ワイヤ・アンド・ワイヤレス(以下、Wi2)と参画企業や自治体の全17団体が12月12日、訪日外国人観光客を対象とした「TRAVEL JAPAN Wi-Fi」プロジェクトを発足した。
TRAVEL JAPAN Wi-Fiプロジェクトは、
という3つの特徴を持つ。
Wi-Fiスポットは、KDDIと、その子会社のWi2が提供している約24万箇所を無料で利用できる。スポット数(アクセスポイント数)は「au Wi-Fi SPOT」と同じで、交通、飲食店、商業施設などを幅広くカバーする。バックボーンには光回線やUQコミュニケーションズのWiMAXが使われている。
ワイヤ・アンド・ワイヤレスの代表取締役社長 大塚浩司氏は、訪日外国人が感じているWi-Fiスポットの問題点として「どこでWi-Fiが使えるのか、どの電波(SSID)にアクセスすればいいのかが分からない。アクセスできても回数や時間の制限があり、安心して長く使えない。初期設定が分かりにくく、移動したらまた設定をし直す必要がある」ことを指摘する。これを解決するのが「TRAVEL JAPAN Wi-Fi」アプリ。「アプリを介して簡単にWi-Fiへ接続でき、24万箇所でシームレスに利用できる」と大塚氏はアピールする。アプリはAndroidとiOS向けに提供され、英語、簡体中国語、繁体中国語、韓国語、タイ語をサポートする。
ただし訪日外国人の誰もがすべてのWi-Fiスポットを利用できるわけではない。最初に利用できるのは、全スポットのうち一部を開放した「Wi2ベーシックエリア」のみ。ベーシックエリアの数は非公表だが、「スターバックスや空港のリムジンバスなど、相応の数はある」(大塚氏)とのこと。すべてのWi-Fiスポットを利用するには、後述する参画企業のサービスなどから入手できる「プレミアムコード」をアプリに登録する必要がある。
アプリを利用できるのは訪日外国人や、海外在住の日本人などに限られ、日本在住者は利用できない。アプリの対象者かどうかは、初期設定で入力する情報や端末の情報などで判定しているという。
本プロジェクトには、まずはアクセンチュア、沖縄県・(一財)沖縄観光コンベンションビューロー、小田急電鉄、キャナルシティ博多、京都市・(公財)京都文化交流コンベンションビューロー、KDDI/沖縄セルラー電話、神戸市、ジェーシービー、東京都交通局、ドン・キホーテ、日本航空、パナソニック、インフォメーションシステムズ、ぴあ、ビックカメラ、マツモトキヨシが参画する。これらの企業や自治体が、接続しているWi-Fiスポット付近にある観光スポットや飲食店などの情報をアプリ上で配信する。地図アプリとも連携しており、目的地までの案内も可能だ。
全Wi-Fiスポットを利用するためのプレミアムコードは、参画企業が、それぞれのビジネスのタッチポイントを通じて配布する。例えば日本航空の場合、JALの航空券を購入すると、Webサイトからプレミアムコードを入手できる。ほかに店舗で配布するケースもあるという。プレミアムコードの入手と引き換えに、参画企業は自社のサービスや施設に集客できるというわけだ。
訪日外国人の分析リポートを活用するのも特徴の1つ。TRAVEL JAPAN Wi-Fiアプリをダウンロードする際に、訪日外国人に同意してもらったうえで、利用者の利用属性(国籍や年齢など)や、訪れた場所などの情報を取得する。Wi-Fiスポットに接続すると利用者属性の情報が送信され、GPSをオンにすると、位置情報も定期的に送信される。
これらの情報分析を行うのが、アクセンチュアが2013年に開発した「Ideal Insight」というプラットフォームだ。このプラットフォーム利用料を参画企業から徴収する形でビジネスが成り立っている。Ideal Insightでは地域や期間を設定して細かく分析することもできる。訪日外国人の行動経路を地図上に可視化でき、どの場所に多くの観光客が集まるのか、どの経路がよく使われるのか、といったことがひと目で分かる。アクセンチュアの工藤氏は「パスポートと一緒に携帯いただけると、強力なツールになると思っている」と話す。
ここで得た情報を参画企業へフィードバックすることで、訪日外国人向けサービスの向上につなげる。大塚氏は「これまでのフリーWi-Fiでは、エリアの整備、どこに構築するか、誰が構築するかが主な論点だったが、それが取り組みの中心ではない。Wi-Fiのフリーネットワークを活用して、パートナー企業が最良のおもてなしをお客様にしていただく“価値提供のフェーズ”に大きく変わっている。持続的におもてなしサービスを進化させていただきたい」と期待を寄せる。
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