「ラグド(rugged:頑丈な)スマホ」というストラテジーを展開した――京セラ通信機器事業本部 営業統括部長の能原隆氏は、3月2日〜5日にスペイン・バルセロナで開催されたモバイル関連見本市「Mobile World Congress 2015」の京セラブースで、同社の展示コンセプトをこう語った。
MWC 2105では全体的に企業向けのソリューションを展開する企業が多く、京セラも2014年から高耐久スマホを全面に打ち出すブースを出展し、2015年も「法人市場を主戦場としていく」ことを明らかにしている。
同社が国内向けにも発売しているAndroidスマートフォン「TORQUE」は、防水/防じん/耐衝撃のほか、耐塩/耐湿性能なども備える高い耐久性能がウリだ。海外市場ではどのようなユーザーに支持されているのだろうか。能原氏に海外市場の動向や今後の展開を尋ねた。
京セラは2月13日に、2015年春から高耐久スマホ「TORQUE(KC-S701)」を初めて欧州市場に展開することを発表している。能原氏によると、欧州各国で具体的なビジネスの話がいくつかあり、法人市場をメインに商談を進めているという。欧州以外にも気温が低く手袋が手放せないロシアや、砂が入り込んで端末が故障しやすい中東などからも声がかかっているという。
ただ海外市場は今後も米国を中心とし、Verizon、Sprint、AT&T、T-Mobileなど既存の販売チャネルを生かして法人メインに端末を供給していく。特にガスタンクのある現場作業など、危険を伴う場所では防爆仕様の端末も需要があるとしている。
タフネススマホが堅調な一方で、「Sprintのフィーチャーフォンの売上は下がり気味。スマホの価格が下落してきたことで、一般的なケータイの需要がなくなってきている」と能原氏は指摘する。
TORQUEの今後については、「ハードウェア面では、ディスプレイサイズ、プロセッサ、カメラの画素数などは進化し続けるし、堅牢さもさらに磨きをかける。ソフトウェア面は自社だけでできるものではないので、他社と提携しつつ進化させていきたい」と語った。
今回京セラブースでひときわ注目を集めたのは、Windows Phone 8.1搭載スマートフォンと、太陽光充電ができるTORQUEベースのスマホだろう。Windows Phoneは、高耐久Androidスマートフォン「Dura Force」をベースとしており、OSを入れ替えたものだ。
「法人市場を視野に入れた時、企業内システムの連携が重要になる。そこまで具体的にMicrosoftと話を進めているわけではないが、しがらみもないので自由度は高いと思っている」と能原氏は語る。まだ参考展示の段階だが、「ニーズがあれば対応できるよう、準備は進めたい」とコメントした。
また、京セラは国内ではau向けに端末を多く供給しており、特に2015年春モデルでは、「INFOBAR A03」「BASIO KYV32」「miraie KYL23」「GRATINA2」の4機種が京セラ製だった。第3のOSという意味ではWindows Phone以外にFireFox OSという選択肢もあり、能原氏は「KDDIから要望があればやる可能性もある」と前向きな姿勢を見せた。ほかにもワイモバイルやMVNOの「mineo」などに「DIGNO」シリーズを供給しているが、すでに米国で販売している海外モデルがベースになっているので、国内でも展開しやすい環境があるという。
「国内ではDIGNOシリーズが軸となっている」と話すものの、会場にいたほかの記者からは「DIGNOシリーズのブランドイメージが分かりにくい」という指摘も飛んだ。TORQUEのような分かりやすさがないことは能原氏も認めており、「DIGNOの持つ価値をもっと明確にしたい」と語った。
国内のMVNO市場については、「メディアでの盛り上がりと実際のユーザーニーズにはまだまだかい離があるように思う」とあくまで冷静だ。
太陽光充電タイプのスマホはTORQUEをベースにしており、仏Sunpartner Technologiesの独自技術「Wysips Crystal」を使用した透明なフィルム型ソーラー発電モジュールを端末正面に搭載した。太陽光充電を「期待している技術」と語る能原氏は、「少しでも充電できてバッテリーが減りづらくなるという観点なら商品化が見えてくる」とコメント。さらに充電効率が高まれば、電源が確保しにくい屋外の作業現場などでの使用に耐えうるものになるだろう。
太陽光充電できるスマホやWindows Phoneの参考展示が主要なトピックとして扱われているが、京セラは北米市場を中心に海外市場で大きな存在感を放っており、海外で展開中の端末も数多く展示された。
また、能原氏が「京セラグループとして何ができるかを意識した」と語ったように、非常時に使えるエマージェンシーキットなど、特徴的な展示物もあった。これは、水、救急セット、非常食、タブレット、家族と直接連絡が取れる通信機器、太陽光充電器、セラミック製の鍋(京セラ製)、ブランケットなどが入ったもので、通信機器、半導体部品、セラミック部品など幅広い事業を展開する京セラグループの強みを生かした提案となっている。「官公庁や役所などにいくつかセットで置いてもらえれば(いざという時に役立つ)」と能原氏は話す。自然災害の多い日本では特に需要がありそうだ。
すでに海外市場や法人市場でノウハウを蓄積している京セラは、そのアドバンテージを武器に京セラグループ全体として通信機器事業の枠を超えた取り組みを進めていく。
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