―― 0 SIMの前に、デジモノステーションの付録として販売されましたが、あれはトライアルという位置付けだったのでしょうか。
渡辺氏 いえ。試してみてというより、最初から広げていきたいという思いはありました。リテラシーの高い方に、まず使っていただき、こういうふうなものと分かってもらうことを目的にしていました。比較的そういう方向に進んでくれたのは、よかったですね。
―― 今後は、スタート直後とユーザー層が変わってくることもあると想定されていますか。
渡辺氏 徐々に裾野を広げていき、リテラシーが高くない方も増えてくればいいなと思っています。雑誌の付録をやって、Webの申し込みも始めましたが、他の場所でもやれたらいいなというところです。
―― それは、家電量販店などでしょうか。
森氏 0 SIMはコストやプロモーションを減らして、そのぶんをお客様に還元したいという気持ちでやっています。量販店で販売するとどうしても手数料がかかってしまうので、ちょっと難しいですね。比較的、ダイレクトな形になると思います。
―― 自分も実際に申し込んでみましたが、確かに、パッケージもモノクロで、非常に簡素でした(笑)。料金についてですが、500MB以上は100MBごとに100円で、2GBから5Bまでが1600円になっています。正直、2GBで1600円はMVNOの相場を考えるとやや高いと思いますが、これはなぜでしょうか。
渡辺氏 そこが、ヘビーに使う方の比率が下がるポイントです。その手前でコントロールする方が多いのではないでしょうか。
―― ということは、やはりメインのSIMにはなっていないということですね。
渡辺氏 われわれは通常のものと両方やっていますが、メインにされているのは、やはり比較的容量があるものです。0 SIMは、そうじゃない使われ方をしています。
―― 1回線目をSo-netにすると、さらにお得になるというようなことはしないのでしょうか。そこで利益をもっと出すこともできると思いますが。
渡辺氏 無料のものだと、「あれとセットにしないといけない」などという細かい条件もあったりしますが、今回はそういうことをやめたかった。本当に気にしないで、0円で使えるという分かりやすさが大事だと考えています。容量だけを気にしてもらえれば、あとはどなたでも使えるということが大切です。
―― 確かに、400MBを超えるとメールが来るなど、親切すぎるほど親切ですね。普通だと、そこはいつの間にか超えてくれることを考えるのでは(笑)。
森氏 そういう意味では、性善説に基づいていますね。
渡辺氏 気づいたら500MBを超えていたという、だまし討ちのような形はよくないと思っています。ただ、ぜひ少しだけオーバーして使っていただきたいですね(笑)。
―― 一方で、5GBを超えたときの追加チャージが高いような気もします。1GBで3800円は……。
渡辺氏 そこには、あまり意図はありません。たくさん使われる方はあまり想定していませんからね。今でも、5GBを超えて使われる方はいらっしゃいません。高いという声があれば、安くしてもいいかなと。これは検討してみます。
―― ここが安いと、もう少し500MBを超えて使ってみようという人も増えてくるのではないかと思いました。ほかには、3カ月通信がないと自動解約になる点や、SIMを返却しないと違約金がかかる点が気になりました。
渡辺氏 SIMを返さないと違約金が発生するのは、われわれからドコモさんにお返ししないといけないからで、他のSIMも同じような運用、規約になっています。SIMはあくまでドコモさんからお借りしているものなので、そこから請求があったら、お客さまにお支払いしてもらうというものですね。
3カ月通信がなかった場合の自動解約は、やはり挿して使っていただきたいからです。SIMをどこかに保管するのではなく、とにかく端末に挿してもらう。1回でも通信すればいいので、ぜひ使っていただきたいと考えています。挿して、電源が入っていれば、何らかの形で通信をしますからね。
―― 反響は大きそうですが、目標はいかがですか。
渡辺氏 目標はありましたが、もうすぐクリアしそうです。
―― えっ(笑)。まだ始まってから1カ月もたっていませんよ。
渡辺氏 もう少し高い目標を、これから作ろうと思っています。特に低めの目標を立てていたわけではないのですが(笑)。
―― 採算面では黒字になりそうですか。
渡辺氏 来期は、今のトラフィックパターンを見ていれば、大丈夫だと思います。
500MBまで無料の0 SIMだが、やはり実際には、少しこの容量を超えてしまう人も多いようだ。0円で済ませようという、リテラシーの高いユーザーが、そこまで高い比率ではないということだろう。確かに毎月500MBで済ませようとしたら、かなりの工夫が必要になる。そこまでするなら数百円払った方が楽と考えるのは、自然なことかもしれない。
今のところ、収益を出せる見込みも立っており、すぐにこのプランがなくなってしまうという心配もなさそうだ。筆者も実際に使い始めているが、特に“ワナ”と呼べるようなものもない。インタビューからも、むしろソネットの誠実さが伝わってきた。ユーザーの観点で考えると、リテラシーの高いユーザーは、1回線契約しておくべきサービスといえるだろう。
一方で業界全体を見渡したとき、MVNO全体に与えるネガティブな影響は、少々気になるところだ。既に価格競争は行きつくところまできており、0 SIMはそれをさらに促進してしまいかねない金額設定になっている。このまま競争が激化し、業界構造としてもうからないことになれば、事業を続けられなくなってしまう会社も出てくる。現状では、ユーザーを保護する仕組みもないため、総務省などで、何らかの対策を考える必要はありそうだ。
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