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» 2016年12月08日 16時30分 UPDATE

5分で知る最近のモバイルデータ通信事情:下りも上りもWiMAX 2+史上最速――「WX03」に対する大きな期待と小さな不安

UQコミュニケーションズは12月2日、モバイルWi-Fiルータの新機種「WX03」を発売しました。理論上の通信速度が従来比で下り2倍・上り3倍と、現時点で史上最速のWiMAX 2+ルーターである一方、対応エリアの拡大や通信速度制限面での不安もあります。

[島田純,ITmedia]

「WX03」は下りも上りも“WiMAX 2+史上最速”

 UQコミュニケーションズ(以下、UQ)は12月2日、NECプラットフォームズ製のモバイルWiMAX 2+ルーター「Speed Wi-Fi NEXT WX03」を発売しました。

 WX03は、基地局と端末がそれぞれ4本のアンテナを同時に使ってデータ通信する「4×4 MIMO」と、複数の周波数帯の電波をまとめて通信する「キャリアアグリゲーション(CA)」の両方に同時対応した、初めてのモバイルルーターです。

(記事中の通信速度は、全て理論値)

Speed Wi-Fi NEXT WX03 Speed Wi-Fi NEXT WX03

 WX03は下り最大440Mbps、上り最大30Mbpsで通信できます。下り速度は、現行のモバイルルーターとしては国内最速です(2017年3月にはもっと速いモバイルルーターが登場する予定ですが……)。上り速度については国内最速……ではありませんが、WiMAX 2+ルーターとしては最速です。少なくとも、WX03は現時点における“史上最速のWiMAX 2+ルーター”です。

 さて、ここでWiMAX 2+の通信速度の歴史を振り返ってみましょう。

 2013年9月のサービス開始時の通信速度は、下り最大110Mbps・上り最大10Mbpsでした。その後、UQはCAと4×4 MIMOの2種類の高速化技術を機種別に採用することになります。

 まず、2015年2月に一部のWiMAX 2+エリアでCAに対応し、CA対応端末において下り最大通信速度が220Mbpsとなりました。翌3月には、4×4 MIMOに対応するモバイルルーター「Speed Wi-Fi NEXT WX01」が登場し、CA対応機種よりも広いエリアで下り最大220Mbpsでの通信を実現しました。

 これ以上の高速化を実現する場合、CAと4×4 MIMOの両方に対応する必要がありますが、通信制御の難しさと消費電力の大きさ(バッテリー持ち)が課題となり、すぐには実現しませんでした。

 2016年6月には、下り最大370Mbpsの通信を実現した「Speed Wi-Fi NEXT W03」が登場しました。しかし、この速度を出すにはau(KDDI・沖縄セルラー電話)の「4G LTE」ネットワークを併用(ハイスピードプラスエリアモードを利用)する必要があるため、純粋にUQのWiMAX 2+ネットワークだけを使う場合(ハイスピードモード)の通信速度は下り最大220Mbpsにとどまっていました。

 今回登場したWX03で、ようやくWiMAX 2+におけるCAと4×4 MIMOの併用が実現し、下り最大440Mbpsでの通信を実現したのです。

 その一方で、WiMAX 2+の上り通信速度は2013年9月以来、最大10Mbpsのまま据え置かれていました。それが、WX03では最大30Mbpsと一気に3倍に引き上げられました。これは、電波の変調方式の変更(64QAM)と、上りCA対応によって実現したものです。

CAと4×4 MIMOの併用 CAと4×4 MIMOの併用で、下り通信速度が2倍に(画像はWX03の製品情報から引用

 話を元に戻して、筆者がWX03に期待しているのは“上り速度”です。筆者の実感として、下りの通信速度が極端に遅いということは(電波状況が悪くない限り)2015年前半の段階でなくなりました。しかし、ずっと据え置かれていた上り通信速度が、「Dropbox」などのクラウドストレージでの写真・動画のアップロード時には“物足りなく”感じていたのです。理論値ではありますが、従来比3倍の速度は、物足りなさをきっと埋めてくれるでしょう。

WX03が“本気”を出せるエリアは「狭い」?

 ただし、WX03が“本気”を出せる「下り最大440Mbps対応エリア」と「上り最大30Mbps対応エリア」は、一気に全国展開とはなりません。前者は、「東名阪(関東・中部・関西)エリア」から順次拡大、後者は「一部エリア」から順次拡大とされています。よって、広く使えるようになるには時間がかかるものと思われます。

下り最大440Mbps対応エリアは東名阪エリアから 下り最大440Mbps対応エリアは東名阪エリアから順次拡大とされている

 WX03の発売に合わせて、UQは下り最大440Mbps対応エリアの情報を公開しました。地図を見る限りは、東京23区・名古屋市・大阪市とその周辺では、比較的連続的にエリア展開できているようです。

東京とその周辺都市 東京23区周辺は、ほぼ下り最大440Mbps対応エリアになっている

 ただし、UQや、その親会社であるKDDIの「高速通信対応エリア」の拡大については、不安を覚える面もあります。というのも、先述のW03における下り最大370Mbps対応エリアに関する情報が、端末の発売から約半年が経過した12月7日現在でも、ハッキリと示されていないのです。ユーザーは、自分のモバイルルーター(あるいはWiMAX 2+対応スマホ・タブレット)がより高速に通信できるのか確認できないままに使わざるを得ない状況は、どうにかして解決してほしいのです……。

auの370Mbps対応エリアは、いまだに具体的なエリアマップで示されていない UQのWiMAX 2+とauの4G LTEを組み合わせたCAの対応エリアは、いまだに具体的に示されていない

「3日で3GB」の通信速度制限は強化?

 現在、UQではWiMAX 2+/4G LTEでの通信量が直近3日間で合計3GBを超過すると、その翌日から「混雑回避」を目的とする通信速度制限をかけています。

 具体的な制限内容は非公開となっていますが、筆者の実測値では、2015年5月下旬の速度制限導入時は上下最大1Mbps程度とかなり厳しく制限されていましたが、同年7月中旬には上下最大6Mbps程度に緩和されました。それ以来、1年以上に渡って制限時の速度に大きな変動はありませんでしたが、2016年10月下旬の実測値では上下最大4Mbps程度と、やや制限が強化されたようです。

2016年10月下旬の実測値 2016年10月下旬に実測したところ、通信制限時の通信速度がやや落ち込んだ

 ただし、利用する地域や時間帯によっては「制限時でも6Mbps程度は出ている」という声もあることから、直近の制限強化は「全ての利用者に対して一律で」行っているものではないようです。

まとめ:通信高速化は大歓迎 でもエリア情報・規制情報は開示して

 今回取り上げたWX03は、下りだけでなく上りの通信速度も“WiMAX 2+史上最速”です。何にせよ、通信速度の高速化は大いに期待したいものです。

 しかしながら、極めて限られたエリアでしか高速化の恩恵に浴せない「名ばかりの最高速度」となってしまっては、意味がありません。現在のところ、UQは下り最大440Mbps対応エリアは情報を公開していますが、東名阪エリア以外への拡大予定や、上り最大30Mbps対応エリアは公開していません。快適なデータ通信を利用できるようにするためのエリア整備や、それに伴うエリア情報開示など、ユーザーにとって目で見えない場所・見える場所両方での改善も進めてほしいところです。

 直近3日間で3GBの通信量を超えた際の通信速度制限に関しても、制限状態の速度に関する具体的な情報開示がないままに、制限が緩和されたり強化されたりして、いちユーザとしては「不安」を感じてしまう動きがあるのも気がかりです。通信速度制限についても、今後の見通しに関するアップデートがあると良いのですが……。

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