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» 2010年01月29日 00時00分 UPDATE

「テレビに出た場所」をもっと身近に――「ブラタモリ提供ブラアプリ」の狙い

NHKの人気テレビ番組「ブラタモリ」と連携したiPhoneアプリ「ブラタモリ提供ブラアプリ」。テレビに出た場所をモバイル端末を使ってユーザーと結びつけることで、番組を追体験する楽しさが生まれ、地域産業の活性化にも役立てられると担当者はみる。

[山田祐介,ITmedia]
photo 博報堂DYメディアパートナーズの上路健介氏

 「テレビに取り上げられた場所を、“その場”で知る方法はないかと考えた」

 古地図を片手にタモリさんが街を散策するNHKのテレビ番組「ブラタモリ」とコラボレートし、博報堂DYメディアパートナーズとクウジットがiPhoneアプリ「ブラタモリ提供ブラアプリ」を開発した。アプリの配信開始に伴い、開発に関わった博報堂DYメディアパートナーズの企画開発プロデューサー 上路健介氏らが取り組みの背景を語った。

「テレビに出た場所」はリッチに見える

photo 「ブラタモリ提供ブラアプリ」

 同アプリは、銀座や上野など、番組で取り上げた各エリアのスポットを映像素材で紹介し、マップ画面や、GPSと地磁気コンパスを生かした“矢印”による簡易ナビゲーション(iPhone 3GSのみ)でユーザーをその場所へ案内する、位置連動型のコンテンツ配信サービスだ。アプリでは、まず「早稲田」「上野」といった放送回の選択画面が現れ、それらを選択することで各スポットの動画を見たり、スポットの場所を地図上で確認できる。さらに、スポットの詳細画面から「この場所に行く」を選択すると、画面に大きな矢印が現れ、目的地の方角や距離を示してくれる。

photo アプリのユーザーフロー

 博報堂DYメディアパートナーズでマスメディアと先端技術を絡めたサービスの開発に取り組む上路氏は、「テレビに取り上げられた場所」とユーザーをアプリで結びつける今回の取り組みに期待を寄せている。

 もともと岩手のテレビ局に勤めていた同氏は、「地方に行けば行くほどテレビの力を感じる。『この店がテレビに出た』ということが共通の話題になり、その場所がリッチに見える」と、テレビが場所に及ぼす効果に着目。モバイル端末で位置情報とともに映像に触れられるサービスを作ることで、番組を身近に感じさせ、ユーザーの行動意欲を刺激することで地域の産業振興に役立てられると考えた。

photophoto 動画でその場所を知り、ナビに従ってその場所を訪れ、番組を追体験できる

 こうした視点から同社は、映像素材を位置情報付きで管理し、さまざまなフォーマットに変換できるサービス「Rocket Box」を開発。今回のアプリは、同サービスを使って動画をストリーミング配信している。


photo 「Rocket Box」では、動画ごとに住所を指定してデータベースに登録することができる
photo 経済産業省の加藤幹也氏

 また、今回の取り組みは経済産業省の「ITとサービスの融合による新市場創出促進事業(e空間実証事業)」の委託を受けて実施したものでもある。同事業では今年度は「今だけ、ここだけ、あなただけのサービスの実現」という「ユビキタスとは正反対のコンセプト」を掲げて企業の参加を公募し、その1社として博報堂が採択された。

 「ユビキタスの“いつでもどこでも誰とでも”のコンセプトでコンテンツが配信されると、価値の希釈が起こる。“ある所”に限定することで、付加価値を高められるのではないか」――経済産業省の商務情報政策局 文化情報関連産業課技術係長の加藤幹也氏は、取り組みの狙いについてこう語る。ただし今回のアプリについては、ユーザーの現在地に関係なく動画の視聴が可能で、その場所でしか手に入らないものは別に用意されている。

その場所ならではの「ご褒美」をユーザーに――

photo クウジットの末吉隆彦社長

 アプリケーションのフレームワークは、Wi-Fiを使った位置測位技術「PlaceEngine」で知られるクウジットが担当した。PlaceEngineはGPS測位が難しい屋内で効果を発揮する技術のため今回のアプリには導入されていないが、位置とコンテンツを結びつけたサービスを開発してきたノウハウを生かし、ユーザーインタフェースを作り上げた。

 「その場所でしか味わえない五感を、ITで拡張することに興味がある」と語るのは、クウジットの代表取締役社長 末吉隆彦氏。今回は位置とテレビ番組を結びつけてユーザーの散策体験の拡張を目指したほか、ユーザーがスポットに到着すると使える「ココカメラ」という機能で、“思い出”の拡張も試みた。

 ココカメラは顔認識技術によって、その場所で撮影した人物の顔に“その場所専用の画像処理”を施す機能だ。被写体の目がハートになったり、マンガ風になったりと、訪れる場所ごとに異なる演出が用意されている。また、一度ココカメラで撮影した写真は「コレクト画面」に保存され、ほかの場所でココカメラを撮影する際に、コレクトした写真の画像処理が選択できるようになる。

photo 赤い靴の女の子として有名な「きみちゃん」の像の前でココカメラを撮影すると、きみちゃんの顔も認識されて画像処理の演出が入る
photo 「ブラタモリ」司会のNHKアナウンサー 久保田祐佳さんも発表会に駆けつけた。アプリには、久保田さんが番組で取り上げた場所を改めてリポートした“限定映像”が多数用意されている

 位置情報を活用したサービスでは「その場所に着いたとき、何がもらえるのか」が重要だと上路氏は考える。今回はココカメラの画像処理を「ご褒美」として用意したが、それ以外にもクーポンを提供したり、その場所にあった音楽や映像を提供したりと、さまざまなインセンティブが考えられるという。

 2009年の11月に番組との連携が決まり、急ピッチで開発された今回のアプリ。「まだまだ整備したいところがある」と上路氏は語る。今後はブラタモリと連携したサービスを日本のケータイ向けにも展開する予定のほか、地方のテレビ局と連携した位置連動映像サービスの第2弾も登場するという。

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