口コミレビューで“なかったこと”にする方法牧ノブユキの「ワークアラウンド」(2/2 ページ)

» 2012年08月07日 11時30分 公開
[牧ノブユキ,ITmedia]
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かなりの大技だが効果は絶大「製品型番変更」

 レビュー工作とはまったく別のアプローチで、過去の低評価レビューを目立たなくさせる方法がある。ほかでもない、低い評価となった製品の型番そのものを変更してしまう方法だ。口コミWebサイトの多くは、製品の型番ごとにレビューページを用意しており、新しい製品が登場したら新しいレビューページを設ける。これを利用して、製品の型番を変更することで、低評価がついた従来のレビューページを放棄し、まっさらな新しいレビューページでやり直す。

 これはかなりの大技に見えるが、それほど難易度は高くない。新たに型番を用意して、JANコードを取得するまでの手続きは簡単だ。在庫分の説明書やパッケージの差し替えは、新規に作業が発生するが、シールなどで修正できるし、その作業自体を外注先に投げてしまう手もある。部材の在庫が少なければ、破棄してもそれほどロスにはならない。カタログや販促物も同様だ。

 製品本体に変更を加えないのに型番を変えられることを不思議に思ったユーザーもいるだろう。実際のところ、製品そのものにまったく変更がないのに新モデルとして販売しているケースは少なくない。要因こそ異なるが、2011年のタイ洪水で一部のPC周辺機器が値上げを行なったときも、同じモデルながら新しい型番への差し替えが行われた。「中身は同じなのに型番だけ新しくするのは、いかがのものか」という意見が聞こえてきたら、新しいファームウェアを導入したモデルを新しい型番とし、旧式ファームウェアのモデルと区別した、とでもしておけばよい。

 一般的に型番が変わるといえば、製品に大きな変更を加えたと解釈することが多いので、型番変更後の製品をユーザーが別の新製品として新たに評価する可能性は高い。そんなわけで、ファームウェアをアップデートして機能を一新したのに、過去の低評価レビューがいつまでも影響して売上が伸びない場合には、型番ごと変える対応はかなり有効だ。特に、ライフサイクルが長い製品であれば、早めに手を打つことにより、初期の低評価を払拭できる。

 ただ、製品本体に型番をシールではなくシルク印刷している製品になると、新しい型番のシールを貼り直して済ませるのはさすがに難しい。逆にいうと、このような状態を見越して型番を本体に直接印刷せず、いつでも差し替えられるようにしておくのが、メーカーが長年の経験で得たノウハウでもある。また、通信機器の場合は技適マークなどの技術規格を取り直さなくてはいけないため、手間もかかれば費用もかかる。さらに、国内だけで販売している製品ならまだしも、世界的に展開しているような製品であれば、一国だけの判断で勝手なことはできない。流通ルートが広ければ広いほど難しい方法だといえる。

現実的な対応策は「カラーバリエーションの追加」

 型番変更より現実的な対応策となるのが、カラーバリエーションの拡大を装って、問題のあった製品を終息する方法だ。

 例えば、現在のカラーバリエーションが「ホワイト」「ブラック」で、これらに対して低評価のレビューが大量発生している場合、別の名称、例えば「パールホワイト」「マットブラック」といった同一セグメントの製品を投入し、それに合わせて「ホワイト」「ブラック」を廃盤にしてしまう。変更するのは色の呼称だけで、実際の色はまったく同じでも構わない。

 こうすれば、口コミWebサイトは、「パールホワイト」「マットブラック」のレビューページを新たに用意するので、低い評価は事実上“なかったこと”にできる。カラーを示す末尾の文字を除いた型番本体は従来と変わらないので、型番まるごと変更する場合と異なりパッケージ変更などの手間は最小限で済むし、技術規格などを取得し直す必要もない。店頭の在庫は若干の値引きして売り切ってしまうか、あるいは返品してから新しいカラーバリエーションモデルとして再投入してもよい。本体に大きく「ホワイト」などと表記することはないので、変更するのはせいぜいパッケージ程度、あとは販促物レベルで済む。

 「同じ色で入れ替えでは、いくらなんでも露骨です」というのであれば、同じタイミングで新色の「シルバー」でも投入しておけば、いかにもカラーバリエーションの統廃合に伴って従来のカラーモデルが終息したように装える。費用対効果を考慮すると、型番そのものを変更するのに比べて現実的な方法だ。カラーバリエーションではなく、搭載するメモリの容量を変えたモデルを投入する方法も、この亜流に相当する。

 ただ、口コミWebサイトの中には、こうしたカラーバリエーションごとではなく、すべての色をまとめたレビューページを用意している場合も多い。価格.comや、一部のAmazonページが、これにあたる。こうした口コミWebサイトでこの手法は効果がない。

 状況の深刻さや不具合修正のレベルに応じて、使い分けられるだけの対応策を用意して実行に移し、悪い評価がなるべく表に出ないようにすることも、メーカーに求められるノウハウだ(その手法の是非は以下同文)。そういう意味で、Kobo Touchの事案は、こうしたケースにおける“メーカーとしての”経験値の低さと余裕のなさを露呈したといえるのかもしれない。

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