―― O2Oなどリアルでの取り組み以外に、従来から行っている(ネット上の)コンテンツビジネスの展望はいかがでしょうか。
出澤氏 「LINE MUSIC」は2014年エイベックス・デジタル(ADG)、ソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)とともに会社設立を行い、2015年前半にはサービス開始予定です。また米マイクロソフトからMixRadioも購入しました。音楽は2015年に注力する分野のひとつですね。
また、LINEマンガも(子会社の)LINE Book Distributionに講談社、小学館、メディアドゥに出資いただき、本格的な海外展開をにらんでいますし、ゲーム分野ではこれまでのカジュアルゲームだけでなく、本格的なゲームコンテンツ開発のためのファンドも立ち上げました。
―― コンテンツのカテゴリーを増やしていき、コンテンツの量も増やしていくという方針ですか。
出澤氏 ええ、その通りです。若い人たちが何で時間を消費しているかというと、「音楽」であり「コミック」であり、「ゲーム」です。こういったコンテンツ領域では、LINEらしさをうまく組み合わせることができる。むろん、この領域(コンテンツ)は我々だけではビジネスができませんので、力のあるパートナー企業と組んでいく。そして、“日本だけでなく世界でサービス展開していく”というのが基本的なコンセプトです。
―― コンテンツそのものの開発に関わる考えはありますか。
出澤氏 我々単独でというわけではありませんが、2014年、ソニー・ミュージックエンタテインメントと一緒に「LINEオーディション」という取り組みを行いました。音楽分野ですと、LINEの各種コミュニケーション機能を使ってミュージシャンとファンとの交流を深めたり、(公式の)LINEスタンプを作ったりということができます。これはすでにデビューしているミュージシャンはもちろんですが、インディーズの方々に活用してもらうことで、新しい形の音楽活動につながると思います。
最近はアマチュアコンテンツとプロコンテンツの垣根が曖昧になってきていますし、LINEはどちらでも活用できます。こういった領域も(LINEとして)狙っていけますね。
―― 他社の話になりますが、2014年ドコモが子会社のタワーレコードを使って独自レーベル「FIRE STARTER」を立ち上げました。これはプラットフォーマーが(制作・販売元となる)レコード会社の領域に進出するというエポックメイキングな動きだったわけですが、LINEとして同じようにレコード会社や出版社の事業領域に進出する考えはありますか。
出澤氏 それはないですね。我々はプラットフォーマーですので、得意な領域は決まっています。(コンテンツの制作・販売元は)それぞれの分野の雄と組ませていただく。その上で、今のスマートフォンユーザーが求める「便利なかたち」「楽しいかたち」で、コンテンツのパッケージを提供することがLINEの仕事であると考えています。
―― 2015年度からLINEを率いるにあたり、出澤さんが「今のLINEにとって経営上の課題だ」と感じる部分はどこですか。
出澤氏 まあ、それはいっぱいあります(笑)。いっぱいあるのですが、その中であえてひとつ上げるとすれば、「(事業の)スピードが足りない。スピードを速めよう」ということです。
―― LINEの事業スピードは今でも十分に速いですよね? シリコンバレーのスピードだと思いますよ。
出澤氏 いやいや、まだ足りません。スピードを上げなければならない。また事業スケールも今後大きくしますし、社員数も増やしていきますが、それでもスピードが速められるように社内のマインドをしっかりと変えていかなければなりません。
LINEは世界でいちばんのスマートフォン向けサービスになろうとしています。それで考えると、我々の立ち位置はまだ1合目や2合目あたりなんです。ですから、まだまだスピードを上げていかなければなりません。
―― 2015年、出澤社長としての新体制が始まるわけですが、将来的にLINEをどのような会社にしたいですか。
出澤氏 LINEを真の意味でのグローバル企業にしたい。すでに海外での事業展開を始めていますが、もっと世界中の人々に使っていただきたい。LINEをグローバルで必要とされるサービスに育てていきたいと考えています。
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