「iPhone X」で大きく変わった要素の1つが「Face ID」。従来の「Touch ID」で使う指紋認証の代わりに顔認証を用いる形だが、Face IDとTouch IDはどちらが使いやすいのか? 筆者は「iPhone 7 Plus」から「iPhone X」に乗り換え、6日ほどiPhone Xを使っている。その中で感じたことをまとめたい。
Touch IDでは、登録した指をホームボタンに触れると動作し、ロックが解除される。ディスプレイが消灯している状態なら、ホームボタンを一度押してから、そのままボタンに触れ続けていればロックが解除される。つまりワンアクションで済むわけだ。
ただし指が汗ばんでいたりぬれていたりするなど、指の状態によってはロック解除できない。
対してFace IDは、(1)電源キーを押す、画面を顔に向ける、画面をタップするなどの操作でディスプレイを点灯させる→(2)Face IDでロックを解除→(3)画面の下端を上にスワイプする、という3ステップを要する。
Face IDでのロック解除にはインカメラ(Appleは「TrueDepth カメラ」と呼んでいる)を使うが、ロック解除時にカメラが起動して自分の顔が映るわけではなく、裏側で処理をしてくれている。ロック画面に表示されるアイコンの鍵が外れたら、ロック解除されたことになる。
厄介なのは、ロック解除された後。上記(3)にある通り、解除されてからも画面下端の白線を上にスワイプしないといけない。スワイプする箇所が下なので、片手だと親指を下まで移動させる必要があり、少々操作しにくい。指を下まで移動させるのはTouch IDも同様なので、Face IDならではの不満点とはいえないが、どこをスワイプしてもロック解除できるようにしてほしい。
下端以外の部分をスワイプすると、通知が表示されてしまう。この誤操作はいまだに何度もやってしまう。ロック画面に通知が表示されるのはiOS 11の仕様なので仕方がないとはいえ、Face IDを使う上ではマイナスだと感じた。
画面を“見ただけ”でロック解除されるのは、セキュリティやユーザビリティの観点からは推奨されないのだろうが、Face IDでの認証後に即ロックが解除される設定も欲しいところだ。
認証の速さは、体感ではTouch IDの方が上だという認識。実際にロックを解除してホーム画面が表示されるまでの速さをストップウォッチで3回測ったところ、Face IDは2.17秒、2.07秒、1.84秒、Touch ID(iPhone 7 Plusで操作)は1.32秒、0.82秒、0.9秒だった。Face IDは2秒前後、Touch IDは1秒前後で、Face IDの方がTouch IDよりも約1秒遅いという結果だった。
手がぬれていたり、手袋をしていたりといった状態でもロックを解除できるのは、Face IDならではのメリットだ。
Face IDで認証するには目を開けている必要があるので、寝ている間に勝手にロックを解除される心配もない。ただしFace IDの注視機能をオフにすると、目を閉じていても解除されてしまうので要注意(関連記事)。
Touch IDは指が正常な状態でも誤認識することがあったが、Face IDでは、目を開いて正面から見さえすれば、誤認識はほぼない。認証精度の高さはTouch IDより上だと感じた。
Face IDでロックを解除するには、iPhone Xを正面から見る必要があるので、Touch IDのように机に置いたままや画面が上を向いているなど、画面と目線が平行でないときにはロックを解除できない。
Face IDで認証するには目を開かないといけないため、朝、寝ぼけまなこでiPhone Xの画面を見たときは、認証されないことが多かった。
既に多くの記事でも指摘されているが、マスクを着用した状態で認証できないのもマイナス。ここはチップ側が「マスク姿=本人」だと学習することで解消されることに期待したい。
操作ステップ、認証スピード、認証シーンという点で、Face IDはTouch IDに比べて不満を覚えることが多いが、認証精度の高さには満足している。
またAppleによると、Face IDで他人がロック解除できてしまう確率は100万分の1と低い。登録した顔のデータは暗号化しており外部に保存されることもないので、セキュリティ上も安心できる。
理想はFace IDとTouch IDのどちらも使えることなのだが、次期iPhoneでは実現されるのだろうか。
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