インタビュー
» 2015年06月12日 17時44分 UPDATE

まずは「ヤフトピ」を超える:「アプリ」と「カテゴリー」から脱却して月間1200万MAUに――執行役員 島村氏が語る「LINE NEWS」の世界観

月間アクティブユーザーが1200万人を超え、順調に支持を集めている「LINE NEWS」。LINEアプリ内で提供している「LINE NEWS DIGEST」「LINE NEWS マガジン」も好調だ。LINE NEWSはどのような狙いで提供されているのか? 同サービスを統括する島村武志氏に聞いた。

[佐野正弘,ITmedia]

 LINEは6月8日、ニュースサービス「LINE NEWS」のMAU(月間アクティブユーザー数)が1200万人を突破したと発表した。“ニュースアプリ”として見れば後発のLINE NEWSだが、急速に支持を得て人気を高めているのには、ニュースサービスに対する独自の考え方と取り組みが大きく影響しているようだ。LINE NEWSを統括する執行役員の島村武志氏に話を聞いた。

photo LINE 執行役員の島村武志氏

LINE NEWSはニュースアプリではない

 2014年、テレビCMの影響でニュースアプリが大きな注目を集めて急速に利用者を伸ばしたことから、インターネットメディア界隈でもニュースアプリの影響が無視できなくなってきたという話を多く耳にするようになった。それだけスマートフォンからニュースを見ると流れは、急速に進んできているといえるだろう。

 そうしたニュース系サービスの中でも、最近急速な伸びを見せているのが、LINEが提供する「LINE NEWS」だ。事実、6月8日にはLINE NEWSの2015年5月のMAU(月間アクティブユーザー数)が1200万人を突破したと発表。急速に存在感を高めていることがよく分かるだろう。

 しかし、LINE NEWSの提供が始まったのは2013年7月であり、主要なニュースサービスがアプリ版を提供したタイミングと比べても、半年くらいのタイムラグがある後発の存在だ。にもかかわらず、これだけ急速に人気を高めたのにはどのような理由があるのだろうか。LINEでメディア事業を取り仕切っている、執行役員の島村武志氏にその取り組みについて話を聞いたところ、「そもそもLINE NEWSはアプリを主軸に置いたサービスではない」と言い切る

 LINE NEWSは現在、アプリ版の「LINE NEWS」だけでなく、コミュニケーションアプリの「LINE」の中で提供されている、厳選したニュースをダイジェスト形式で配信する「LINE NEWS DIGEST」、そしてやはりLINE上で、週に1、2回配信される雑誌サービス「LINE NEWS マガジン」の3つを提供している。ベースとなるニュースの情報自体は共通しているものの、配信は専用のアプリに限られているわけではなく、ユーザーの利用形態によってニュースの入り口自体大きく変えていることが、そうした回答の裏にあるようだ。

 実際、島村氏は「LINE NEWSのアプリはニュースが好きな人が興味を持ってダウンロードしているし、LINE DIGEST NEWSはLINEの中で知ってもらう機会が多い。経路が根本的に違う」と、サービスによってユーザーの流入経路自体が大きく異なり、両者の重複は多くないと説明している。アプリだけに寄らない展開手法が、ユーザー層の拡大に大きく影響しているといえよう。

 ちなみに、今回発表された1200万人というMAUに関しても、「ニュースの詳細を見るため、Webブラウザ経由でアクセスした時だけ計測している」(島村氏)とのこと。LINE NEWS DIGESTのアカウント登録数は1400万以上で、記事の詳細まで追って閲覧していないユーザーがいることを考えると、実際のMAUはもっと多いように思えるが、「記事を見てもらうことが重要であり、微細な数字の差にはこだわっていない」と島村氏は考える。

photo ベースとなる情報は共通しているが、アプリ版の「LINE NEWS」、LINE上で提供される「LINE DIGEST NEWS」など、ユーザーの利用に応じたさまざまな入り口が用意されている

アプリでニュースを読むことへの疑問から生まれた新サービス

 島村氏がこだわっているのはLINE NEWSのファンを増やすことであり、そのためには数字の差に大きくこだわるわけでもなければ、提供形態にこだわるわけでもないという。

 そうした島村氏の考えは、LINE NEWS DIGESTが誕生した経緯にも表れている。そもそもLINE NEWS DIGESTが誕生したのは、1年ほど前に「そもそもアプリでニュースを見ることが一般的なのか? という疑問を持った」ことが大きいとのこと。そこでLINE NEWSの利用者にインタビューをしたところ、ニュースを見るのにアプリをダウンロードするというアクションを取るのが嫌だというユーザーが多くいたのだそうだ。

 「LINE NEWSのスタート地点は、若い人たちのニュース離れが進んでいるといわれる中、最初の気付きを重視した読み方を提案し、ニュースに接してもらうことにあった」と島村氏は話す。「操作性を重視するならアプリでの提供が重要かもしれないが、ニュースはシンプルなコンテンツを見せることから、アプリに閉じるよりも見てもらうことが大事と判断した」とのこと。

 そこでスマートフォンの特徴であるプッシュを生かしてニュースへの気付きを与えるべく、プッシュ配信にLINEのメッセージ機能を活用しながら、新聞の紙面のようなスタイルで記事や写真をまとめて、ダイジェストでニュースを配信する「LINE NEWS DIGEST」の提供に至ったのだそうだ。

 では、4月にサービスを開始した「LINE NEWSマガジン」では、どんな狙いがあったのだろうか。島村氏は「ニュースを見るだけで把握してもらうこと」に加え、「カテゴリーからいかに脱却するか」を重視したと話す。多くのニュースアプリを見ると、「芸能」「政治」などカテゴリー別にニュースが区分けされていることが多いが、島村氏はかつてディレクトリサービスを手掛けていた経験から、「カテゴリーはユーザーが探しに来た時に間違いなく誘導されるかどうかを、学問的に整理したもの」で、そこには志向性が存在せず、結果論に基づいて分類されているに過ぎないと話す。

 一方で、コンセプトを重視し志向性を取り入れているメディアが“雑誌”だ。例えばファッション誌では、和装、洋装といった種類別に分類するのではなく「ストリート系」「フェミニン」など、雑誌の編集者がコンセプトに基づいた志向性を、数ある情報の中から取捨選択して提案し、それを気に入った人が雑誌を買って読む。そうした志向性をニュースの分類に取り入れたのがLINE NEWSになるとのことだ。

 実際LINE NEWSマガジンは、「野郎メシ」「なにここ行きたい!」「やっぱり美女が好き。」などの特徴的なコンセプトを持つ21の“マガジン”を、各マガジンに設置された編集デスクの責任のもとに作成。週に1、2回、LINEのプッシュによってそれを配信するという仕組みとなっている。一見ユニークでニッチに思えるマガジンのコンセプトについても、「実は普遍的なもので、多くの人があったらいいなと思う、根源的に広いもの」(島村氏)をテーマとして選んでいるのだそうだ。

photo 「LINE NEWSマガジン」は、カテゴリーではなくコンセプト別に“マガジン”を用意することで、ニュースに志向性と提案の要素を取り入れている

なぜ、LINE上でサービスを提供するようになったのか

 “ニュースアプリ”や“カテゴリ分け”といった既存の概念にとらわれることなく、ユーザーの意見に耳を傾け、利用しやすい環境作りを考えてサービスの形を変えていることが、LINE NEWが大きく成長する要因になっているといえそうだ。

 だが最近のLINEのサービス傾向を見ると、LINE NEWS DIGESTやLINE NEWSマガジンだけでなく、「LINE FLASH SALE」や「LINE ギフト」、「LINE TAXI」など、アプリやWebブラウザではなく、LINEのアプリ上で提供されるサービスが増えているように感じる。なぜ、LINE上で提供されるサービスが増えているのだろうか。

photo 最近は「LINE NEWS DIGEST」だけでなく、「LINE FLASH SALE」などアプリを別に用意せず、LINEのアプリ内で直接提供されるサービスが増えつつある

 この点について島村氏は、「スマートフォンではものすごい勢いで、コンピューターとインターネットの歴史が一巡している」と話す。PCの世界でも、当初は性能の低いハードを有効活用するため、アプリケーションでサービスが提供されることが多かった。だがPCの性能が向上するのに伴い、Web上でサービスが完結するようになってきている。現在のスマートフォンは、性能が急速に向上したことで、PCの歴史と同じ流れを急速にたどっているというのだ。

 「アプリはデバイスの可能性を広げるものと認識されているが、一般のユーザーにアンケートなどを取ると、ゲームのようにアプリであることが求められるものでなければ、必要でもないのにアプリをインストールしているわけではない」と、島村氏は現在の状況について分析している。アプリであることがユーザーにとって有益なものでなければ、必ずしもアプリにこだわる必要はなく、Webで提供するなど内容に応じた形で提供した方がよいというのが、島村氏の考えのようだ。

 実際、島村氏がメディア事業と共に手掛けているEC関連の事業に関しても、「C2Cに近いものや、リアルタイム性が求められるものはアプリの方が現時点では操作性が高いが、商品を販売する業者の側が提示するものを買うだけなら、わざわざアプリに切り出す必要はない」と話している。そうした考えからLINE FLASH SALEなども、LINE上で展開するに至っているとのことだ。

 「LINEは最初に方向性を決めて戦略を立てているように思われているが、実際はそうではない。ユーザーの動きを見て、その都度最適化している。スマートフォンを使って生活を変えることが第一であり、それ以外は手段でしかなく、手段を固定することはない」(島村氏)というのが、LINEが満足度の高いサービスを作り上げる上でのベースとなっているようだ。

“ヤフトピ超え”から人に根差した新しいメディアの実現へ

photo

 LINE以前のNHN Japan時代からメディア事業に携わり、同社の代表的なサービスの1つ「NAVERまとめ」などを手掛けてきたという島村氏。LINE NEWSがメディアとして大きな存在感を示すようになった今後、島村氏はどのような考えをもってメディア事業を展開していこうとしているのだろうか。

 島村氏は、メディア事業を展開する上で重視しているのは、人と情報の接し方をより良いものにすることだと話している。例えば自分の住んでいる街にできた新しいお店の情報を知りたいと思っても、SNSでは友達が発信する情報に依存することから、近所に知り合いがいない限りお店の情報は得られない。情報は増えているが、ユーザーが適した情報に出会いやすくなっているかというと、必ずしもそうではない。そうしたミスマッチを防ぐことがメディア事業の本質ではないかと島村氏は考えており、LINE NEWSマガジンはその第一歩になるという。

 そうした長期的な目標を達する上で、短期的なマイルストーンになるのが「ヤフトピ(Yahoo!ニュース)」の利用者数を超えることだという。スマートフォンの登場による構造変化と、非常に強い集客力を持つLINEを生かすことで、まずはYahoo!ニュースを超えることを目指す。

 「LINE NEWSというプロダクトが、何千万という利用者に使ってもらえることが望み。そのためには美しい理念ではなく、具現化して形にすることが重要」と話す島村氏。ニュースアプリという枠にとらわれることなく、より大きな視点でサービスを作り、改良を加えてきたことがLINE NEWSの強みといえるだろうし、そうした視野に立てる人材を豊富にそろえていることこそが、LINE全体のサービスの大きな強みになっているといえそうだ。

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