さて、学び合う仲間を見つけたら、やるべきことは勉強会です。といっても別に教科書を読んで覚えるような勉強ではありません。自分の職場に山のようにある文書の中から、分かりにくくて今現に具体的に困っているものを1つ見つけて、それを分かりやすくすることを「課題」として改善案を一緒に考えることです。勉強というよりは研究開発に近いですね。
課題を選ぶときは、分かりにくいこと、そのために今現に困っていることに加えて、短いものを選びましょう。特に最初のうちは、数行程度の文面の方がいいです。たった数行? と思うかもしれませんが、書くことに苦手意識があるならこのぐらいから始めた方がいいんです。
実はざっくばらんに言うと、一番手頃なのは5カ条程度の個条書きの文書です。具体的な例としては、本連載の第6回「見出し一言、値千金――インフルエンザ対策をどう分かりやすく説明する?」を見てください。
個条書きにしただけで満足する人が非常に多いですが、個条書きというのは適切な順番を付けて、さらに見出しを付けると、それだけで見違えるように分かりやすくなることがよくあります。実際に身の回りの文書でそういう事例をいくつか見つけて効果を実感すると、個条書きを書くときに自然と気を付けるようになります。だからこそ、現に職場で分かりにくくて困っている文書を課題に選んでほしいわけです。これはリアリティのある目標が必要、という観点からも重要です。
分かりやすく書くのが苦手だという人の大部分は、単に意識してやってみたことがないだけだったりします。よって5カ条の個条書きに見出しを付ける作業を週に数回、合計20〜30分程度やるだけでも効果があります。要は普段、見出しを意識することが最初の関門なので、それに集中してもらえば最初の壁は越えられます。その辺の話は本連載の第8回「1日5分でできる『分かりやすい説明書の書き方』指導術」でも触れています。
しかし、人間というのは欲が出るもの。個条書きで成果を出せるようになったら、もっと難解な、びっしり数10行書き込んでいて10回読んでも意味がよく分からないような文書を分かりやすく書き直すことにチャレンジしたくなります。実際、私が企業研修を引き受けたときに課題を募集すると、3分の1ぐらいの人からはそんな長文の説明書が出てきます。
さすがに数10行にもなると短い個条書きとは難易度のレベルが違うので、同僚との勉強会だけでは限界を感じるかもしれません。その時は「期待してるよ!」というだけの支援者ではなく、助言や指導をしてくれる支援者が欲しくなることでしょう。
実際、情報量が多い数十行クラスの文書ですと、単なる「個条書き+見出し」では間に合わず、論理構造を見抜いて図解しないとどうにもならないケースが増えます。これはかなりハードルが高いのですが、実はその場合でもある程度ヒントがあればやっていけるものなので、これは無理だ……」とあきらめたりはしないでください。
問題はそのヒントを誰からもらうかです。分かりやすい文書化の達人が社内にいれば、ぜひ相談してみましょう。もしいなければ、そのときはこの私、開米瑞浩にご相談ください。「改善案のヒントがほしい」という例文など、(ask@ideacraft.jp)で受け付けています。今回のような連載での紹介は、許諾をいただいた場合のみ、必要に応じて内容を適宜編集したうえで行います。
また現在はテスト段階ですが、「書く力」勉強会サポートサービスというものも2月10日まで無料で行っていますので、この機会にどうぞご利用ください。もちろん、社内の支援者とは違って、既に世の中に公開されている文書など機密性のないものに限りますが、プロの「文書化能力向上」コンサルタントとしてプライドにかけて対応させていただきます。
当記事についてのご意見ご感想ご質問等は「twitter:@kmic67」宛でも受け付けております。中には記事では書ききれない情報もあります。物足りなく思った時はぜひ「twitter:@kmic67」宛に質問を飛ばしてみてください。
著者・開米瑞浩氏が講師となって「アイデア・思考を見える化」をテーマとするセミナーを開催します。
IT技術者の業務経験を通して「読解力・図解力」スキルの再教育の必要性を認識し、2003年からその著述・教育業務を開始。2008年は、「専門知識を教える技術」をメインテーマにして研修・コンサルティングを実施中。近著に『ITの専門知識を素人に教える技』、
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