トップインタビュー

大日本印刷・北島社長が語る「DXを経営の柱に据えた理由」 データを活用して出版界全体の改革に取り組むデジタルを駆使(5/6 ページ)

» 2021年07月14日 09時32分 公開
[中西享, 今野大一ITmedia]

採用面の課題は?

――ITやDXを推進するための技術系人材の採用はどうしていますか。

 現在は新卒採用の約6割は理系です。今年はグループ会社を含めて450人を採用しましたが、IT系を含め理系が多くなっています。また、専門知識を持っている能力の高い人材の中途採用は、従来とは異なる待遇で実施しています。

 DNPが新規に進出しているメディカル・ヘルスケア分野は、製品開発に業界のルールや独自の知見が必要です。一から専門家を育成すると同時に、知見のある人材を採用し、即戦力として活躍してもらいたいと思っています。

――ダイバーシティー推進のため女性管理職の積極的な登用が叫ばれていますが、DNPの現状と方向はどうですか。

 印刷業界は男社会だったのですが、DNPは2000年くらいから女性活躍に本格的に力を入れてきました。この数年、女性の採用比率が増えており、今年の入社では約4割でした。今年度中には女性管理職比率7%を達成したいと思います。

 (経団連が提唱している)女性管理職比率3割にはまだ届きませんが、徐々に増やしていきたいと考えています。今年の株主総会では初めての女性取締役も誕生します。ダイバーシティー&インクルージョン(多様性と包摂)の推進によりわれわれ自体も変わっていかなければ世の中に価値を提供できないと思っています。

――DXを含めて改革を進めてこられましたが、いま最優先で進めたい改革は何でしょうか。

 社長になってから、それぞれの分野の強みを横断的に掛け合わせる“オールDNP”を推進することで、よりDNPの強みを発揮できると社員に伝えています。

 これまでは、それぞれの分野に特化する傾向がありましたが、例えば従来の製品・サービスにAIを使ったり、エレクトロニクスを掛け合わせたりするなど、ヨコのつながりを重視していきたいと考えています。そういう取り組みがしやすいように人事制度も整備してきました。

 具体的には週1日はほかの部署で働く“社内複業制度”なども作りました。社内で学び合いができ、他部署と連携して働くことでより力を出せるようにしていきたいと考えています。そのためにも従来型の組織風土の改革を、今まで以上に進めていく必要があります。チームで力を出したことを評価し、何を言っても許される心理的安全性のある社内風土に変えていく取組みも進めています。

 部門をまたいだ異動も増やしていて、この数年は幹部クラスの入れ替えもしています。全社員の力を発揮できるように組織風土を改革していけば、成果も出やすいと見ています。

――連結で3万7000人を超える組織のリーダーとして日ごろから心掛けていることは何ですか。

 組織間の隔たりなく評価することを大切にしています。いまはコロナ禍でなかなか行けなくなりましたが、工場や事業所に行って、現場の声を積極的に聞いて経営に生かしていきたいと思っています。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.