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» 2016年12月08日 06時00分 UPDATE

MVNOの深イイ話:通信速度表示とMVNOの関係 (1/2)

電気通信事業者が提供するデータ通信専用回線には、大きく分けて帯域保証型とベストエフォート型の2つがあります。2つは何が違うのでしょうか。また、どんな課題があるのでしょうか。

[佐々木太志,ITmedia]

 われわれ電気通信事業者が提供するデータ通信専用回線には、大きく分けて帯域保証型(ギャランティ型)、ベストエフォート型の2つのサービス形態が存在します。今回は、ベストエフォート型のモバイルデータ通信サービスにおける速度表示と、MVNOにおける課題について、ご説明しようと思います。

ギャランティ型とベストエフォート型の違い

 最初に、ギャランティ型、ベストエフォート型の2つのサービス形態について見ていきます。

 ギャランティ型データ通信サービスとは、お客さまが通信に利用可能な通信帯域(通信速度)を電気通信事業者が保証(ギャランティ)するタイプのサービスのことです。このタイプのデータ通信サービスでは、お客さまごとに専用の通信設備が用意されたり、専用の通信回線が敷設されたり、ネットワーク内でお客さまの通信品質確保のための仕組み(QoS=Quality of Service)が提供されたりします。

 なかなかに魅力的ですが、このタイプのサービスのデメリットは、コストが非常に高額となることです。重要なビジネス向けデータ通信サービスでは依然としてギャランティ型のサービスは多く存在しますが、一般消費者向けのデータ通信サービスでは、1990年代に一部のご家庭にも普及したISDNを最後に、最近はほとんど提供されることがなくなりました。

 このギャランティ型のデータ通信サービスでは、今回の話題となる通信速度表示については、問題になることがほとんどありません。例えば、通信の混雑により通信速度が遅くなることはなく、通信速度は常にサービスの技術的仕様により保証された最大速度に近い(*1)ものとなります。

(*1)ここであえて「近い」としたのは、通信速度(帯域)のそもそもの定義がさまざまだからです。通信速度とは唯一無二の値ではなく、何をどう計りたいかの目的や、どうやって計るのかの手法によってさまざまな数字が存在し得ます。またギャランティ型であってもノイズ等の外的環境の影響はゼロではありません。今回はその技術的なところには触れません。

 もう1つのタイプであるベストエフォート型データ通信サービスでは、1つの通信設備や回線が多数のお客さまで共用されます。また通信品質確保のためのQoSは一般に提供されていません。そのため、混雑などの外的環境に起因する通信品質低下が起こることが避けられません。

 混雑による通信品質低下は皆さんも多かれ少なかれ体感されたことがあるのではないかと思いますが、それ以外にも携帯電話などの無線通信、また有線でもADSLなどの通信方式では、ノイズや距離による信号減衰などの影響により通信品質が顕著に低下するため、ほとんどがベストエフォート型での提供となります。

 メリットは何といってもギャランティ型に比べ料金が安いことで、安価なベストエフォート型データ通信サービス(ADSLサービス、家庭向け光ファイバーサービス《FTTH》、携帯電話インターネットサービス等)が普及したことで、日本社会の情報化は2000年代から飛躍的な進歩を遂げてきました。

ベストエフォート型の抱える問題とは

 ところが、ベストエフォート型データ通信サービスでは、通信速度の表示方法についてトラブルとなることがあります。これらのデータ通信サービスでは、理論上の最大速度は存在するものの、それはあくまでも理想的な環境(例えば1台の設備を1人で占有することが前提だったり、ノイズや信号減衰を無視するなど)を想定した、机上の速度ともいえるものです。

MVNOの深イイ話 大手キャリアが宣伝している数百Mbpsの通信速度は、ベストエフォート型の理論値となる。こちらはドコモの場合

 そのため、閉鎖的な実験環境ならともかく(あるいは閉鎖的な実験環境においてですら)実際に最大速度が確保できることがほとんどない、というのが否めないでしょう。このような理論上の通信速度は、サービス提供者側にとっては通信規格を表す意味があるものですが、サービスを受ける側にとって往々にして誤解の種になることがあり、それに起因する消費者トラブルが、ベストエフォート型であるADSLやFTTHが普及した頃から急速に増えてきました。

 特にスマートフォンの登場以降、急速に理論上の最大速度の高速化の進んだモバイルデータ通信サービスでは、通信速度表示に関連する消費者からのクレームが多く見られるようになりました。

 そのため、2013年から2015年にかけ開催された総務省の有識者会議「インターネットのサービスの品質計測等の在り方に関する研究会」において、実効速度、つまり実際に端末を使って計ってみた通信速度の計測方法や広告への利用方法などについての議論が行われました。

 この会議の報告書をもとに、2015年7月に「移動系通信事業者が提供するインターネット接続サービスの実効速度計測手法及び利用者への情報提供手法等に関するガイドライン」が策定され、そのガイドラインに従った実効速度の計測や表示が、2016年にスタートしました。

 このガイドラインには「MNOをまず優先することとする」との記載があり、このガイドラインに沿った計測はMNOの3社が実施して、その結果をそれぞれのWebページにて発表しています。

 ガイドラインでの計測方法は、計測が各社にとって公平になるように配慮されており(事業者中立性)、ランダム性を持って選ばれた全国1500地点において、各社が共通の費用負担で委託した外部業者により、ルールに従って計測を行うことになっています。

MVNOの深イイ話 NTTドコモが公表している実効速度(Androidの場合)

 これらの運用が適正かどうかは、4つの通信系業界団体により構成された「電気通信サービス向上推進協議会」内に設置された「実効速度適正化委員会」に所属している有識者によりチェックされます。同様に、これら計測された実効速度や、理論上の最大速度を広告に利用する際の詳細なルールも同協議会が策定した「電気通信サービスの広告表示に関する自主基準及びガイドライン」により定められており、MNOの3社がこれに従った広告を展開しています。

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