筆者は2016年の業界動向を占うコラムの中で、次のように書いていた。
iPhoneの登場以来、業界のイノベーションを先導してきたAppleが、iPhone、iPadそれぞれで創出してきた新市場に成長余力の限界を見ているからこそ、これらを開発したのでは? と思うからだ。
iPad ProはiPadのアプリ領域拡大、新しいMacBookはノートPCの利用シーン拡大という視点で商品が企画されている(余談だがMacBookのコンセプトを完結させるなら、LTEモデム内蔵モデルが欲しいところだ)。新ジャンルの創出よりも、各商品ジャンルの領域拡大を狙ったものだ。
PCの高い生産性と、タブレットの手軽さ、身軽さの間に、「パーソナルコンピュータのスイートスポット」があるとAppleは考えているのではないだろうか。
つまり、自ら起こしたiPhoneによるイノベーションで変化したユーザーニーズを整理し、ラインアップの整理を進めている……ということだ。Appleが提供するプラットフォームの上で多様な端末を提供することで、顧客に好みの製品を選んでもらえばいいという考え方だ。
Appleの視点で言うならば、iPad Proを使おうともMacBookを使おうとも、あるいは場面に応じて複数のAppleデバイスを組み合わせようと構わない。よりユーザーの満足度を高められる領域、市場スペースがあるならば、そこにベストな製品を投入する。他社の製品は関係ない。Appleは着実に王道を歩んでいるように見える。
ただし、気掛かりなのは日本における価格だ。
iPhone SE(16Gバイト)の価格は399ドル。現在の換算レートで言えば、4万5000円〜4万6000円、高くとも5万円を切る価格設定が期待されるところだが、日本では5万2800円(税別)という価格が付けられた。つまり、約132円程度のレート換算である。
Appleは新しい製品ラインを発売するとき、そのときの為替動向に応じた日本市場での価格を付けることが多い。一方、同じシリーズで異なるバリエーションを発売する際には、他のラインアップとの相関を考えて価格を付ける。例えば9.7型iPad Proの価格は、1ドルあたり約112円だ。アップデートしたApple Watchも、従来機に準じた換算値が採用されている。
今後、MacBook Proのフルモデルチェンジがあると予想されているが、あるいは1ドルあたり132円程度の換算値が新シリーズで適用される、すなわち円での価格が大幅に上がる可能性もある。ITmedia PC USERの読者にとっては、そちらの方が気になるところかもしれない。
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