開発者が知っておきたいMetroの“作法”すべてをカバーするのは大変なことなのです(3/4 ページ)

» 2011年09月29日 11時30分 公開
[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

直感的操作を優先してジェスチャーは少なく

 Windows 8のUIでは、“シンプル”を前面に押し出していることも特徴といえる。そのため、タッチ操作におけるフィンガージェスチャーの種類を限定し、例外を基本的に許さない。BUILDで配布された体験用タブレットデバイスの紹介記事で、「クセのある操作」と表現したように、「swipe to select」など直感的ではない操作も含まれている。ただ、一度覚えれば迷うことなくすばやくスムーズに操作できるデザインの統一が、OSの根幹にある思想だと筆者は考えている。

Windows 8ではタッチ操作のジェスチャーの種類を絞ることで、シンプル、かつ、ダイレクトに画面の操作を可能にすることを主眼に置いている。そのため、OSシステム上では7種類のジェスチャーを検出するためのAPIセットを用意する。加えて、基本的に例外をなくすのがユーザービリティ向上への道だ

 一方で「Semantic Zoom」のように、感覚としては分かっていても繰り返し操作に失敗したジェスチャーも存在していたので、ブラッシュアップはまだまだ必要だと感じている。実際、このフィンガージェスチャーの種類は6月の台湾のパートナーイベントで確認できた数から減っていると思われる。6月のイベントでは「タブレットデバイスを両手で持った状態で画面端をタップすると、スワイプ、または、スクロールと同じ効果が得られる」(画面を切り替える)という操作があったが、この機能はBUILDで紹介されておらず、おそらく、ペンディングか削除された可能性が高い。

直感で分かりにくい操作の1つが、タイルをタップするのではなく、上から下方向に向かってなぞってタイルを選択する動作だ。若干の慣れが必要だろう(写真=左)。もう1つ、分かりにくいのが「Semantic Zoom」と呼ばれる操作だ。例えば、タイルが並ぶホーム画面上で2本指によるピンチイン操作(ズームの逆)を行うと、ホーム画面全体を俯瞰するモードになる。ただし、この機能は誤動作が多く、配布された評価用タブレットデバイスを使っていた参加者は必ずのように失敗していた(写真=中央、右)

複数のスクリーンサイズを想定したアプリデザインを

 Windows 8のもう1つのミッションとして、「PCとして動作可能なすべてのデバイス」に対してWindows 8が動作することを想定せよ、というものがある。従来型のデスクトップPCから大画面テレビ、ノートPC、タブレットデバイスまで、ありとあらゆるフォームファクタやスクリーンサイズを想定しなければならないということだ。Metroスタイルでも、その“想定”を色濃く反映している。Microsoftによれば、スクリーンサイズは10〜27型程度、その解像度は200〜250DPIが近い将来にも標準になることを想定すべし、という。

タッチ用とマウス用でUIを切り分けるのではなく、あくまで同一のUI上で2つ以上の操作を許容するようにMicrosoftはアプリ開発者に訴えている。ゲーム関連のセッションでも、これにゲームパッドや傾きセンサーなどを加えた複数の操作に対応することを推奨するなど、アプリ側であらゆるニーズを想定する必要がありそうだ(写真=左)。Windows 8では同OSが動作するあらゆるデバイスやフォームファクタでの利用を前提したアプリを記述することが求められている(写真=右)

 問題となるのは、それだけ広くなったスクリーン領域の利用方法と、それぞれの解像度に合わせたプログラミング手法だ。Metroのタイルを標準的なPC搭載ディスプレイのサイズと大画面テレビのサイズに並べた場合、表示可能なタイル数は圧倒的に異なる。大画面ディスプレイではタイルを大量に並べるデザインも有効だが、Microsoftが推奨するような細かいDPIが一般的になるとすれば、タイル数はそのままに、画像や文字の表示をよりきれいでスムーズにするなど、使うデバイスの種類によって利用スタイルも変化するだろう。また、画面の解像度や横縦比の違いで、デバイスによって表示可能な情報量に差が出ることになる。開発者はこの“違い”も意識する必要がある。

想定するスクリーンサイズとしては10〜27型程度、解像度は近い将来にも200〜250dpiクラスのものが登場することを想定すべきとのMicrosoftは説明している(写真=左)。実際の解像度でどの程度表示内容が変わってくるのか。BUILDで配布された評価用タブレットデバイスの1366×768ドットと(写真=中央)、27型ディスプレイでカバーするような2560×1600ドットで(写真=右)、単純にdpiの違いを考慮しなければ並べられるタイル数でこれだけの差がある。問題の1つは、この増えた画素を単純にそのまま拡大した領域として使用するのか、あるいは、アプリそのもので表示方法を変えるのか(例えばタイル数はそのままに、写真や文字をさらにきれいに表示させるなど)、開発者は悩むことになるだろう

 このほか、ディスプレイの高解像度化やHD化の進化に合わせ、アイコンなどもSVGやXAMLなどを使ってベクターグラフィックで記述して、スクリーンサイズと解像度によって調整できるようにしておくべき、とMicrosoftはアドバイスしている。最初は試行錯誤になるだろうが、Windows 8のリリースから1〜2年程度を経て、だんだんと“コツ”が開発者で共有され、アプリの対応も落ち着いていくことになると想像している。

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