あの仕事、どうなってるんだろう――新入社員に仕事を任せたところ、自分のイメージとはかけ離れた仕上がりになっていたこと、ありませんか。「ホウレンソウ」ができるようになるコツを3つご紹介します。
「なんで確認してこないんだろう」「あの仕事、どうなってるんだろう」――新入社員や若手社員に仕事を任せたところ、最後の最後になって「えっ、こんな風にやってたの」と、自分のイメージとは全く違う仕上がりになってしまったこと、ありませんか。
今回は、新入社員や若手社員から、進んで働きかけてもらうためのコツをご紹介します。
仮に2名の部下(または後輩)がいたとしましょう。その時にAさんは、仕事を頼むとこちらのイメージ通りに仕上げてくれます。しかしBさんは、何かがズレている。
この場合、Aさんは日頃から上司や先輩の仕事の進め方や、仕事のポイントをおさえる意識を持っているので、任せて安心なタイプといえます。細かな説明がいらないので、上司のあなたにとって大変助かる存在です。
一方Bさんは、何かがズレてしまう。途中で確認をしてくれればいいのに、それもしてこない。「出来ました」という報告でズレに気づく。納期ぎりぎりの場合は、こちらもイラ立ちます。「途中で確認してくれればよかったのに!」と、強く言ってしまうこともあるでしょう。
Bさんのように仕事がズレてしまう理由はなぜでしょうか。新入社員や若手社員の育成を行っていると、2つの要因が重なっていることに気づきます。
1つは、自信がないこと。もう1つは、認めてもらいたいこと。この2つが要因となっているようです。自信がない理由はさまざまですが、自信がないので「失敗しないように」ということばかりに気を取られています。そのため、自分に任された仕事だけに意識が集中してしまいます。
例えば、会議の資料のコピーを頼んだとします。「失敗しないように」と考えていると、「コピーが曲がらないように」「部数を間違えないように」「コピー用紙を無駄にしないように」「ホッチキスの位置がズレないように」などに意識が向いています。
そのため、本来指示をした側が意識してほしい大事なことが抜け落ちてしまうのです。会議の目的や開始時間、出席者の特性をふまえ、一度会議資料に目を通した後、気づいたことがあれば確認を取ることや、その会議に必要なそれ以外の段取りについて、自分ができることを提案することなどに意識が及ばなくなります。
「認めてもらいたい」という意識が強いと、上司や先輩に「迷惑をかけてはいけない」「役に立ちたい」という気持ちが先走り、1人でやり遂げることが、上司や先輩に貢献できると考えてしまうようです。
Bさんタイプを育てる時、まず大事なのは、長期戦で育てる腹づもりをすること。段階を細かく分けて、繰り返し、粘り強くが育てる上でのコツです。第1段階として大切なのは「安心していいよ」「あなたならできるよ」という言葉をかけることや、基本的なことを繰り返し伝えていくことです。ポイントは以下の3つ。
5W3H | |
---|---|
Who | 誰が、誰と(担当、対象) |
What | 何を(目的、目標) |
Why | なぜ(理由、背景、重要性など) |
When | いつ、いつまでに(日程、期限) |
Where | どこで、どこへ(場所、行き先) |
How | どのように(方法、手段) |
How much | いくらで(費用、コスト意識) |
How many | いくつ(数量) |
まず最初の5W3Hです。誰でもよく知っているフレームワークですが、上司や先輩にとっては当たり前となっており、「知っているもの」と思いがちです。しかし、「失敗しないように」と考えている人にとっては、そのような基本的なことが理解できていません。
特に、仕事の目的や背景、重要性などをしっかり伝えることがポイントです。同じ仕事をするときに、最初の1〜3回まではこちらから伝え、それ以降同じ仕事を頼む時に、「この仕事は何のためにやるの」「なぜそうするの」「いつまでにできそう」「どんなところにポイントを置く」と問いかけていくと本人の中で理解が進んでいきます。
少しでも出来るようになったことに対して「いいね。これ!」など、伝えていくと、自信を持つことができ成長も早くなります。
続いては2つ目のメモノートを活用すること。仕事の指示をするときは、メモノートと、筆記用具を必ず持たせるようにします。そして、指示や取り組む上でポイントとなる点をメモさせ、それを読み上げてもらいます。
簡単な仕事であれば、上司や先輩が不在の時に分からないことが出てきても、そのメモを見返せば判断がつきます。難易度の高い仕事の場合は、分からない点をそのメモに書いておいてもらい、後から確認を取るようにしていけば、仕事が進んでいきます。
また、こちらも伝えたことを忘れてしまうことや、前に伝えていたことと確認を取ってもらった時に判断が微妙に変化していることもあります。メモを見ながらお互いに確認していくことで、相手が分からなかったポイントがスムーズに確認でき、こちらの判断が変化した時に、その理由を伝えることも可能なのです。
3つめの復習時間について。実は、「上司や先輩が忙しそうで、声をかける(確認や相談する)ことができない。どうしたらいいでしょう」という質問や相談が、新入社員や若手社員から非常に多く寄せられます。
人手が少なく、皆が忙しい中で、戦力になっていない自分のために時間をとってもらうのは気が引けるということや、どのように声をかけてよいのか分からない、というのが理由のようです。
研修では、声をかけないことが与える影響を考えたり、声のかけ方などをトレーニングしたりしますが、それでも自信がない人にとっては、声をかけること自体のハードルが高いようです。
そこで、おすすめが1日に3回の確認時間を押さえておくこと。朝、昼、終業時の3回、その日の進捗や仕事の質問をする時間などを先に設けておくことです。時間にして3〜5分で構いません。「分からないことがあったら、この時間に聞こう」と分かっているだけで、できないことを自分なりに考えて失敗し、叱られるストレスが減り、分からないことは後回しにして、できることから取り組むようになるはずです。
復習時間に質問がない時は、「やってみてどうだったか」「どんなところに工夫したか」などを聞いていくと、安心感が得られ、モチベーションも高まります。
最初は手間ヒマがかかるように思えますが、Bさんタイプの新入社員や若手社員は、育って余裕が出てくると、仕事が確実で安心できる社員へと成長します。その結果、教える上司や先輩にも余裕が生まれ、次の仕事に着手できるようになります。
「急がば回れ」で、1人でも多くの人材を育てて下さい。
大手生命保険会社、人材育成コンサルティング会社の仕事を通じ、組織におけるリーダー育成力(中堅層 30代〜40代)が低下しているという問題意識から、2006年Six Stars Consultingを設立、代表取締役に就任。現在と将来のリーダーを育成するための、企業内研修の体系構築、プログラム開発から運営までを提供する。
社名であるSix Starsは、仕事をする上での信条として、サービスの最高品質5つ星を越える=クライアントの期待を越える仕事をし続けようとの想いから名付けた。リーダーを育成することで、組織力が強化され、好循環が生まれるような仕組みを含めた提案が評価されている。
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