実際、こうしたAIアシスタントと組み込みデバイスを掛け合わせた世界において、Microsoftはバックエンドに近いクラウドの部分で存在感を発揮している。
例えば、米KohlerがCES 2018で発表した「KOHLER Konnect」というスマートホームシステムがある。これは、キッチンの蛇口やバスルームのシャワー、洗面所のライトまで、同シリーズに属するさまざまな家庭用品をAlexa経由の音声の他、モーションコントロールを使い、ハンズフリーで自由に制御できるというものだ。
お湯の温度なども含め、各種設定情報はあらかじめモバイルアプリを通して登録可能だ。これらの情報を統括しているのはクラウド上に存在するKOHLER Konnectのサービスだが、その実態はMicrosoft Azureであり、Microsoftのクラウドを用いることでプラットフォーム化を実現している。
つまり、CortanaというAIアシスタントのフロントエンドこそ利用しないものの、システムの根幹を支えるのはMicrosoftの技術というわけだ。
CES 2018では少ないながらも、ようやくWindows 10 IoTを搭載したCortana対応デバイスの新製品が登場した。
Johnson Controls(JCI)が開発した「GLAS」という室温計で、有機ELのタッチディスプレイとCortanaによる音声操作に対応する。JCIはアイルランドのコークを拠点とする、創業から100年以上の歴史ある企業だ。世界初となる電気室温計を発明したことで知られている。
GLASはウォールマウント型のボディーに半透明の透過型ディスプレイを搭載しており、インテリアとしても周囲と調和しやすいデザインが特徴だ。音声操作だけでなく、アプリを通じた操作も可能で、リモートで制御しやすくなっている。
ただし、GLASは2018年3月に予約受け付けを開始するものの、現状でアプリの提供予定があるのはAndroidとiOSのプラットフォーム向けだけだ。Windows 10はまだその対象に入っていない。
このようなCortanaに対する懸念が強まった影響か、米Microsoftは1月9日(現地時間)にWindows公式ブログで最新の取り組みについて説明した。
JCIのGLASがCortana Devices SDKを使って比較的容易に開発されたことに加えて、Allwinner、Synaptics、TONLY、Qualcommといったパートナー企業がデバイスの開発やレファレンスデザインの提供を進めているという。
しかし、MicrosoftがWindows 10 IoTを長らくアピールしてきたにもかかわらず、CES 2018でCortanaのフロントエンドとしての採用例がほとんど出てこなかったのは残念だ。
デバイスへのフロントエンドの組み込みでMicrosoftのCortanaが出遅れているのは間違いなく、これをキャッチアップするのが2018年の課題となりそうだ。
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