものの、単に商品を店舗に並べるだけでは、他のショップとの差別化は難しい。そこで同社ではスタッフの教育を重視し、接客や商品知識などといったサービス面での質を高めることでも、差別化を図っている。上地氏は「キャリアショップでは、お客様が欲しいものを売るだけでなく、提案する売り方をしてきた。そうしたコンサルティング型の販売ノウハウが、Smart Laboでも生きている」と話しており、これまでキャリアショップを展開してきた経験が、Smart Laboの運営でも強みとなっているようだ。

 また一方で、Smart Laboでの取り組みを、キャリアショップに還元する取り組みも実施している。最近ではキャリア自身がアクセサリーを多く手掛けることから、キャリアによってはショップで取り扱えるアクセサリーに制限が少なからずある。だがその範囲内でSmart Laboの定番商品を独自に発注して並べるなどして、他のショップとの差別化を進めているとのことだ。

 「Smart Laboを展開して感じたのは、キャリアが教育方法やプロモーション手法などに至るまで、手取り足取り我々を育ててくれたということ。その枠組みを飛び出し、自分達で教育やマーケティングなどをすることが、いかに難しいかを実感した」と、上地氏は話す。今後もキャリアショップのビジネスは大事だと語るが、一方で多面的にビジネスを展開し、経験値を上げていくことが、変化する市場に対応する上でも必要と考えているようだ。

photo ECサイトの「Smart Labo ONLINE」ではSIMロックフリー端末も販売している

 そうした方針を示しているのが、Smart LaboでMVNOのSIMや、ECサイトのみになるがSIMフリー端末の取り扱いを実施していること。今後は店舗で端末を取り扱うことも考えているそうで、キャリアから離れたビジネスを展開している自由度を生かし、キャリアに縛られない商品を揃えることで、多様化が進む将来の市場環境に備えようとしていることが分かる。

 また上地氏は「今後、競合はまだまだ増えていくと思う」とも話しており、アクセサリーショップ同士の競争が激しくなることも予測している。それだけにティーガイアでは、スタッフの教育に注力して満足度を高めるとともに、従来型のアクセサリーショップだけでなく、例えば近頃採用するスマートフォンが増えた“ハイレゾ”関連の商品を専門に扱うお店など、テーマ性を持った店舗の展開も検討している。

photo 上地氏は「今後はハイレゾ関連の専門店なども考えている」と話す

 安定的なキャリアショップビジネスから、独立性の高いアクセサリーショップに挑戦するティーガイアの取り組みからは、スマートフォンが従来のモバイルビジネスに与えた影響の大きさを実感する一方で、新たな市場に向けたチャレンジの芽を生み出していることも、見て取れる。アクセサリー販売のビジネスを新たな柱に育てることができるのか、同社の取り組みが注目されるところだ。

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