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大日本印刷・北島社長が語る「DXを経営の柱に据えた理由」 データを活用して出版界全体の改革に取り組むデジタルを駆使(4/6 ページ)

» 2021年07月14日 09時32分 公開
[中西享, 今野大一ITmedia]

「電子図書館」を導入する自治体が急増

――DNPが開発した、図書館に行かなくても本を借りて読める「電子図書館」を導入する自治体が急増しているようですが、何が評価されたのでしょうか。

 コロナ禍で全国の図書館が臨時休館し、来館しなくても貸し出しできる電子図書館の要望が強まりました。電子図書館サービスを採用する自治体がかなり伸びています。これまでは予算がないことを理由に採用されませんでしたが、20年4月以降に138自治体が導入し、累計では203自治体にまで増えています。

 電子図書館サービスの競合はもう1社ありますが、DNPのシェアが高く、グループの図書館流通センター(TRC)と一緒にサービスを提供しています。

――今後注目している新しい事業としてはどのようなものがありますか。

 1つは自動運転を想定した車の運転席に設置する次世代加飾パネルがあります。普通の状態では木目模様のパネルですが、タッチすると速度メーターなどが浮かび上がって見えるパネルです。これまで蓄積したパネル技術に新しいものを取り入れることにより可能になりました。

 このほか、バーチャル技術を活用して地域創生を支援するXRコミュニケーションがあります。XRは、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)といわれる仮想空間をまとめて表現したもので、具体的には北海道札幌市や東京都渋谷区の宮下公園の街づくりなどに使われてきています。その場に行かなくても、PC等の画面を通してその場にいる気持ちになることができます。また、その地域にリアルでも行きたくなるような仕掛けも行っています。

 フランス国立図書館(BnF)の展示では、貴重なコレクションの3Dデジタルデータを活用して、展示作品を持ち上げて普段は見えない角度から作品を見たり、BnFリシュリュー館の歴史的な空間に入り込んだりできます。このほか、池袋のジュンク堂の仮想空間では、実際に本を取って見ることができます。こうした新しい体験を提供するビジネスも期待ができると思います。

札幌市北3条広場 開発中のイメージ
渋谷区立宮下公園エリア 開発中のイメージ

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