「想像を絶する1年」だったけど「生きています(笑)」――UPQ中澤氏が振り返る1年

» 2016年08月09日 21時15分 公開
[田中聡ITmedia]
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 家電ブランドの「UPQ」が、2015年7月の設立から1周年を迎えた。

 UPQの代表である中澤優子CEOは、カシオ計算機で携帯電話の商品企画を担当してきた経歴を持っており、カシオを退職後、独立して家電ベンチャーのUPQを立ち上げた。UPQがこれまでに手掛けた製品は、SIMロックフリースマートフォン、Bluetooth対応ヘッドフォン、USBバックル付きバッグ、折りたたみ型電動バイクなど、全8カテゴリー、37種類、59製品に及ぶ。ブランドコンセプトは「生活にアクセントと遊び心を」で、製品カテゴリーを横断したUPQとしてのシーズンカラーを訴求するなど、独自色を出してきた。

中澤優子 UPQの中澤優子CEO
中澤優子 さまざまな家電を開発してきた

「お前何言ってるんだ」と言われたこともあった

 1年間にこれだけ多彩な製品を投入しただけでも驚きだが、「たくさんラインアップがあれば面白いという考えでスタートしたわけではない。スマホを作りたいなら、他も作れるのでは」(中澤氏)と思い至った結果だという。

 ヨドバシカメラやビックカメラをはじめ、UPQ製品の取り扱い店舗は250まで増えた。「最初はコネがどこにもなかった。カシオにいたからといってもビックカメラにツテはなかった」と中澤氏は苦労を話す。

中澤優子 取り扱い店舗は250を数える

 製品は主に中国の工場で製造しているが、現地スタッフとの関係構築にも努めてきた。「中国だから裏切られることが多いのでは? とよく思われがちだけど、みんなは本当によやってくれている。(最初は)私がオーダーした内容の100%は伝わらず、70%で返してきたけど、『これじゃあダメだ』と何度も繰り返して、毎週のように中国に飛んだ。今では私に出す前に『このレベルじゃダメだ』と、工場の中でやりとりしてくれるまで育ってくれた」と中澤氏は誇らしげに話す。

中澤優子 中国スタッフとの関係も深めてきた

 ケータイメーカー出身の女性がベンチャーを立ち上げて矢継ぎ早に家電を投入している――という話題性も手伝って、多くのメディアがUPQを取り上げ、中澤氏の名前も広まっていった。その拡散ぶりに最初は戸惑ったそうだが、「今の時代、ハードウェアは誰が作っているのかが見えにくいので、面白くないと思われている。顔をさらすことで、お客さんからの反響もあり、学ぶ機会になった」と前向きに捉えている。

 一方で「いわれのないことも言われた」という。「当初は、キャバ嬢が出てきたぞ、こいつに物作りができるのか? というような言われ方もした。『文系でも物作りができる』というキャッチコピーが軽く捉えられたことで、エンジニアの方から『お前何言ってるんだ。文系で技術も分からないくせに、そんなことを言うからなめられるんだ』と言われたこともあった」という。それでも「1つ1つお話する機会があって、私がかける思いをお伝えしたした結果、モノを通して『UPQの製品は面白い』と言ってもらえた。1年を通して反応が変わってきた」と、徐々に手応えをつかんできた。

 中澤氏はこれまでを「想像を絶する1年だった」と振り返る。「責任を取るところも含めて、多々、ニュースにもなった。技適の問題も起こし、製品が予定通り届かなかったこともあった。1つ1つ、最短ルートで解決できないかと前向きに走ってきた」(中澤氏)

中澤優子

新製品を投入してもすぐに型落ちしてしまう

 そもそも、中澤氏はなぜ起業したのだろうか? それは家電の商品サイクルが関係している。

 メーカーが作る製品はシーズンごとに型落ちしてしまい、特にスマートフォンは商品サイクルが速い。しかし型落ちモデルの中でも良品は存在し、例えば2013年に発売された「iPhone 5s」が売れている現状もある。

 中澤氏もカシオ時代に、思いを込めて新製品を作っても、すぐに型落ちしてしまい、売場でなかなか手に取ってもらえなくなるという現実に直面し、「楽しいと思っていた物作りができなくなってしまった。暗黒時代だった」と振り返る。

 そこでUPQを立ち上げ、「こういう時代だからこそ、ベンチャーでしかできないことを挑戦した」。UPQでこだわったのは、スペック、価格、デザインのバランスを取りつつ、心をくすぐる「遊び心」を加えること。この基本姿勢は1年前から変わらない。「次は何が出てくるんだろう? 何を出してくれるんだろう? というワクワクが大事。そのうえで製品を出して驚かせることが、ベンチャーであろうが大手であろうが大事なこと」と中澤氏。その結果が、シーズンカラーの統一や、多彩な製品ラインアップへとつながっていった。

中澤優子

「誰が見ても欲しいと思えるスマホ」も準備中

 UPQの立ち上げ当初、「あそこは1年後には生き残っていない」と何度も言われそうだが、中澤氏は「1年たっても生きています(笑)」といたずらっぽく笑う。投入した製品が売れたおかげで、「UPQ BIKE me01」発売までにかかったコストは回収できており、「これからは黒字化をしていく」という。

 UPQ BIKE me01向けのレザーバッグの開発では、初めて外部メーカー(マザーハウス)と協業をしたが、「自分たちでモノを作る」という姿勢は変えず、「UPQのブランド認知を上げるために大手メーカーと一緒にやることはない」と中澤氏は言い切る。

 今回の発表はなかったが、スマートフォンの新製品開発も進めている。発表は2017年以降になるそうだが、中澤氏は「誰が見ても欲しいと思える製品になる」と自信を見せる。

 この1年で経験値を大きく上げたといえるUPQ。中澤氏のアイデアとパワーでどんな独自製品が生まれるのか、今後も注目していきたい。

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