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「AR Commons Summer Bash 2010」リポート【3】:ARに必要な“プラットフォーム”は何か

位置情報や画像認識技術を使ったモバイルARサービスが徐々に増えてきた2010年。今後、ARならではの体験性を作り出すにはどんな土台が必要なのだろうか。

 ARの産業化や普及を目指し業界関係者がさまざまな議論を交わしたイベント「AR Commons Summer Bash 2010」の模様を、前回前々回に続きリポートする。今回は、ARサービスの提供者らによるパネルディスカッションの様子を紹介しよう。

ARに必要なプラットフォームは?

photo 左から芸者東京エンターテインメントの田中泰生氏、KDDI研究所の小林亜令氏、クウジットの末吉隆彦氏、頓智ドットの井口尊仁氏

 ARが普及するために、必要なものは何なのか。そんな疑問に対する1つのヒントを、KDDI研究所で実空間透視ケータイ(セカイカメラZOOM)の開発に携わる小林亜令氏は提示する。

 同氏はの意見は、ARサービスの土台に「5W1Hを把握する技術」を組み込む必要があるというものだ。

 まず、同氏は利用者の増加が注目されている位置情報ゲームを例に挙げ、ブレイクの背景にGPSやパケット定額といったモバイル利用環境の整備・浸透があることを説明。逆に言えば、現状の“GPSなどの位置情報しか把握できないプラットフォーム環境”に合わせるかたちで現在の位置情報サービスが形作られているというのが同氏の考えだ。そして、ARの普及にはGPSなどの位置情報だけでなく、“いつ”“誰が”“何を”“どうやって”といった、さまざまなプレゼンスを把握できる環境が必要とみる。「GPSなどの測位技術には“ラスト10メートル問題”というものがあり、例えばゲームなどで宝の場所をピッタリと合わせるということはできない。それで、マーカーやマーカーレスの技術が使われる(参考:AR Commons Summer Bash 2010リポート【1】)。しかし、それらが進化しても“どこで”という1つのパラメーターが得られるにすぎない。5W1Hを把握できるプラットフォームが生まれれば、ジオメディア(位置情報サービス)のようなものはもっと作りやすくなる」(小林氏)。


photo OuidooでのPlaceEngine活用イメージ

 これは小林氏の考える理想像だが、ほかにも“ARに適したプラットフォーム”を構築する試みは世界的に動き出している。米QderoPateoはAR専用デバイス「Ouidoo」のコンセプトを打ち出し、ワールドワイドに協業企業を募集。マーカーレスAR技術として注目されているPTAMを開発したIsis Innovationは、同社へPTAMのライセンスを提供すると発表した。中国の通信キャリアである中国移動(China Mobile)も取り組みに賛同しているという。日本からはクウジットが、無線LANを使った測位技術「PlaceEngine」やARソリューション「KART」の提供を決めている。

 クウジットのCEOである末吉隆彦氏は、「専用端末なんてものは、大企業からすれば『いくつのハンコを押さなきゃいけないんだ』という世界だが、今ではベンチャーがフットワーク軽くハードも作れる時代になってきた」と話す。同社はソニーの研究成果を元にスピンオフしたベンチャーであり、末吉氏もソニーでVAIOなどの開発に関わった経験を持つだけに、こうした時代の変化を感慨深く見ているようだ。さらに同氏は「今度はぜひ、クウジットのテクノロジーを積んだスペシャルデバイスをKDDIで出していただきたい」と小林氏にラブコールを送り、会場を沸かせた。

プラットフォーム構築は「横連携をいかに上手く取るかが重要」

 ARサービスが世界各地で同時多発的に生まれている中、日本はどのように存在感を示していけるのか。「日本のモバイルサービスの体験性やビジネスモデル、ARPUの高さは世界的にも高いレベルにあるが、そのことが知られていない」と頓智ドットCEOの井口尊仁氏は問題提起する。

 「自分たちが“メッチャオモロイ!”と思うものを作れば、アメリカ人でもアフリカ人でもヨーロッパ人でもそう思うはず」と返したのは、芸者東京エンターテインメントの田中泰生社長。ARを使ったキット「電脳フィギュアARis」を開発した同社は、ARメガネのような構想も持っているという(関連記事)。また、アメリカのソーシャルゲーム大手であるZynga Game Networkと交流がある田中氏は、Zyngaのサービスに「アメリカ的な雑さがある」と考え、より練り込まれた日本のサービスの仕組みは世界でも通用するポテンシャルがあるとみる。

 海外展開では言語や文化の違いもハードルになるが、KDDI研の小林氏は、ARの体験性が「非言語的」なことを挙げ、ARコンテンツやサービスの視覚的な楽しさは海外においても通じやすいとの見方を示した。また、「海外と日本では(携帯電話の)プラットフォームの違いがあったが、スマートフォンの登場によって端末レベルの差はなくなってくる」と、スマートフォンが世界展開を後押しするともみる。

 こうした情勢の中で同氏が重要視するのが「横連携をいかに上手く取るか」。「今までは縦割りでサービスの全てができあがっていた。これからはプリミティブな部分だけでもいいから、HTMLのような共通インタフェースを作っておかないといけない。横で何かいいものがあった時に、簡単に手をつないでサービスを広めていくことが、今のままだとやりにくい。それが原因で、ガラパゴスと言われかねない」(小林氏)

 一方、クウジットの末吉氏は「ワールドワイドに拡散するかは、市場が作れるかどうか」と、ビジネスモデルの重要性を強調する。同イベントではキャラクターやゲームといった日本の得意分野とARとの親和性に期待するコメントが多く聞かれたが、こうした強みだけでは世界的な優位性を築くのは難しいと同氏は見ているようだ。「ARはUI(ユーザーインタフェース)でありテクノロジー。それ自体が目的になるものではない」とも語り、ARの物珍しさがなくなっても利用される“継続的なサービス”の必要性を説いた。

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