SIMロック解除の条件緩和、端末の実質価格に新基準――改正ガイドラインの影響は?石野純也のMobile Eye(11月7日〜11月18日)(3/3 ページ)

» 2016年11月19日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

改正ガイドラインが業界に与える影響は?

 長期的に見れば、ガイドラインはより厳格になり、端末価格は上がっていく方向にある。ハイエンド端末とミッドレンジ以下の端末での価格差も広がっていくだろう。ドコモの吉澤和弘社長は、決算説明会で「実際にわれわれがメーカーから端末を購入するときには、それなりの価格になる。それを1万円で売るというのは、もう少し是正できるのではないか」とした上で、「すぐに2万円、3万円、4万円とはならないと思うが、そういった動きはしていきたい」と語っている。

 実質価格が上がれば、キャリアの利益は増す形になるが、その分を通信費で還元していく意向も示している。ソフトバンクグループの孫正義代表は、「通信料金は安くして、多くの人に楽しんでいただかなければいけない。単価はどんどん安くしていく」と語っており、総務省の方針に従う意向を示している。ドコモやKDDIも、長期利用者向けの施策を通じて、ユーザーへの還元を図ろうとしている。

総務省、ガイドライン
総務省、ガイドライン
総務省、ガイドライン 端末価格を上げる一方で、それを原資に、通信費などに還元していく。これは、3社共通の方針だ

 ただ、改正ガイドライン案が、本当に端末価格の適正化につながるのかは未知数だ。価格の目安が示された一方で、その基準が下取り価格になっているため、抜け穴もある。下取り価格を最終的に決定しているのも、キャリアだからだ。もしキャリアが次期iPhoneを実質1円で売りたい場合、iPhone 6sの下取り価格を1円に設定すれば、ガイドラインを守ったことになってしまう。

 さすがにこれは極端な例で、運用でカバーされる可能性もあるが、現状でも最新モデルの実質価格は、下取り価格を上回っているケースが多い。下取り価格が、基準として適切なのかは疑問の余地が残るところだ。むしろ、フォローアップ会合でソフトバンクなどのキャリアが主張していたように、割引に一定の上限を設けるだけでよかったのではないだろうか。下取り価格を端末価格の基準にするというアイデアは、フォローアップ会合でも十分な検討がされたとは言いがたい。

総務省、ガイドライン ドコモオンラインショップでのiPhone 7(32GB版)は、実質価格が2万円超。iPhone 6の下取り価格(1万7000円)よりも、すでに高いので、ガイドラインを適用して実質1万7000円にすると、むしろ値下げになってしまう

 10月13日から3回に渡って開催されたフォローアップ会合だが、結論を拙速に出そうとしていた感は否めない。SIMロック解除に対する議論は細かな仕組みやルールまで話し合われていたのに対し、端末価格の適正化に関しては、きちんと論点が整理されていなかった印象も受ける。ガイドラインは、キャリアやメーカーだけでなく、ユーザーに与える影響も大きいだけに、総務省には慎重な検討を期待したい。

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2024年