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» 2015年11月26日 06時00分 UPDATE

Meet Recruit:地方の魅力を伝えるクリエイティブ・コミュニケーション

地方が主体となって、その土地の魅力を伝える活動が活発化している。今回は、情報発信で地方をリードするクリエイティブやコミュニケーションを紹介したい。

[文:モリジュンヤ 写真:Kenichi Aikawa,Meet Recruit]
Meet Ricruit
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 第二次安倍内閣が「地方創生」というキーワードを掲げて以来、地域振興や活性に関する活動や発信が活発化している。人口の東京一極集中に歯止めをかけ、地域課題を解決するための動きが各地で起こり始めているのだ。

 そんな中、増加を続けている訪日外国人客は、その追い風になり得るかもしれない。日本政府観光局の発表によれば、2014年の訪日外客数は前年比29.4%増の1341万4000人で、過去最高の記録だったという。

 東京の人だけではなく、海外の人をも惹きつけるためには、当事者である地方からの情報発信が非常に重要だ。そこで今回は、地方が主体となって行っているその土地の魅力を伝えるためのクリエイティブやコミュニケーションを紹介していく。

tb_MR1125_02.jpg 京都を訪れる観光客にインタビューした映像を掲載

ウェブサイト/ローカルメディア

 まずは地域の魅力を伝えるウェブサイトをいくつかピックアップして紹介していこう。

 地方の情報発信を担うプレイヤーは様々だ。中にはその土地を発祥とする企業が情報を発信することもある。「北海道Likers」は、北海道で誕生したサッポロビールが運営するメディア。北海道を愛する人々のためのサイトとして、名産品や観光スポットなど北海道の魅力を発信し、地元を盛り上げようとしている。「#hokkaidolikers」というハッシュタグを用いて、一般の人から北海道の魅力をTwitter、Instagram、Vineなどに投稿してもらい、それをコンテンツとするなど、コミュニティを重視している。

 一方、その土地を訪れた人々による視点も、土地の魅力を知る上で重要な役割を担う。毎年、膨大な数の観光客が訪れる京都には、「Travelers' Voice of Kyoto」というメディアが登場している。京都の各エリアで外国人観光客にインタビューし、実際に感じたことやおすすめの場所、京都を訪れた理由など、生の声を映像で発信している。さらに、アンケート結果をインフォグラフィックとして公開するなど、様々な表現を組み合わせた意欲的なコンテンツ作りも魅力だ。

 「ニシアワー」は、岡山県西粟倉村という人口約1600人の村から地域の魅力を発信するウェブメディアだ。運営元は、株式会社 西粟倉・森の学校。東京の企業と自治体が共同出資で立ち上げた会社だ。西粟倉村では2008年から、約50年前に始まった森づくりを継続させ、50年後の森づくりを目指す「百年の森林構想」を掲げている。「ニシアワー」では、そのビジョンのもとで活動する人々の様子を伝えている。地域の人たちのチャレンジを、美しいビジュアルとともに外部に発信する、こだわりのメディアだ。

 また、地域から発信することで、外部とのコラボレーションを促そうとする事例も存在する。佐賀県の「FACTORY SAGA」というウェブサイトでは、佐賀県が持つモノ、コト、技術を紹介し、全国の企業、ブランド、クリエイター、そして佐賀県内の事業者たちにコラボレーションを呼びかけている。こうしたオープンコラボレーション的な動きは、民間企業ではさほど珍しくないが、地方行政がこうした動きをするのはまれで、面白い事例となっている。

フリーペーパー/書籍

 ウェブサイトと比較すると届く範囲は狭くなるが、強いメッセージが込められ、地域の人にも愛されるのがフリーペーパーや書籍だ。

 秋田人に受け継がれる精神を各地に伝える「のんびり」というフリーペーパーがある。発行部数は約2万部。秋田だけでなく全国各地で配布している他、PDF版やFlashペーパー版も用意し、手に入れられない人にも配慮している。写真やデザインも素晴らしく、こうした先進的な取り組みを秋田県庁が実施しているというのは驚かされる。

tb_MR1125_03.jpg 奈良県のバイリンガルフリーペーパー

 海外からの観光客をターゲットにしたものもある。奈良県の魅力を紹介する「naranara」は、海外から奈良を訪れた訪日客向けに「奈良ならでは」の感動を届けるために作られたバイリンガルフリーペーパーだ。県内のホテルやゲストハウスに設置されており、宿泊客が奈良を知るきっかけとなっている。

 また、その土地の雰囲気を知ろうとするときに、観光スポットや名産品よりも重要かもしれないのが、どういった人々が暮らしている土地なのかということ。コミュニティトラベルガイドと呼ばれるシリーズ書籍(「海士人」「福井人」「三陸人」「大野人」などが既刊)では、現地の「人」にスポットを当て、地域観光の主役として紹介している。

 ほかに現地の人を紹介している書籍として興味深い事例といえば、「ホテル日航アリビラのスタッフがおすすめする 沖縄・読谷の笑顔に出会う旅」だ。日本で最も人口が多い"村"である読谷村(よみたんそん)に暮らす人々の思いや暮らしを紹介するこの書籍の特徴は、現地にあるリゾートホテルのスタッフが編集を手がけている点だ。

映像

 地域の魅力を伝える上で、映像は非常に効果的なコンテンツだ。わずかな時間に土地の魅力を凝縮でき、言語を超えて相手に伝わりやすい。

 佐賀県のプロモーション動画「THREE MINUTE TRIP TO SAGA」は、佐賀県出身のトップクリエイターたちによって制作されている。クリエイティブ・ディレクターには「東京モーターショー」や「Japan APEC」などを手がけた倉成英俊氏を起用し、ライブや映画音楽で活躍している向井秀徳氏が音楽を担当するほか、各ジャンルで活躍する佐賀出身クリエイターが携わっている。

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 また、外部のクリエイターとコラボする事例もある。「KUROKAWA WONDERLAND」は、東京のクリエイターと熊本県の黒川温泉郷が協力し合って制作された映像とウェブサイトだ。黒川温泉郷を舞台にクリエイターが作品制作をすることで、海外に黒川温泉郷の魅力を発信しようという取り組みで、世界中で複数の賞を獲得している。この記事のトップで紹介している画像は、同プロジェクトの映像のワンシーンだ。同プロジェクトでは「Co-Creation(コ・クリエーション)」をうたっており、クリエイターと地域の新たな関係性を示している。

 陶器の産地として知られる岐阜県美濃市では、産地活性や若手職人育成を目的に、現地の女性職人たちが中心になり「MINO MADE(ミノメイド)」というプロジェクトを発足。こちらは「ELLE café」(モード誌『ELLE』がプロデュースするカフェ&ショップ)とのコラボが実現しており、美濃の女性職人たちの様子を撮影した映像が公開された。

 地域にはまだまだ数多くの資源が眠っている。今回紹介したいくつかの事例のように、オープンコラボレーションやコ・クリエーションの考え方が広がっていけば、地域の魅力を伝えるクリエイティブやコミュニケーションが、さらに盛んになるのではないだろうか。

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