ドコモがサービス開始を発表したLTE-Advanced方式「プレミアム4G」。格安SIM(MVNO)にはどんな影響があるでしょうか。
「プレミアム4G」の柱は、LTE-Advanced方式で取り入れられたキャリアアグリゲーション(CA)によるデータ通信速度の高速化です。ドコモによると、最大225Mbpsの受信速度でデータ通信ができるとされています。
LTE-Advancedは、LTEの次の世代として開発が進んでいた通信方式です。
もともと、第四世代携帯電話(4G)は別称「IMT-Advance」とも呼ばれ、国際団体によって目標スペックが定められていましたが、その目標があまりに高いため、中間地点としてLTEが設けられたという経緯があります。そして、本当の4G(IMT-Advance)の実現のためにLTEの次に設けられた仕様が「LTE-Advanced」でした。
そのLTE-Advancedの仕様の中でも、もっとも速度向上を飛躍的に進めるのが、「キャリアアグリゲーション(CA)」です。
CAでは、複数のLTEの電波を束ねることで速度をアップします。もともとLTEでも隣り合った電波を最大20MHzまで束ねることが可能でしたが、CAを使うことで、隣り合っていなくても最大100MHzまで束ねることができるようになりました。ドコモでは、800MHz帯の15MHzと2GHz帯の15MHz、あるいは、1.5GHz帯の10MHzと1.7GHz帯の20MHzを束ねることで合計30MHzを使った通信をします。LTEでは10MHzあたりで、受信最大75Mbps(※)ですから、30MHzで225MHzというわけです。
この新方式に、ドコモは「プレミアム4G」というブランドを冠してサービス開始することとなりました。ドコモはこれまでも「クアッドバンドLTE」としてエリアの厚さを強みにしていましたが、CAによりその厚みをさらに活かすことができるのがプレミアム4Gというわけです。
これまでも、ドコモのネットワークを使った格安SIM(MVNO)では、ドコモが新方式や新バンド幅をサービス開始すると、対応端末を使えば同様に利用できるようになっていましたので、各社格安SIMサービスでもプレミアム4Gと同等の超高速通信が使えるようになると思われます。
エリアによっては最大通信速度が一気に三倍になるわけですから、これまで以上に、「利用可能通信容量」が重要になってくるのではないでしょうか。
たとえば、2GBの通信容量の格安SIMの場合、75Mbpsで連続ダウンロードすると三分半で容量上限に達しますが、225Mbpsだとわずか一分余りです。
これは極端な例だとしても、CAを使うことで異なるバンドを均等に使えるようになるので、これまでよりも「速度が出にくくなる時間」が少なくなります。たとえば動画視聴でも高画質で再生できる時間が増えることになりますので、気づかないうちにこれまでよりもたくさんのデータを使うことになるでしょう。
すると、ちょっとたくさん使う人には2GBではとても物足りないということになります。もっとたくさんの容量、5GBや10GBという容量が求められるようになるわけです。
これまでは「携帯電話会社よりも安いから」というだけの理由で低容量を選んでいた人も、こうした容量域に移行してくることで、MVNOと携帯電話会社自身との競争も始まります。
もちろん、MVNO同士の競争もより大容量の領域で進むようになり、値下げはもちろん、一部MVNOで提供されている「必要なときだけターボ機能」や、容量の後からチャージ、容量単位の細分化、などなど、よりフレキシブルなサービスの開発が進むことも期待できるかもしれません。
プレミアム4Gの登場で、きっとMVNOの担当者の皆さんも知恵を絞っているでしょうが、利用者の皆さんも自分に合った使い方を研究する「うれしい悩み」が増えそうですね。
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