Windows 8のUIでは、“シンプル”を前面に押し出していることも特徴といえる。そのため、タッチ操作におけるフィンガージェスチャーの種類を限定し、例外を基本的に許さない。BUILDで配布された体験用タブレットデバイスの紹介記事で、「クセのある操作」と表現したように、「swipe to select」など直感的ではない操作も含まれている。ただ、一度覚えれば迷うことなくすばやくスムーズに操作できるデザインの統一が、OSの根幹にある思想だと筆者は考えている。
一方で「Semantic Zoom」のように、感覚としては分かっていても繰り返し操作に失敗したジェスチャーも存在していたので、ブラッシュアップはまだまだ必要だと感じている。実際、このフィンガージェスチャーの種類は6月の台湾のパートナーイベントで確認できた数から減っていると思われる。6月のイベントでは「タブレットデバイスを両手で持った状態で画面端をタップすると、スワイプ、または、スクロールと同じ効果が得られる」(画面を切り替える)という操作があったが、この機能はBUILDで紹介されておらず、おそらく、ペンディングか削除された可能性が高い。
Windows 8のもう1つのミッションとして、「PCとして動作可能なすべてのデバイス」に対してWindows 8が動作することを想定せよ、というものがある。従来型のデスクトップPCから大画面テレビ、ノートPC、タブレットデバイスまで、ありとあらゆるフォームファクタやスクリーンサイズを想定しなければならないということだ。Metroスタイルでも、その“想定”を色濃く反映している。Microsoftによれば、スクリーンサイズは10〜27型程度、その解像度は200〜250DPIが近い将来にも標準になることを想定すべし、という。
問題となるのは、それだけ広くなったスクリーン領域の利用方法と、それぞれの解像度に合わせたプログラミング手法だ。Metroのタイルを標準的なPC搭載ディスプレイのサイズと大画面テレビのサイズに並べた場合、表示可能なタイル数は圧倒的に異なる。大画面ディスプレイではタイルを大量に並べるデザインも有効だが、Microsoftが推奨するような細かいDPIが一般的になるとすれば、タイル数はそのままに、画像や文字の表示をよりきれいでスムーズにするなど、使うデバイスの種類によって利用スタイルも変化するだろう。また、画面の解像度や横縦比の違いで、デバイスによって表示可能な情報量に差が出ることになる。開発者はこの“違い”も意識する必要がある。
このほか、ディスプレイの高解像度化やHD化の進化に合わせ、アイコンなどもSVGやXAMLなどを使ってベクターグラフィックで記述して、スクリーンサイズと解像度によって調整できるようにしておくべき、とMicrosoftはアドバイスしている。最初は試行錯誤になるだろうが、Windows 8のリリースから1〜2年程度を経て、だんだんと“コツ”が開発者で共有され、アプリの対応も落ち着いていくことになると想像している。
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