気が利くビジネスメール――新入社員のための6つのコツ研修に行ってこい!

携帯メールなどのカジュアルなやりとりになれた新入社員にとって、ビジネスメールはちょっと難しいかもしれません。そんな新入社員に教えるための6つのコツをご紹介しましょう。

» 2010年05月25日 13時20分 公開
[原田由美子,Business Media 誠]

 シンプルな言葉と絵文字で自分の気持ちを伝えることや相手の気持ちをくみ取ることに慣れた新入社員にとって、ビジネスで使う硬い表現のメールは苦手な様子。今回はそんな彼らにメールを指導する際のコツをご紹介します。

サンプルを使った指導のコツ

 新入社員を指導する際には、たたき台となるサンプルを提示すると、イメージしやすくなり効果的です。しかし気をつけなければならないのは、サンプルだけの提示です。「サンプル=正解」と思いこみ、目的ごとにサンプルが必要となります。

 重要なのは、サンプルを提示した上で応用できるように指導すること。そのためには、メールを作成する際のポイントや、なぜそうするのかといった背景を伝えることが大事です。

 それでは、次のメールサンプルをご覧ください。

内容
件名 【ご回答】○月○日 ☆☆研修 お打ち合わせの件
本文 Six Stars Consulting株式会社
(役職)原田 様

先ほどは架電にてありがとうございました。
資料も確かに拝受いたしました。ありがとうございます。

お問い合わせいただきました、☆☆研修お打ち合わせの件、下記の通りご回答申し上げます。

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日時:○月○日 10:00〜11:00
場所:弊社会議室※受付で貴社名をお伝えください
案内図: http://www.samplekaisha.co.jp/
※会議室には、ホワイトボードと、プロジェクターのご用意がございます。
参加者:弊社側から2名(課長が同席いたします)
===============================

それでは当日、どうぞ宜しくお願い致します。

署名 担当:□□
○○開発株式会社 研修部
連絡先
コーポレートメッセージ

 ご紹介したサンプルメールは、新入社員が目上の人や面識のない人に送っても失礼のないレベルを想定しています。その前提で、まずは一般的なポイントを確認します。

メール作成、3つの基本ポイント

  1. 件名:相手の判断や行動につながること。緊急度、返答の有無、期限などがひと目で分かるように。
  2. 本文の論理性:結論が明確、5W3Hが明確、短文、個条書き、客観的、ヌケ、モレ、ダブりがないなど。
  3. ひと目で見やすいか:レイアウトは左寄せ、1行全角30〜35文字、段落で改行。

 新入社員の指導であれば、上記の3つのポイントが意識できるようになれば合格点と言えます。しかし、誠 Biz.IDの読者であれば、もうワンランク上も期待します。そこで、さらなる応用を3つご紹介しましょう。

発信者情報、1の法則、言葉づかい

 それは以下の3つです。

  • A:受信トレイを意識した「発信者情報」
  • B:1の法則
  • C:言葉づかい

 まずは受信する相手の受信トレイを意識した「発信者情報」から。企業担当者間でやり取りされるメールの発信者情報は、次の4つが一般的です。

  1. 企業名+個人名
  2. 個人名
  3. 企業名
  4. 社員番号

 発信者情報は、担当者が自由に設定出来るのであれば、「企業名+個人名」の表記が最もお勧めです。というのも、日に数百通メールを受信する人は、受信トレイの「発信者情報」と「件名」を見て、優先順位を決めてメールに対応します。その際に、企業名や個人名だけのものは、広告メールや迷惑メールと混同し、見落とす可能性があります。

 しかし、「企業名」「個人名」「件名」の表記は、日頃から意識している仕事の進捗(どの仕事がどのような状況になっていて、自分が何をする段階かなど)を想起しやすいため、優先的な処理を受ける可能性が高くなります。

 早いレスポンスが得られれば、メールを送った側にもメリットが生まれます。相手の判断のしやすさを意識することで、相互にメリットがあるのです。

 続いて「1の法則」。要は、相手が判断しやすい、回答しやすいシンプルなメールを作成することです。メールを送った相手から早く返信してほしい時に威力を発揮するほか、やりとり回数を減らすことにつながります。

  1. 1つのメールに用件は1つ:1つのメールに複数の用件を盛り込むと、早く回答できるものとそうでないものが混在することになります。そうすると、早く回答が出来るものまで後回しになったり、回答を忘れたりします。回答を確実にもらうためにも、1件1メールが有効です。
  2. 1画面に収まる工夫:メールを開いて情報量が多いと、「この件は時間がかかりそう」という印象を持ちます。反対に1画面に収まっていれば、「すぐに対応できる」と感じ、対応しやすくなるのです。
  3. 1往復半で完了:送り手(用件)→受け手(回答)→送り手(お礼メール)というシンプルなやり取りが目指すイメージです。しかし、受け手が判断しにくいメールや、確認、質問が出るメールでは、複数回のやり取りが必要になります。

 1の法則はまた、メール内容の検索にも威力を発揮します。例えば「送信者情報」で検索したとき、1つのメールで1つの案件だけを書いていれば件名だけで判断できます。しかし、案件がいくつも書かれているメールは、件名から判断がつかず、本文を確認しなければなりません。後のことを考えても、用件を絞り、見やすくしておく工夫は有効なのです。

 最後は、言葉づかいです。新人や若手社員が戸惑うのは、見慣れない言葉づかいです。特にメールの場合は書き言葉。なれるまでに時間が必要なのは当然です。次にご紹介するのは、ビジネス文書としては一般的ですが、学生時代には見たことがない表現のようです。次のような表現も、知ってしまえばなんということはありません。教えておくと有効です。

言葉 意味
回答 質問・要求などに答えること。また、その答え。
査収 金銀・物品・書類などを、良く調べて受け取ること。
拝受 受けること、受け取ることをへりくだっていう語。
架電 電話をかけること。電話すること。
気付 郵便物を、相手の現住所ではなく、その人の勤め先や立ち寄り先へ送ること。また、そのとき、あて先の下に付ける語。
『大辞泉』(小学館)より

  このような表現にも少しずつ慣れさせながら、効率や効果が高く“気が利く”印象にもつながるビジネスメールが作成できるよう、上手に指導していってください。


著者紹介:原田由美子(はらだ・ゆみこ)

 大手生命保険会社、人材育成コンサルティング会社の仕事を通じ、組織におけるリーダー育成力(中堅層 30代〜40代)が低下しているという問題意識から、2006年Six Stars Consultingを設立、代表取締役に就任。現在と将来のリーダーを育成するための、企業内研修の体系構築、プログラム開発から運営までを提供する。

 社名であるSix Starsは、仕事をする上での信条として、サービスの最高品質5つ星を越える=クライアントの期待を越える仕事をし続けようとの想いから名付けた。リーダーを育成することで、組織力が強化され、好循環が生まれるような仕組みを含めた提案が評価されている。


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