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» 2014年12月24日 07時00分 UPDATE

田中社長「Fx0はスーパークールなスマホ」――KDDIがFirefox OSで目指す世界

「ギークの皆さまのために作ったスマホ。まったくビジネスのことを考えていない」とKDDI田中社長が説明するFirefox OSスマホ「Fx0」。KDDIはなぜFirefox OSに着目したのか? そしてFx0ならではのこだわりとは?

[田中聡,ITmedia]

 KDDIがこれまで投入を予告してきた、Firefox OSを搭載したスマートフォンが、12月23日にお披露目された。

 その名も「Fx0(エフエックスゼロ)」(LGエレクトロニクス製)。すでに世界各国で発売されているFirefox OSスマートフォンは、低価格のエントリーモデルが中心だが、Fx0は4.7型のHD液晶にクアッドコアCPU、そして下り最大150Mbpsの4G LTEにも対応するなど、必要十分なスペックを備えている。FeliCa、防水、ワンセグなどの日本向け機能や、キャリアアグリゲーションとWiMAX 2+には対応していない。

photophoto ボディの部品が透けて見える「Fx0」。写真の完全に透明なケースは数量限定で用意される。通常版には、シボ加工が施され、やや色の付いたケースが使われている
photo Fx0の主な仕様。Mozillaとオムロンが共同開発した日本語入力システムもプリセットしている

 Firefox OSには、Webサーバ機能を使ったさまざまなデバイスとの連携、Firefox OSを搭載した開発ボード「Open Web Board」、組み込み機器と連携できるアプリ開発ツール「Gluin」、ロック画面をデザインできるアプリ「Framin」など、“つながる”仕組みがちりばめられている。Fx0をサーバとして利用できる「Web-Cast」機能では、同一のWi-Fiネットワーク上に接続しているFx0同士をタッチすると、一方のFx0で見ていた写真やYouTube動画などのコンテンツを、もう一方のFx0でも再生できる。例えばFirefox OS搭載のテレビが登場すれば、スマホにダウンロードした映像をワンタッチでテレビに映すといったことが可能になる。

ビジネス度外視でギーク層向けに作ったスマホ

photo KDDIの田中孝司社長

 KDDI 代表取締役社長の田中孝司氏は「ギークの皆さまのために作ったスマホ。ほんとんど商売抜きでやり始めた。まったくビジネスのことを考えていない」ときっぱり。Firefox OSの「オープンなプラットフォーム」をデザインでも表現すべく、ボディもオープン(透明)にし、デザイナーには「MEDIA SKIN」を手がけたこともある吉岡徳仁氏を起用した。

 そもそも、KDDIはなぜFirefox OSスマートフォンの導入を決めたのか。田中氏は「2011年12月にFirefox OSに出会ったが、本当に軽くて、いろいろなことが誰にでもできる。スマホの世界も新しく変わっていくのでは? そんな確信を持った」と振り返る。

 田中氏が着目したのは「Firefox OSはWeb OSである」こと。「HTMLで書かれているヒューマンリーダブルな言語で、プログラミングも簡単にできる。非常に軽いOSだ。強いCPUの上で動かすのではなくて、小さなハードウェアでもOSが動く。簡単にサーバになれる。本当に忘れがちな『作る』『楽しむ』をできるのではないか。我々auが実現できる世界なんじゃないかと思っている」(同氏)

photophoto Firefox OSのメリット(写真=左)。世界中でWeb技術を知っている人は800万人に上るという。「こんなにたくさんいらっしゃると、いろいろなことができる。小学生もハッカソンに参加している。開発者がたくさんいれば、世の中で実現できることは無限大になる」(田中氏)(写真=右)

 製品名のFx0には「0(ゼロ)から始まるFirefox OS」という意味を込め、「ウェブ新世紀ハジマル」というキャッチコピーを付けた。「少し文字を入れ替えると、『FOX』になる。そういうことも少し考えて付けた」と田中氏は補足する。

透明ボディの細部にもこだわり

photo 右は、Fx0の開発リーダーを務めたKDDIの上月氏。「Android au」の立ち上げにも尽力した人物だ

 田中氏はFx0を「スーパークールだ」と評する。その根拠の1つは、細部までこだわり抜いたデザインにある。「普通のネジの40倍コストがかかる」(田中氏)というゴールドのネジを使ったほか、ディスプレイ下のFirefoxロゴ入りのホームボタンは「1回の試作に30万円かかるところを、メーカーさんにあきれられながら10回作ってもらった」(Fx0商品企画のリーダー上月氏)という。

 透明のリアカバーを外した部分は、「中の部品がきれいに見えるよう、わざと空間を空けてデザインしている。回路につながっていない、フェイクのアンテナもある」(上月氏)そうだ。ここまでの話を聞くと、「デザインもギークの人をターゲットにしている」(田中氏)というのもうなずける。細部にこだわりすぎたため、店頭に置くモックアップを作れなかったそうだ。

photophoto ホームボタンにはFirefoxロゴが付けられている(写真=左)。あえてすべてを見せず、ちょっとモザイクっぽく見せるために、通常のケースにはシボ加工が施されている(写真=右)
photophoto 赤で囲った部分は、実はダミーのアンテナになっている。見る人が見れば、この位置にアンテナが入ることはあり得ないと分かるのだそう(写真=左)。リアカバーを外した内部も、きれいに見せられるようこだわった(写真=右)
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photophoto 透明ボディのパーツもこだわり抜いた

 「(Fx0は)クリスマスプレゼントに発売すると言ったのに、ちょっと限定されたところで発売する(12月25日に発売するのはauオンラインショップとKDDI直営店のみ。ほかは2015年1月6日から販売予定)。みんなこいつ(上月氏)のせい(笑)」と田中氏もあきれ顔だったが、表情はうれしそうだった。

Fx0に込めた思いは“作る自由”

 もう1つ、田中氏がFx0を「スーパークール」と言うゆえんは「作る自由」にある。開発ツール「Firefox WebIDE」を使えば、HTML5によるFirefox OS向けアプリを自由に開発できる。Webサーバ機能を生かし、Firefox OS端末同士を連携させて動かすといったことも可能。ロック画面を自由に作れるFraminでは、端末のセンサーと連動させられるので、例えば照度センサーとつないで、周囲の環境に応じてロック画面を自動で変更させたりもできる。このFraminで作成した画像は「au Firefox OS Portal Site」で公開できる。

 Fx0の背面ケースの3Dプリンタ用のデータも公開しており、外観も自由に作れる。「Fx0に込めた思いは“作る自由”。中のソフトも、オープンなOSを使って作れる。日本中のギークにぜひともいじり倒してほしい」(田中氏)

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Fx0がFirefox OSの中でも最先端だ――Mozilla アンドレアス・ガル氏

photo Mozilla Corporation CTO アンドレアス・ガル氏

 12月23日の発表会では、Mozilla Corporation CTOのアンドレアス・ガル氏も登壇。「Firefox OSは、あくまでもオープンソースの技術をベースにしており、JavaScriptやHTML5、CSSなどがコアな技術に含まれる。クリエーターやディベロッパーが自由にカスタマイズでき、直感的な体験ができることが大きな魅力だ。かつてモバイルとWebの間は、大きな障壁があったが、HTML、CSS、JavaScriptをフルに活用することで、そうした障壁を完全になくすことができると考えている」とFirefox OSの新しさを強調した。

 この1年半で、Firefox OSスマートフォンは世界29カ国で、15の通信事業者から発売された。ガル氏は「日本のKDDIに参画してもらえることを、本当にうれしく思っている」と話し、「今回KDDIの端末(Fx0)で16機種目だが、これまで発表してきた端末の中でも、KDDIの端末が最先端のフィーチャーを実装している」と高く評価した。

photophoto Firefox OSで使われているWeb API(写真=左)。Firefox OSスマートフォンが導入されている地域(写真=右)

 田中氏がしきりに「ギーク向け」と強調しているように、Fx0は万人に向けたものではなく、開発者と新しいモバイルの世界を切り開いていくためのモデル……と言っても過言ではない。Windows Phoneのように1号機のみで(実質)終わってしまう可能性もあるが、ベースの端末を出せたことは大きい。「いろいろなアプリが乗ることで、1種類の端末でもいろいろな見え方や楽しみ方ができると思っている。それをどんどん大きくしていきたい。皆のレスポンスがよければ、第2、第3と踏み出していけると思っている」と田中氏が話すように、開発者がどこまで熱い姿勢を見せるかが、カギを握っているといえる。

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